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メディシノバ Research Memo(3):進行性多発型硬化症のP2b治験で2つの主要評価項目を達成(1)
2017年11月28日 / 06:05 / 15日前

メディシノバ Research Memo(3):進行性多発型硬化症のP2b治験で2つの主要評価項目を達成(1)


*15:02JST メディシノバ Research Memo(3):進行性多発型硬化症のP2b治験で2つの主要評価項目を達成(1)
■開発パイプラインの動向

1. イブジラスト
イブジラストは、気管支喘息及び脳梗塞発症後の治療薬として杏林製薬が1989年に日本で上市した医薬品で、既に320万人以上の患者に処方されており、安全性に関しては問題のない医薬品となっている。メディシノバ4875は、2004年に多発性硬化症を適応疾患として独占的・全世界(日本、中国、韓国、台湾を除く)での再許諾可能な開発販売のライセンス(点眼薬を除く)を取得した。その後、2009年の旧Avigen(アヴィジェン)社の吸収合併および独自の研究開発の結果、現在は中枢神経系疾患における6つの適応領域において開発を進めている。このうち、進行型多発性硬化症を適応対象としたP2b治験のトップラインデータが10月26日に発表されたほか、ALS、覚せい剤依存症に関するP2治験のデータ解析結果の発表もそれぞれ2017年12月8日(米国時間)、2018年1~3月頃に予定されており、その内容に注目が集まる。また、新たな適応領域として動物実験の結果からグリオブラストーマでの延命効果が確認されており、同疾患を対象とした開発も進めていく意向を示している。各開発動向は以下のとおり。

(1) 進行型多発性硬化症
多発性硬化症とは中枢性脱髄疾患の1つで、神経線維を取り巻くミエリン(電線を被覆する絶縁体のようなもの)が炎症で壊れ、神経伝達がうまく伝わらなくなることで発症すると考えられている。症状としては、手足のしびれ、目が見えなくなる、失禁、歩行困難などを引き起こす。高緯度地方に住む白人に多い病気で、患者数は世界で約230万人、米国で40万人以上、日本では1.3万人と言われており、厚生労働省では難病指定されている疾病である。

多発性硬化症には発症後の状態によって再発寛解型(症状が出たり、治まったり(寛解)を繰り返すタイプ)、一次進行型(発症後、症状が治まらずに進行(悪化)するタイプ)、二次性進行型(再発寛解型から進行型に移行するタイプ)の3タイプに分類され、全体の約85%が再発寛解型、約15%が一次進行型と診断され、再発寛解型については約半数が10年以内に二次性進行型へ移行すると言われている。また、症状悪化の進行は、脳の委縮に起因することがわかっている。

2005~2008年に欧州で実施された多発性硬化症のP2治験結果(被験者数300人)から、イブジラストが脳萎縮の抑制効果があり、進行型多発性硬化症の症状進行を予防・抑制する効果が高いことが明らかとなり、同結果を受けて進行型多発性硬化症を適応対象として米国でのP2b治験を2013年より開始した。同治験にはNIH(国立衛生研究所)より11.3百万ドルの助成金が拠出されており、クリーブランド・クリニックやNeuroNEXT(NIHの下部組織)が中心となって、全米28ヶ所の医療施設で255人の被験者を対象に実施され2017年5月に完了、同年10月26日に治験結果のトップラインデータが発表された。

治験デザインは、現在治療薬(コパキサン、INFβ)を服用している被験者に対して、プラセボ対照二重盲検試験を2年間実施し、主要評価項目としてはイブジラストの脳萎縮抑制効果と安全性及び認容性をプラセボ群と比較するというもの。今回の発表によれば、脳萎縮抑制効果についてはプラセボ群に対して委縮進行率が48%遅いとのデータ結果となり、統計的有意差でp=0.04となり成功基準となるp=0.05以下の水準を達成した。

2017年3月に一次進行型多発性硬化症治療薬としてFDAが初めて承認したスイスのロシュ社のオクレリズマブ(Ocrevus)は、脳萎縮の進行抑制は17.5%に留まっているにも関わらず、症状悪化を抑制できていることからも、イブジラストへの期待が高まっている。また、安全性や認容性についてもプラセボ群との比較において差は見られなかったと結論づけており、主要評価2項目で目標を達成したことが明らかとなった。脳萎縮の進行率を約半分のスピードに抑制する結果となったことで、進行型多発性硬化症の症状悪化を抑制できることが治験結果から明らかとなったことで、上市に向けて一歩前進したと言える。

