June 9, 2020 / 6:13 AM / a month ago

ワコム Research Memo(5):2020年3月期は大幅な営業増益。「ディスプレイ製品」の戦略が奏功(2)


*15:05JST ワコム Research Memo(5):2020年3月期は大幅な営業増益。「ディスプレイ製品」の戦略が奏功(2)
■ワコム6727の決算概要

2. 事業別業績の概要
(1) ブランド製品事業
売上高は前期比6.3%減の42,587百万円、セグメント利益は同6.3%減の1,706百万円と減収減益となった。製品別の売上高は以下のとおりである。

a) 中核のクリエイティブビジネスの売上高
前期比2.0%減の37,147百万円とわずかに減収となった。注力する「ディスプレイ製品」がコロナ禍の影響(販促活動の制限等)を受けながらも順調に伸びた一方、「ペンタブレット製品」や「モバイル製品」が低調に推移した。「ディスプレイ製品」は、2019年1月にリリースした16インチサイズのエントリーモデルが通年寄与したほか、7月にリリースした22インチサイズのシリーズや2020年1月にリリースした13インチサイズの初心者向けモデルも立ち上がってきた。一方、「ペンタブレット製品」はプロ向けモデルがリリースから3年が経過したこともあって減速傾向にあるほか、中低価格帯モデルについても、1)他社からの価格攻勢が激化していること、2)「ディスプレイ製品」へ需要がシフトしていること、の2つの要因により苦戦が続いている。もっとも、2)については、同社の戦略的な経営資源のシフトを背景とした「ディスプレイ製品」の伸びで吸収しているとの見方もできるだろう。また、「モバイル製品」についても、製品ラインアップを更新したものの、製品ライフサイクルの後期に入ってきた既存製品の停滞により大幅減収となった。ただ、今後の5G導入等に伴うプロユースの変化を新たなビジネス機会として捉えており、現状は移行期としての側面が強いようだ。

b) コンシューマビジネスの売上高
前期比43.7%減の1,326百万円となった。マイクロソフトMSFTとの共同開発によるウィンドウズインク対応のスタイラスペンの新製品※を2019年6月にリリースしたが、売上高は引き続き低調に推移した。

※ウィンドウズタブレットでのデジタルインク活用に最適なスタイラスペンの第2世代として、「Bamboo Ink(バンブー インク)」と「Bamboo Ink Plus(バンブー インク プラス)」をリリース。


c) ビジネスソリューションの売上高
前期比20.8%減の4,114百万円となった。金融機関など法人向けに液晶サインタブレットや液晶ペンタブレットの拡販に努めたものの、市場動向や競争激化の影響により低調に推移した。特に、前期に大型案件獲得があった米国での反動減をはじめ、欧州やアジアなどで減収となった。

利益面(セグメント利益)では、米国の対中輸入関税引上げの直接的な影響(約10億円の減益要因)や為替相場の影響(約8.6億円の減益要因)※といった外部要因が利益を圧迫したものの、販管費の最適化を進めたことにより、セグメント利益率は4.0%と前期並みの水準を確保した。

※対米ドルによる影響はほぼニュートラルな状況になっているものの、対ユーロ及び対アジア通貨による円高の影響を受けた。


(2) テクノロジーソリューション事業
コロナ禍による影響(主にタブレット・ノートPC向けペン・センサーシステムに関する生産・サプライチェーンや営業活動の制限等)を一部受けたものの、売上高は前期比4.4%増の45,993百万円、セグメント利益は14.9%増の7,650百万円と増収増益となった。各製品カテゴリー向けの売上高は以下のとおりである。

a) スマートフォン向け
ペン・センサーシステムの売上高は前期比11.4%増の20,349百万円と大きく伸びた。主要顧客であるサムスン電子の最新モデル(Galaxy Note10/10+、Note10 Lite)向けが好調であった。

b) タブレット・ノートPC向け
ペン・センサーシステムの売上高は前期比0.6%減の25,644百万円とわずかに減少した。ただ、メーカー各社からはアクティブES方式デジタルペン製品への高い評価を得ており、主要メーカーへの販売は増加しているようだ。

利益面(セグメント利益)では、増収効果のほか、スマートフォン向け機能充実による単価向上、販管費の最適化などにより大幅な増益を実現し、セグメント利益率も16.6%(前期は15.1%)に上昇している。

3. 2020年3月期業績の総括
以上から、2020年3月期の業績を総括すると、コロナ禍の影響等により売上高は伸び悩んだものの、販管費の最適化により大幅な営業増益を達成したところは評価できる。特に、複数の外部要因(米国の対中輸入関税引上げや為替相場、コロナ禍の影響等)がマイナスに働いたことを踏まえると、決算数値以上に手応えのあった1年と評価しても良いだろう。今後に向けて大きな成果となったのは、2019年1月から販売開始した「ディスプレイ製品」のエントリーモデルが、一連の新製品リリースを通じて着実に軌道に乗ってきたことである。また、イノベーションリーダーとしてデジタルペン・インク領域でのデファクトスタンダードを目指す「テクノロジーソリューション事業」においても、主要メーカーやパートナー(ソフトウェア企業)との連携強化により次世代向けのプロジェクト数が順調に伸びており、その中には強い需要が生まれている製品もあるようだ。課題として取り組んでいる内部体制(事業間連携等)や市場創造力の強化はまだ道半ばであるものの、具体的な成果も出始めており、更なる伸びしろとして今後の動向に注目したい。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)



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