June 10, 2020 / 6:20 AM / a month ago

アンジェス Research Memo(5):NF-κBデコイオリゴは2020年第4四半期頃に臨床試験結果の中間発表予定


*15:15JST アンジェス Research Memo(5):NF-κBデコイオリゴは2020年第4四半期頃に臨床試験結果の中間発表予定
■アンジェス4563の主要開発パイプラインの動向

2. NF-κBデコイオリゴ
NF-κBデコイオリゴは、人工核酸により遺伝子の働きを制御する「核酸医薬」の一種で、生体内で免疫・炎症反応を担う「転写因子NF-κB」に対する特異的な阻害剤となる。主にNF-κBの活性化による過剰な免疫・炎症反応を原因とする疾患の治療薬として、研究開発を進めている。

(1) 椎間板性腰痛症(注射投与)
椎間板性腰痛症の患部に注射投与することによって、慢性腰痛に対する鎮痛効果とともに、椎間板変性に対する進行抑制や修復を促す効果が期待される。新タイプの腰痛治療薬として2018年2月より米国で第1b相臨床試験(プラセボ対照二重盲検ランダム化比較試験)を開始し、2020年2月に予定した25例の患者投与を完了している。今後、投与された患者を二重盲検で6ヶ月間の安全性と有効性(痛みの緩和など)を評価し、その後6ヶ月の非盲検観察期間で長期安全性、忍容性及び有効性を評価していくことになる。

臨床試験の中間報告として、投与後6ヶ月間の安全性と有効性に関するトップラインデータを2020年第4四半期頃に発表する予定にしている。椎間板性腰痛症は慢性的な腰痛疾患で、特に中高年層を中心に患者数は多い。米国では治療法として椎間板内注射が一般的であり、手技に習熟している医師も多いため、NF-κBデコイオリゴの導入が進む環境は整っていると同社は考えている。ただ、鎮痛効果だけでは既存治療法との差別化が難しいため、椎間板変性に対する進行抑制や修復促進効果などが確認できるかどうかがポイントになると弊社では見ている。

(2) 次世代型「キメラデコイ」
同社は2016年7月に次世代型「キメラデコイ」の基盤技術の開発を完了し、製品開発を進めている。従来のNF-κBデコイオリゴと比較して、「STAT6」と「NF-κB」という炎症に関わる2つの重要な転写因子を同時に抑制する働きを持つため、炎症抑制効果も格段に高まることが期待される。実際、動物実験ではNF-κBデコイオリゴに比べ強い炎症抑制効果を持つことが確認されている。また、次世代型「キメラデコイ」は生体内での安定性に優れ、NF-κBデコイオリゴよりも分子量が3~4割少ないため、生産コストも低く抑えることが可能になるといった長所を持っている。

同社は具体的な対象疾患として、喘息、慢性関節リウマチ、変形性関節症、クローン病(炎症性腸疾患)などの炎症性疾患を想定している。既に開発が進行中の椎間板性腰痛症については既存のNF-κBデコイオリゴで開発を継続するが、今後新たに開発するものに関しては、基本的に「キメラデコイ」で進めていくことになる。現在は製品の完成度を高めている段階にあり、非臨床試験の開始時期は未定となっている。


高血圧DNAワクチンは、第1/2a相臨床試験の結果次第で早期導出の可能性も

3. 高血圧DNAワクチン
プラスミドDNA製法を用いたワクチンの1つとして、高血圧症を対象としたDNAワクチンの開発を進めている。同ワクチンは大阪大学の森下教授の研究チームにより基本技術が開発されたもので、血圧の昇圧作用を有する生理活性物質アンジオテンシンIIに対する抗体の産生を誘導し、アンジオテンシンIIの作用を減弱させることで長期間安定した降圧作用を発揮するワクチンとなる。

現在、主力の治療薬としてはARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬(経口薬))があるが、毎日服用する必要があり薬価も高い。このため、発展途上国では医療経済上の問題から使用が限定的となっている。同社が開発するDNAワクチンは既存薬よりも高薬価になると想定されるが、1回の治療で長期間の薬効が期待できるためトータルの治療コストは逆に低くなる可能性もあり、開発に成功すれば発展途上国も含めて普及拡大が期待される。

同社は2018年4月よりオーストラリアで第1/2a相臨床試験(プラセボ対照二重盲検ランダム化比較試験)を開始し、2020年3月に予定した24例の患者への投与を完了した。今後、二重盲検下で6ヶ月間の安全性と有効性(血圧の低下等)を評価し、その後6ヶ月の非盲検下での長期安全性及び有効性を評価していくことになる。

同プロジェクトに関しても、2020年第4四半期頃に中間報告として前半6ヶ月間の安全性及び有効性に関するトップラインデータを発表する予定としている。高血圧症に関しては市場規模も大きく、大手製薬企業からの関心度合いも高いため、試験結果の内容次第では比較的早期に導出が実現する可能性もあり、中間報告の内容が注目される。


急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を適応疾患とした臨床第1相試験は2020年内の開始を目指す

4. 急性呼吸窮迫症候群治療候補薬
同社は2018年7月にカナダのバイオベンチャーであるVasomuneと、急性呼吸不全など血管の不全を原因とする疾患を対象とした医薬品の共同開発契約を締結している。具体的には、Vasomuneが創製した化合物(Tie2受容体アゴニスト化合物)について全世界を対象とした開発を共同で進め、開発費用と将来の収益を折半し、また、同社がVasomuneに対して、契約一時金及び開発の進捗に応じたマイルストーンを支払うというもの。同社はHGF遺伝子治療用製品の開発を通じて蓄積した血管疾患に関する知見とノウハウを、今回の共同開発で生かしていくとしている。

最初の適応疾患として重症の呼吸不全である急性呼吸窮迫症候群(ARDS)※を想定した非臨床開発を実施している。今後、臨床試験に向けて製剤化を行い、早ければ2020年内に第1相臨床試験を開始する可能性がある。ARDSについては新型コロナウイルス感染症患者が重症化して発症し、死に至るケースが報告されている。根本的な治療薬がまだないためで、ここにきてARDS治療薬の開発についても国内外で開始する企業が増えるなど注目度が上がっている。Vasomuneと同社は臨床試験によりPOCを取得した段階で、製薬企業に開発・販売権を導出することを想定している。

※ARDSは根本的な治療薬がなく、有効なARDS治療薬が開発できた場合の潜在的な事業機会は世界で25億米ドル以上と見られている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



《YM》

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