今回の発表を受け、同社では今後の開発方針を決定していくことになるが、考えられるケースとしては自社でP3治験を行い、単独で上市を目指すケース、製薬企業にライセンスアウトするケースの2通りが想定される。同社は将来的にグローバル製薬企業になることを目指していることから、余程の好条件でない限りは自社で上市を目指していく可能性が高いと弊社では見ている。仮に、P3治験を行う場合は、被験者数1,000名程度としても総額100億円超の費用が必要になると見られる。資金調達に関しては新株発行の手続きが容易な米NASDAQ市場で進めていくものと想定される。

現在、二次進行型多発性硬化症の治療薬としては症状の進行を遅らせることを目的として、ミトキサントロンが唯一承認されているが、心毒性の危険性があるため長期の使用はできない。また、一次進行型多発性硬化症治療薬としては、ヒト化モノクローナル抗体のオクレリズマブのみが承認されている状況である。このため、安全性の高い治療薬の開発が強く望まれており、イブジラストはFDAよりファストトラック指定も受けている。多発性硬化症治療薬の世界市場規模は、再発寛解型患者向けで190億ドル超となっており、進行型での治療薬開発に成功すれば、同程度の需要が見込まれるだけに今回の治験結果の発表は前向きに評価されよう。

(2) ALS(筋萎縮性側索硬化症)
ALSとは、脳及び脊椎の神経細胞にダメージを及ぼす進行性の神経変性疾患の一種で、発症原因はまだ解明されていない。症状としては、手足など特定の筋肉を動かすための脳からの指令が何らかの理由で届かなくなることで筋肉が萎縮し、筋力低下の進行に伴い随意運動が不自由となる。発症から3~5年ほどで呼吸不全となり、人工呼吸器などの補助が必要となり、診断されてからの平均生存期間は2~5年と言われている。ALSの症状進行には、研究結果からグリア細胞であるアストロサイトとミクログリアの異常が関与していることが判明しており、イブジラストの持つグリア細胞活性抑制効果により、症状の進行抑制効果が期待されている。

米国ALS協会によれば、米国内の患者数は約2万人で、毎年6千人が新たに診断されていると言う。また、日本でも患者数は約9千人で希少疾患、難病指定されている。現在、承認されている治療薬としてはリルゾール(開発元、現サノフィ)とエダラボン(開発元、田辺三菱製薬)がある。ただ、リルゾールについては、延命効果が2~3ヶ月と限定的で効果は低いと見られている。一方、エダラボンは2015年6月に日本で承認されたものだが、2017年5月に米国でも日本の治験データを援用する格好で承認を取得している。ただ、対象は発症後2年以内の軽度の患者で、かつ腎機能に異常がない患者に限定されている。また、薬効についても治験結果から機能障害の進行を2ヶ月程度遅らせる程度のものであり、効果は決して高くない。このため、イブジラストがこれら先行品を上回る薬効が得られれば、上市の可能性は高まると考えられる。米国でファストトラック指定及びオーファンドラッグ指定を受けているほか、欧州でもオーファンドラッグ指定を受けるなど、同領域においては薬効の高い治療薬が依然、望まれている。ALS治療薬の市場規模としては、米国だけで年間約10億ドル規模の需要があると見られている。

ALSを適応対象とした治験については、2014年10月よりカロライナ・ヘルスケアシステムの神経科学研究所・神経筋ALS-MDAセンターにてP2治験が開始され(リルゾール服用のALS患者70人、期間は12ヶ月で最初の6ヶ月はプラセボとの二重盲検試験、残り6ヶ月をオープンレーベル試験とする)、現在は患者登録が完了し、データ解析を行っている段階にある。同治験では主要評価項目としてリルゾール服用患者に対するイブジラストの安全性と忍容性の評価、副次的評価項目として機能障害レベルを判定するALSFRS-R(改訂版ALS機能評価スケール)※において、症状の進行具合をプラセボ群と比較する評価等となっている。解析結果については、2017年12月8日~10日に米ボストンで開催されるALS/MND学会において発表される予定となっている。

※日常生活における機能を把握するための評価方法で、言語、嚥下、身の回りの動作、歩行、呼吸等の項目で構成されており、それぞれ運動機能のレベルに応じてスコア化している。


2017年4月に発表された中間解析結果では、47名の被験者のうち12ヶ月の治験を完了した31名(プロトコール完了群)とオープンレーベル試験開始前に試験を終了した16名(早期中断群)について、オープンレーベル期間終了後の生存率を比較したところ、プロトコール完了群の生存率が有意に高いデータ結果が示された。また、筋力評価については発症症状によってグルーピングして解析したが、有意差が見られた症状のグループと、変化がなかったグループが混在する結果となり、次の治験では有意差が見られた症状の患者を対象とした治験を行うことが重要との考えが示された。なお、今回の治験デザインは統計学的有意差を検出するデザインではないため、次のステップとしては、統計的有意差を検証するプロトコールでP2b治験に進むものと考えられる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)


《TN》

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