July 18, 2018 / 2:55 AM / a month ago

萩原工業 Research Memo(4):価格競争に終始しない、高収益のビジネスモデルを構築(2)


*15:04JST 萩原工業 Research Memo(4):価格競争に終始しない、高収益のビジネスモデルを構築(2)
■事業概要

4. 海外展開
創業後4年目で、フラットヤーン製造装置を輸出した。1976年にインドネシア国営肥料会社に製袋一貫大型プラントを輸出した。1995年に、現地子会社「P.T.HAGIHARA WIHARTA INDONESIA(現P.T.HAGIHARA WESTJAVA INDUSTRIES)」を設立しており、合成樹脂加工製品事業に従事している。中国には、2002年に青島に合成樹脂加工製品事業を行う「青島萩原工業有限公司」を設立した。さらに、2005年に上海に機械の設計・部品調達・組立を行う子会社「萩華機械技術(上海)有限公司」を設立した。現在は、いずれも萩原工業7856の実質100%子会社になっている。機械製品事業では上海子会社に新たに営業部署を設置したり、フィリピンやタイでの取り組みが新規受注に結び付くなど、海外営業を強化している。

2017年10月期の海外売上高は6,056百万円、構成比は26.1%であった。

合成樹脂事業の海外向けは、競争力の強い製品をピンポイントで販売する戦略を取っている。代表的な製品として、タンクライナーがある。同製品は、貯水タンクの内側に貼るインナーシートになる。オーストラリアや米国では、雨水、農業用水、工業用水の貯水のため、干ばつ地帯を中心に大型タンクを使用している。長年使用すると、錆が発生し劣化が進むが、同社のタンクライナーを鉄製タンクの内側に貼ることで、タンク本体の劣化を防ぐことができる。競合の塩化ビニール製に比べて、同社製品はポリオレフィン系素材を使用しているため、軽くて強いという特長がある。オーストラリアに加え、今後は塩化ビニール製品が多く使われている北米市場での展開を拡大する。また、同市場では広大な耕地面積と収穫量のため、穀物カバー用ラミクロスを戦略製品と位置付けている。

5. 戦略製品群
トップシェア、高い収益性、成長性などの観点から、戦略製品を選定する。現在は、「バルチップ」「粘着テープ原反」「その他高機能化製品」「フィルムスリッター」が相当する。全社の売上総利益率は29.6%(2017年10月期)だが、戦略製品群は30%超となり、同社の「金の成る木」(cash cow)になる。2017年10月期の戦略製品群の売上高構成比は、前期比1.0ポイント増の49.3%となった。2018年10月期は、前期に伸びた穀物カバー用ラミクロスが頭打ちとなったことで、戦略製品群の構成比は47.3%に低下する見通しだ。同比率を50%に高めることを目標としている。

(1) バルチップ−海外向けが回復、内需は安定的
「バルチップ」(BarChip)は、期待の戦略製品だ。同社が長年培ってきたプラスチック繊維延伸・製造技術から開発された、モルタル・コンクリート用ポリプロピレン補強繊維である。同社がバルチップを発売して20年以上経過したことから、参入者が出てきた。サプライヤーが増えることは、市場拡大を加速させるメリットがある。補強繊維(国内)市場では、同社が約7~8割の圧倒的なシェアを持つ。同社の強みは、性能対比でのコストアドバンテージ、太さの違うファイバーを持つ品ぞろえと用途開発など総合力にある。

当初はアスベストの代替品として誕生し、1995年の発売以来、瓦、外壁材などの補強材として建築分野で実績を上げた。その後、別タイプの製品開発により鉱山やインフラ向けにも用途を拡大し、高い評価を得ている。製品の特徴は、少ない量で補強効果が得られる、はく離・はく落防止、曲げタフネスの向上、耐食性に優れるなどである。日本では、建築と土木工事の市場規模の割合が7:3であるが、バルチップの売上高では3:7と割合が逆転している。建築分野は、建築法や消防法が壁となり新工法の浸透を妨げており、特に公共工事でその傾向が著しい。しかし、繊維のJIS化、工法としての採用を目指し、建築分野への取り組みを強化している。

建築用途では、バルチップが物流施設の土間床用コンクリートに使用されてから20余年が経過しており、その耐用性が現場で実証された。わずらわしいワイヤーメッシュの設置が省略でき、コスト削減と工期短縮が両立する。工事現場の最優先事項は人手確保であり、バルチップを混入するメッシュレスコンクリートは省人化・省力化の点で評価が高い。

土木用では、オーストラリアや南米等の鉱山や日本の東京外環道路が知られている。オーストラリアの鉱山向けは、中国経済の成長率鈍化や資源価格の下落により、需要が減少傾向にあった。一方、用途開発が進んでおり、民間建築や社会インフラ整備にも使用されるようになった。リオ五輪に関連した需要も取り込んでおり、今後は東京オリンピック関連のビジネスに期待している。鉄道の軌道用として枕木の高さ調整コンクリートの補強、コンクリート道路の補強、トンネル覆工用モルタル・コンクリートのはく落防止・ひび割れ抑制補強に使用されている。衝撃波が生じる鉄道トンネルの出入口に使用される確率が高い。

2003年に、NEXCO(旧日本道路公団)の「トンネル施工管理要領」においてトンネル覆工コンクリート用補強繊維「パルチップJK」の使用が可能になった。コンクリートに添加した繊維の架橋効果により、コンクリート片の落下を防止し、第三者被害の予防に寄与することが確認された。東京外環道路の工事はピークを越えたものの、バルチップの用途開発が進んでいることから、国内では高水準の需要が続くと予想している。

今後の大型プロジェクトでは、リニア中央新幹線が期待される。同プロジェクトに関する同社からの具体的なコメントはなく、業績予想にも入れていない。想定される需要は、軌道及びトンネル覆工コンクリートの補強材としてバルチップが使われることである。全ルート438キロメートルの中央新幹線は、2027年に品川−名古屋間、2037年に名古屋−大阪間の開通が予定されている。品川−名古屋間を最速40分で結ぶ予定のため、直線的ルートを最高時速505キロで走ることを計画している。用地確保が困難な東京、名古屋、大阪の大都市圏では、公共性が高いことから地権者の補償が必要ない「大深度地下」を活用する。品川−名古屋間のうちおよそ250キロメートル、同ルートの8割以上がトンネルとなる。山梨県甲府市付近から南アルプス(赤石山脈)を経て名古屋市付近に至る直線ルートをとる。難工事や保守作業が困難な個所での補強材の使用が期待される。

海外では、スペインにおいて下水道のコンクリート・セグメントに使用されている。地中に埋設後の補修工事が困難なため、耐久性を高める同社製品が採用されている。

(2) 機械製品事業
フラットヤーン製造技術を応用して、幅広い用途向けにスリッター(裁断機)を開発、製造・販売している。レジ用紙ロールのスリッター、偏光フィルムを裁断するスリッター、タッチパネル用フィルムのスリッターなどでトップシェアを持つ。リチウムイオン電池(LiB)のセパレータ用のスリッターも手掛ける。大気汚染を克服し、次世代自動車で主導権を握ることを目指す中国は、プラグイン・ハイブリッドカー(PHV)や電気自動車(EV)などのエコカー普及のために補助金政策を取っている。中国国内におけるリチウムイオン電池の生産増加により、セパレータ用スリッターの需要が旺盛だ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)


《MH》

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