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欧州も中国と対決へ(1)【中国問題グローバル研究所】


*14:36JST 欧州も中国と対決へ(1)【中国問題グローバル研究所】
【中国問題グローバル研究所】は、中国の国際関係や経済などの現状、今後の動向について研究するグローバルシンクタンク。中国研究の第一人者である筑波大学名誉教授の遠藤 誉所長を中心として、トランプ政権の ”Committee on the Present Danger: China” の創設メンバーであるアーサー・ウォルドロン教授、北京郵電大学の孫 啓明教授、アナリストのフレイザー・ハウイー氏などが研究員として在籍している。関係各国から研究員を募り、中国問題を調査分析してひとつのプラットフォームを形成。考察をオンライン上のホームページ「中国問題グローバル研究所」(※1)にて配信している。

◇以下、中国問題グローバル研究所のホームページでも配信しているフレイザー・ハウイー氏の考察を2回にわたってお届けする。

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◆潮の変わり目か
中国との対決をずっと拒否し政治的に無作為だった欧州の指導者たちが、ついに立ち上がり始めた。ここ数年、ニュースの見出しを飾ってきたのは圧倒的にトランプ大統領と米中貿易戦争だった。しかし、世界最大の貿易ブロックである欧州連合(EU)も米国と同様、中国には数々の不満を抱いており、欧州のモノやサービスに対して中国は非常にねじ曲がった貿易慣行や制限を課している。新型コロナウイルスで欧州諸国が高い犠牲を払っていること、そして中国が欧州の不運につけ入り利益を得ようしていることが、多数の欧州指導者に行動を促すきっかけとなった。

在中国の欧州企業関係者にとって、中国市場の競争条件の不公平さは周知のことで、企業グループやシンクタンクによる多くの報告書は何度となくこの問題を強調してきたが、欧州は従来、米国と比べて対決的な役割はあまり演じない道を選んできた。EUは昨年から中国を「体制上のライバル」と呼び始めたが、積極的な反発は限られたものだった。理由の一つは、EUのガバナンス構造に内在する弱点にある。欧州は国ではなく地理上の圏域であり、EUも国家ではなく、英国離脱前は28、現在は27の加盟国をまとめている超国家的な組織だ。全加盟国のコンセンサスがなければ実効性を持たない。共通通貨ユーロを使わない国もまだある。全加盟国に国境を開放する国もあれば、そうでない国もある。経済的に重要であることは確かだが、意見が一致した組織ではなく、実際のところ中国に関しては一致していなかった。

中国については、積年の経済問題や市場アクセスに加えて、政府による人権侵害の拡大が欧州にとって無視できないほど深刻になってきている。チベットおよび東トルキスタンとして知られる新疆ウイグル自治区での文化的虐殺、台湾を国際舞台で孤立させようとする理不尽な要求、香港での厳しい弾圧と国家安全維持法の導入は目に余るものとなり、欧州の指導者たちは声を上げるようになった。これらの懸念に加えて、欧州の政策の中心である気候変動や持続可能なエネルギーの分野でも、かつて重要なパートナーと思われていた中国は約束を守らず、国内外で石炭ベースのエネルギー生産を拡大し続けている。

そして、ここ数週間の出来事により欧州の対中認識が一段と硬化した。欧州の中国に対する政策が徐々に米国に歩み寄る中で、中国の王毅外相が欧州各地を歴訪して、「ご機嫌取り」の攻勢をかけ、一定の親善関係を形成しようとしたためである。王毅氏は、ご機嫌を取ることには失敗したが、その攻勢は非常に強力だった。王毅氏のやり方は、意に沿わないことに直面するとホスト国を脅すことだった。ノルウェーでは、香港に関連した抗議活動家や抗議グループへのノーベル平和賞の授与が脅しの対象になった。ドイツではハイコ・マース外相との共同記者会見で、チェコ上院議長の台湾訪問について、チェコは「高い代償」を払うことになると語った。これは即座にマース氏の非難を招き、マース氏は王毅氏に対し、「脅しはここにふさわしくない」と述べ、欧州では国家間の関係についてそのような振る舞いはしないと指摘した。フォルクスワーゲンのヘルベルト・ディース最高経営責任者が、新疆ウイグル自治区の収容所について知らないと発言した16か月前とは様変わりである。こうした欧州の新しい雰囲気は新鮮な息吹である。

◆分断と支配
これまで欧州の指導者たちが政治面や経済面で中国に対抗しようとしたときでさえ、足並みの乱れがあったため、その内容は限られていた。EUの枠組みの性格上、中国はドイツの産業界の首脳らにエネルギーを集中した。ドイツも対中輸出への依存度が高く、最大の顧客である中国を批判することには消極的だった。中国はまた、中・東欧17か国と中国からなる経済協力の枠組み である「17+1」 のような、より小さな欧州諸国グループの同盟を構築しようとしている。このグループは最近ギリシャを加えて拡大されたが、ギリシャへの大規模な港湾投資以外は投資や大規模プロジェクトに関してこれといった見るべきものはない。しかし、こうした諸国へのアプローチが友人を増やし、ハンガリーとギリシャの両国は中国を批判しようとしたEUの声明の表現を弱めさせる役割に回った。しかし、そのような「友情」ははかないものかもしれない。これらの欧州諸国は、中国への真の親近感からというより、EU主要国による扱われ方への不満を示す手段として中国を見ている可能性がある。

欧州内部の足並みを乱す上での中国の最大の成果は、中国流のグローバリゼーションである「一帯一路構想」にイタリアが参加したことだ。イタリアはEUの創設メンバーであり、「一帯一路構想」に参加した唯一の欧州先進国であることからみれば、確かに中国にとっては成功ではある。しかし長続きはしないだろう。

欧州の指導者は「体制上のライバル」である中国の脅威への対処は遅れたかもしれない。しかし、イタリアの「一帯一路構想」への参加や、ギリシャの海運と港湾インフラへの大規模な投資、それに今年の新型コロナウイルス発生後の誤った情報やあからさまな嘘によって、欧州は中国と対処するに当たって疑念を抱かざるを得なくなった。

英国のEUからの離脱も、中国対欧州の構図の上でややこしい問題である。10年前、英国のデービッド・キャメロン首相とジョージ・オズボーン財務相は経済と投資を中国政策の中心に据え、中英関係の黄金時代の幕開けを両国は歓迎した。EU離脱派の見解は異なるが、現実には英国はEU内において特に単一市場確立の推進役であり、EU内部の議論の際には多くの国、特に北欧諸国が英国によって追い詰められた。英国はもはやEUのメンバーではなく政策に直接影響を与えることもできないが、今は中国に対して批判の急先鋒である。5G導入を巡るファーウェイに対する英国の態度の急変は中国にショックを与えたが、それだけでなく英国は香港の保護についても驚くほど強硬な立場を取った。300万人にも上るかもしれない香港市民に英国市民権の道を開こうとする英国の姿勢は、中国を激怒させている。

「欧州も中国と対決へ【中国問題グローバル研究所】(2)」へ続く。

写真:代表撮影/ロイター/アフロ

※1:grici.or.jp/


《RS》

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