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新型コロナ時代に死にゆく香港(1)【中国問題グローバル研究所】


*12:18JST 新型コロナ時代に死にゆく香港(1)【中国問題グローバル研究所】
【中国問題グローバル研究所】は、中国の国際関係や経済などの現状、今後の動向について研究するグローバルシンクタンク。中国研究の第一人者である筑波大学名誉教授の遠藤 誉所長を中心として、トランプ政権の ”Committee on the Present Danger: China” の創設メンバーであるアーサー・ウォルドロン教授、北京郵電大学の孫 啓明教授、アナリストのフレイザー・ハウイー氏などが研究員として在籍している。関係各国から研究員を募り、中国問題を調査分析してひとつのプラットフォームを形成。考察をオンライン上のホームページ「中国問題グローバル研究所」(※1)にて配信している。

◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信しているフレイザー・ハウイー氏の考察を2回にわたってお届けする。

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先週、中国で年1回の形ばかりの議会である全国人民代表大会(全人代)が開催された。予定より2カ月遅れ、通常の2週間から1週間短縮されて、厳戒下の北京で開催されたが、世界の視線が注がれたのは、むしろ香港であった。全人代が始まると、香港を対象とした国家安全法を可決することが発表された。この法律は、分離独立、政権転覆、テロ、外国勢力との共謀という4つの行為や活動を禁止するものである。

全人代は決議を採択したが、同法の具体的な内容や実際の運用についてはまったく不透明だ。しかし、懸念すべき理由は数多くあり、おそらく全人代で最も憂慮されたのは、第4条の次のような条文である。

「香港特別行政区は、国家安全保障を確保するための制度と執行メカニズムを制定および改善しなければならない。必要な場合には、関係する中央人民政府の国家安全保障機関が、法に従って国家安全保障を確保するための関連任務を遂行するため、香港特別行政区内に機関を設置する。」

この条文は、どのような枠組みとなるかは未確認の部分があるものの、中華人民共和国の安全保障機関が香港で香港警察処と協力して国家安全法を直接施行すると解され、香港政府もすでにそう認めている。ロンドン警視庁公安課をモデルとし現在解散している香港警察政治部が再編成されるかもしれないとの意見もある。もっとも、中国の人権侵害と自国憲法無視の歴史を考えると、ゲシュタポの方が比較対象として適切かもしれない。

この措置により、中国政府は香港に対して堪忍袋の緒が切れ、もはや一国二制度の枠組みを遵守する気すらなく、香港の立法機関を事実上無視して法律を直接制定することが確実となった。基本法第23条は、安全保障上の懸念に対処するために香港は独自の法律を制定する、と規定している。2003年にそれが試みられた際は、50万人以上の住民による初の大規模デモにつながり、法案は棚上げされた。

それから16年経った昨年のこと。中国政府は、昨年行われた大規模な抗議行動と、香港当局が過去最悪の暴力的な抗議行動を抑制できなかったことに激怒した。しかし何よりも、11月の区議会選挙で、抗議行動を行っていた民主派の候補者が区議会数と議席数で圧勝したことが、中国政府の指導者たちを完全に驚かせた。中国政府は、選挙結果を事前に知っている限り、選挙に反対しない。今回は地元の草莽の民が完全に彼らを打ちのめしたのである。

今年に入って中国でウイルスが蔓延するさなか、事実上の在香港中国大使館である中央政府駐香港連絡弁公室(CLO)と国務院香港マカオ事務弁公室のトップが、香港ともその政財界エリートとも無縁の習氏支持者に交代した。習氏はより強硬な路線を示唆していたが、それが現実となった。

つい先月、香港政府は、CLOが香港の問題に介入する権限に関するコメントを大急ぎで発表した。返還以降、中国の政府機関は香港問題に関与しないことが法的に義務付けられていた。CLOは声明で、彼らがそのような制限に拘束されておらず、拘束されたこともないと主張したのである。

同じく4月には、81歳になった民主派のベテラン李柱銘氏を含む15人の主な民主派指導者が、違法な集会を組織し出席したとして逮捕された。昨年の抗議デモは、保守派の民主化活動家の仕業ではなかった。むしろ新世代の香港人が行ったことだったが、このリストは中国政府にとっては始まりにすぎない。

しかし、これらの動きは、先週の全人代の決議へのウォームアップでしかなかった。全人代の動きは、一国二制度の原則の正当性に致命的な打撃を与えると見られている。それが発表されるとすぐに、指導者や親中国派の実業家たちが放送やメディアに登場し、恐れることは何もないと香港市民を安心させようとした。まず中国外相の王毅氏が全人代でショーを始め、林鄭月娥氏をはじめとする多数の香港当局者がこれに続いた。全員が新法案に対する不安を鎮めようと同じメッセージを繰り返したが、彼らを信じる理由はほとんどない。香港の著名な実業家アラン・ジーマン氏はブルームバーグTVに出演し、政府を信頼するよう住民に訴えかけた。同氏は、習近平政権下での中国の人権侵害に関する質問をさりげなく無視し、インタビュアーの明らかな嫌悪感をあおった。

人気の低い前香港行政長官の梁振英氏は、6月4日の毎年恒例の追悼式典が新法のもとで恒久的に中止されることを否定できなかったが、詰め寄られると、国民を不安にさせる恐れがあるため核心に踏み込みたくないと述べた。
正確な詳細はまだ定かではないが、分かっているのは、中国本土内のこれらの「犯罪」に対する中国政府の姿勢である。中国共産党が広く使用している「政権転覆」という用語は、市民と駐在者とを問わず香港のすべての人にとって懸念材料となるはずだ。中国本土では、弁護士、芸術家、学者、作家が、党に反対し、自国の憲法に従うよう党指導部に求めただけで弾圧されている。

中国政府の支持者は、この法案の対象となるのはごく少数にすぎないと述べている。彼らは明らかに個人を念頭に置いており、おそらく逮捕された15人の民主派はその第1弾だろう。そしてもちろん、黄之鋒氏や香港民族党の創設者である陳浩天氏のような若い世代の活動家がそれに続くだろう。他に何人が同じ目に遭うだろうか。

反政府デモでは、旧植民地旗や米国の国旗が振られたり、香港の独立を求める横断幕が掲げられたりする光景がよく見られた。今年からは、このような行為は刑務所行きなのだろうか。中国共産党を批判する記事を書くのはどうだろうか。香港が中国に返還されるのではなく英国から独立を許可されたというフィクション作品を書いたとしたら。インターネットにあふれる反共産党や親香港の画像は違法になるのだろうか。そうした画像は、新法が成立すると香港の政権転覆とみなされるのだろうか。もし誰かの携帯電話やパソコンに保存されていたら、その個人は分離主義者とみなされるのだろうか。


「新型コロナ時代に死にゆく香港(2)【中国問題グローバル研究所】」へ続く

※1:grici.or.jp/


(写真:ロイター/アフロ)


《SI》

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