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『実業之日本』と地政学(3):ペニンシュラ・クエスチョン:地政学、地経学がこびりつく朝鮮半島_2【実業之日本フォーラム】


*19:22JST 『実業之日本』と地政学(3):ペニンシュラ・クエスチョン:地政学、地経学がこびりつく朝鮮半島_2【実業之日本フォーラム】
ポストコロナ時代の日本の針路
「国力・国富・国益」の構造から見た日本の生存戦略(2021/3/17)

■ゲスト
船橋洋一(実業之日本フォーラム編集顧問、一般財団法人アジア・パシフィック・イニシアティブ理事長、元朝日新聞社主筆)

■聞き手
白井一成(株式会社実業之日本社社主、社会福祉法人善光会創設者、事業家・投資家)

『実業之日本』と地政学(3):ペニンシュラ・クエスチョン:地政学、地経学がこびりつく朝鮮半島_1からの続き【実業之日本フォーラム】

次に、日韓関係に横たわる地政学的な背景を理解しておく必要があります。
一つは中国との関係、次が北朝鮮との関係、最後が日韓のパワー・バランスです。

中国が経済超大国になるにつれ、韓国はさらに中国の経済力の磁力に引き寄せられて行っているように見えます。経済での日本離れが進んでいます。韓国の文在寅政権が典型ですが、韓国の左の政治勢力は北朝鮮との融合と統一を夢見ています。左のナショナリズムといってもいいと思います。日本は心理的、情念的に南北“共通の敵”として名指しされることになりかねません。そして、冷戦後の日本の長期にわたる停滞、つまり日本の「失われた時代」を経て、日韓のパワー・バランスが変化してきたことです。韓国にとって日本はかつてのような大国でも先進国でもありません。パワーを増せば、それまで手に入れなかったものを手に入れよう、取り戻そうという気持ちになります。そもそも、1965年に日韓基本条約を締結した際も、韓国は不本意だったわけです。日本からもっと取りたかった、日本にもっと謝らせたかったのですが、当時の日本の国力がはるかに上だったし、日韓の関係を正常化させたいアメリカの戦略的意思と存在感のことも配慮せざるをえなかった。韓国は我慢せざるを得なかったのですね。つまり、日韓基本条約は無念の産物なのです。

白井:確かに韓国と比べると、当時の日本は圧倒的に大きな国力を有していました。韓国にとって日本は随分と大きい国に見えたのでしょうね。しかし、時が流れるに連れて、圧倒的な国力と言いづらくなってきたのかもしれません。一人当たりGDPの格差もかなり縮小しています。

船橋:その点が最も重要な点だと思います。確かに韓国は力をつけました。日本の背中が見え、そして追いついた。サムソンは既にはるかに日本のライバルを抜いている。K-POPもJ-POPよりモテている。自信をつけた韓国にとって、日本は小さく見えてきたのでしょう。2012年8月、李明博大統領は、韓国の大統領として初めて竹島に上陸しました。その前に「日本はかつての日本と違う、あんなにもう大きくない」と言い、上陸後には「国際社会での日本の影響力も以前とは違う」と述べました。ここに象徴的に表れています。
李明博は保守の政治家です。冷戦時代は、日韓は反共保守同士のそれなりの連帯がありました。冷戦後、その紐帯を喪失し、右も左も「韓国は強くなったのだから、再交渉して日本から取り戻すべき」という、“取り戻せナショナリズム”なのでしょう。国としての名誉も正義も国民個々人の奪われた権利も”取り戻せ“ということなのだと思います。

白井:中国の態度も気になるところです。バイデン新大統領との電話協議を待ち侘びた文在寅に対して、1月26日に電話をかけたのは習近平であり、バイデンとの電話は2月4日でした。海外に拡張しようとする中国にとって、ユーラシアの一番東にあるのは朝鮮半島であり、西側諸国との最初の接点は韓国です。日本にとって、韓国の存在が防波堤になっているという意味合いは大きいのでしょうが、最近の韓国はアメリカにつくのか、それとも中国につくのか、どっちつかずの状況のようにも見えます。

船橋:韓国には、中国とは「特別な関係」を結びたい、できれば日本、さらにはアメリカに対しても“中国カード”を使いたい-米中の間の「戦略的バランサー」になりたいという夢想もひところ、聞かれました-という気持ちがあるのでしょう。ただ、現実は、そんなに甘くない。中国は韓国と「特別な関係」を持ちたいとは思っていない。中国の戦略的意図は、北朝鮮を日米同盟に対する緩衝国家とし、米韓同盟を中和化し、経済的には従属国にさせようということでしょう。現に、THAADをめぐって韓国はイヤというほど中国に威嚇されました。経済的には中国は鉄鋼や造船、さらには自動車など韓国の国際的競争優位を根こそぎ突き崩す最大の脅威となりつつあります。

ただ、こういう地政学と地経学の巨大な変化の時代だけに、実は、日韓が手を握ったときにどれだけ大きなレバレッジをそれぞれの国が持つことができるのかということも冷静に見ておく必要があります。いまの文在寅政権が相手では難しいかもしれませんが、そのオプションを探求し続けることは大切だと思います。日韓で安定した関係を作っていくことが重要です。中国の場合、歴史問題はそれこそ「歴史戦」として地政学的に使ってきます。しかし、韓国の場合、それは「歴史戦」というより国内政治と国民情念のほとばしりのようにも見えます。中国とは「合意なき合意(agree to disagree)」の裏芸ができるが、韓国の場合、それは難しい。政権が変わるとすべてちゃぶ台返しになってしまう。日韓の連携には、双方とも強靭な国内政治の裏打ちが必要です。日韓双方ともに大きな政治が求められるのです。

(本文敬称略)

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《TN》

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