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台湾問題の深刻さ【元統合幕僚長の岩崎氏】


*11:55JST 台湾問題の深刻さ【元統合幕僚長の岩崎氏】
本年3月9日、米国議会の上院公聴会で、米国インド・太平洋軍司令官のデービッドソン海軍大将が、「中国が2027年までに台湾に侵攻する可能性がある」との見通しを示した。この発言以降、3月12日には日・米・豪・印のクワッド首脳会議に於いて、また翌週には東京で開催された日・米外務・防衛相会議、所謂「2+2」会議で、中国の台湾侵攻への懸念が示され、台湾海峡の安定が共同声明で発表された。そして、今回は次期インド・太平洋司令官に指名されているアキリーノ海軍大将が、やはり米国上院公聴会で「中国の台湾侵攻は大多数の人達が考えているより間近だ」と述べ、「これは最も危険度の高い懸念である。」との認識を示した。アキリーノ大将は、「中国は、これまで我々(米国や同盟国)が考えていたよりも遥かに早く、インドとの国境紛争、香港での弾圧、ウイグル問題等で攻撃的行動を起こしてきた」と指摘し、私達の予測を上回る速度で、中国が行動している事への警告を発した。

中国は、来年の2月に冬のオリンピックを控えている。「オリンピック」と「侵攻」というキーワードを考えると、2014年2月にソチオリンピックが行われ、その直後にクリミア半島が住民選挙によりロシアに奪取されたことを思い出す。この際に、ロシアは一発の銃弾も使わず、ウクライナから領土を奪ったのである。

いずれにしても、最近の習近平の行動を見れば、現および次期お二人のインド・太平洋司令官が指摘された事に対し、私はかなり確度が高い予測と言わざるを得ない状況でないかと考えている。

習近平は、2012年11月に中国共産党の総書記となり、中国の最高指導者となった。そして人民政府主席、軍事委員会主席等々のポストに就き、現在に至っている。この間、米国のオバマ大統領からは、「米中の二つの大国で世界をリードして行こう」と言われるまでになった。習近平としてはかなりの驚きだったろう。米国にはまだまだ敵わない、と思っていたのに、超大国の米国から「大国」と呼ばれたのである。以降、習近平は、そして中国は、自国に自信を持つようになった。また、これまでの中国の国家主席の任期を「2期10年まで」という憲法の条文を2018年2月に削除した。これで習近平は、本来であれば2022年までの任期であったが、それ以降も国家主席/最高指導者として留まる事が可能となっている。

しかし、規則を変更しただけで、その職に留まる事が出来るのであろうか。何も手柄もなく、存命出来る筈がない。その席に就きたい人達も多いだろう。その様な人達を説得する為には、何らかの目に見える功績が必要である。先ずは、香港である。香港の主権は、1997年7月1日に英国から中国へ返還された。この時に、香港の政治体制や経済体制を次の50年間は変更しないとの約束が取り交わされた。所謂「一国二制度」である。50年間とは、2047年までである。ところが、ここ数年の中国政府の対香港政策は、ガラリと変わった。本年3月の全人代では香港の選挙制度の改正を行い、民主化勢力が立候補できない様な仕組みを作った。「一国二制度」の崩壊である。このことは、習近平の大きな手柄である。さて、次のターゲットはとなると、それは言わずもがな、台湾である。

2019年1月2日、習近平は、台湾に対する呼びかけをした。「一国二制度」は如何だろうかとの内容である。この時点では、まだ香港での問題がそれほど大きくはなっていなかった。何故、この様な呼びかけを行ったのであろうか。それは前年の2018年11月24日の台湾での統一地方選挙を受けてであろう。与党民進党が大敗したのである。国民党の大勝利である。7大都市の市長選挙で台北以外の市長は、全て国民党系の市長が勝利した。台湾では、国民党は馬英九前総統に代表されるように、比較的親中国である。この選挙結果を受けて、蔡英文総統は、民進党の党首を下りる事になった。このことを習近平は好機と捉えたと考えられる。そして、2019年の新年早々の呼びかけになったのである。しかし、傷心の蔡英文総統は、全く怯まず、堂々と習近平の「一国二制度」を撥ねつけた。台湾国民の中には、あまり中国を怒らせては不味いのではという考えがあったことも事実である。しかし、2019年6月以降に香港が炎上することになった。この後、急速に台湾で蔡英文総統は人気が高くなり、2020年1月の総統選挙で過去最高の得票数を確保することになった。蔡英文総統・民進党の大勝利であった。

習近平は、二期目の任期を終え、三期目に突入しようとしている。ここで何かの手柄がないと四期目には繋がらない。もし、彼が台湾をどうにかできれば、歴代の主席よりも、遥かに高く評価されることは間違いがない。以降は、彼が望めば自動的に四期目、五期目の任期が保証されるであろう。こうなれば、最早、主席や国家最高指導者ではなく、念願の皇帝である。歴史に長く語り継がれることになる。

彼の四期目の期限が2027年である。ここまでに必ず何らかの行動に出てくる。最近の「クワッド首脳会議」でも、「日米2+2」でも中国に如何に対応するかが話し合われた。我々も行動する時が来ている。日米は尖閣列島を防衛するための演習を行うこととしている。中国に決して南シナ海で起こったことを再現させてはいけない。彼らは、常に隙(空白)を探している。隙(空白)が見つかれば、必ず侵入してくる。侵入し既成事実化されれば、押し返すことはほぼ不可能となる。我々は、空白を作らず、常に警戒監視を厳にし、鉄壁の守りで、現状変更させない覚悟と周到な準備・備えが必要である。一刻の猶予も無い。
(令和3.3.25)

岩崎茂(いわさき・しげる)
1953年、岩手県生まれ。防衛大学校卒業後、航空自衛隊に入隊。2010年に第31代航空幕僚長就任。2012年に第4代統合幕僚長に就任。2014年に退官後、ANAホールディングスの顧問(現職)に。

写真:UPI/アフロ


《RS》

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