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危険なチキンゲーム−台湾を巡る米中軍事対立(1)−【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】


*08:44JST 危険なチキンゲーム−台湾を巡る米中軍事対立(1)−【フィスコ世界経済・金融シナリオ分析会議】
チキンゲームとは、2人のプレイヤーが「強気」(Bull)と「弱気」(Chicken)のいずれかを選び、相手が弱気であれば自分が強気である方が得るものが多く、両方とも強気であれば、2人にとって最悪の結果を招くというものである。最近の台湾を巡る米中対立は、まさにチキンゲームを思わせるものであり、両国とも引く気配はない。特に、軍事面のチキンゲームは、最悪戦争につながる危険極まりないものである。2021年4月早々に、台湾周辺において、両国海軍艦艇等の動きが活発化している。それぞれの動きを概観した上で、今後台湾を巡る米中関係がどの様に推移するかについて見積る。

2021年4月4日に防衛省は、「4月3日(土)に海上自衛隊が、男女群島(長崎県)の南西約470kmの海域において、同海域を南東進する中国海軍空母『遼寧』、レンハイ級ミサイル駆逐艦1隻、ルーヤンIII級ミサイル駆逐艦2隻、ジャ ンカイII級フリゲート1隻及びフユ級高速戦闘支援艦1隻の計6隻を確認、その後、これらの艦艇が沖縄本島と宮古島の間の海域を南下し、太平洋へ向けて航行した」と公表した。「遼寧」が沖縄と宮古島間を南下し、西太平洋に進出したのは、昨年4月10日以来である。この時は、バシー海峡を経由し、南シナ海において航空機の発着艦訓練を実施した後に、4月28日に再び沖縄と宮古島間を通過し東シナ海を北上している。

報道によれば、「遼寧」戦闘グループは、4月5日に台湾南東部において訓練を実施しており、中国国防部は、年度計画に従った通常の訓練と述べている。同日、台湾西部において戦闘機等約10機が台湾の防空識別圏に侵入した。4月7日にも戦闘機等15機が同様に台湾防空識別圏に侵入している。台湾の東西において同時に訓練を実施したことは、台湾を完全に包囲し、多方面から攻撃することが可能であることを内外に示す目的があったと考えられる。さらには、4月7日に中国共産党機関紙「人民日報」の海外版SNS上に、台湾の東岸にあたる福建省南部で人民解放軍が上陸訓練を行う映像が公表された。中国は、香港における「一国二制度」の形骸化に対する国際的批判が高まっているにもかかわらず、台湾への軍事的圧力を強化し、台湾問題に関し、いかなる妥協も外国勢力の干渉も許さないという強い姿勢を明白にしている。

中国軍用機の度重なる防空識別圏への侵入に対し、台湾空軍は、その都度戦闘機を緊急発進させていたが、3月29日に台湾国防部は、台湾空軍の訓練に支障が生じつつあるとして、空軍機による緊急発進を縮小すると公表している。地上レーダー及び防空ミサイルを使用した警戒は継続するとしているが、台湾空軍対処能力の限界を露呈した形であり、中国の圧力が効果を表したということができるであろう。
米国も中国の軍事的圧力強化への対抗策を講じている。2021年4月4日に、ルーズベルト空母戦闘群がマラッカ海峡を経由し南シナ海に展開、4月7日にはマレーシア空軍と共同訓練を実施した。更には、マキン米海軍両用戦群と合流し、南シナ海において共同訓練を実施している。遼寧戦闘グループに対しては、駆逐艦マスチンが継続的に追尾を実施しており、4月7日には、駆逐艦ジョン・S・マケインが台湾海峡を通過、中国を牽制した。

4月6日又は7日以降には、南シナ海に米中の空母戦闘群が同時に存在していることになる。それぞれの艦載機の戦闘行動半径を考慮すると、まさに、それぞれが「強気」を見せ合うチキンゲームが始まったとの印象を受ける。両空母が干戈を交えるようなことは無いと思われるが、もし何らかの衝突が生起すれば、日米の空母が激突した1944年6月のマリアナ沖海戦以来となる。

米中両海軍は、2014年4月の西太平洋海軍シンポジウムにおいて合意された海上衝突回避規範(CUES : Code for Unplanned Encounters at Sea)に調印しており、偶発的に遭遇した場合の航行要領に合意している。しかしながら、2018年10月に米太平洋艦隊報道官は、航行の自由作戦に従事中の米駆逐艦に中国駆逐艦が近接し、米駆逐艦が回避措置をとった時の距離は45ヤード(約25m)であったことを明らかにしている。相互不信が強い米中両国の艦艇や航空機が近接した場合、不測事態が生起する可能性が高まる。

サンタフェ総研上席研究員 末次 富美雄
防衛大学校卒業後、海上自衛官として勤務。護衛艦乗り組み、護衛艦艦長、シンガポール防衛駐在官、護衛隊司令を歴任、海上自衛隊主要情報部隊勤務を経て、2011年、海上自衛隊情報業務群(現艦隊情報群)司令で退官。退官後情報システムのソフトウェア開発を業務とする会社において技術アドバイザーとして勤務。2021年から現職。


《RS》

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