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日本株

STIフードHD Research Memo(4):技術力、一貫生産体制、ポジショニングで差別化


*15:14JST STIフードHD Research Memo(4):技術力、一貫生産体制、ポジショニングで差別化
■事業概要

3. 差別化の源泉
STIフードホールディングス
2932は、チルド惣菜を中心にセブン-イレブンへの売上高を急拡大させているが、その背景には同社の強みであり、差別化の源泉となる技術力、一貫生産体制、ポジショニングがある。結果として、売上成長のみならず、高い収益性も維持・向上させることができるのである。

(1) 技術力
水産資源は鮮度が命といわれる。また、塩や砂糖、味噌、醤油、酒といった基礎調味料だけで、素材のおいしさを十分に引き出すことができるともいわれている。それが近年の工業化の中で、鮮度やうま味の維持のため殺菌剤や鮮度保持剤、添加剤など基礎調味料以外の補助材料を使うようになっていった。しかし、同社には機械より精密に鮮度の微差を見逃さない鼻と目を持ったプロがいるため、こうした方法を安易に採用することはなかった。その分、新しい製法を研究し、結果として参入障壁の非常に高い技術を開発することができたのである。既述のように、1997年に生鮮イクラの静菌技術を開発した。これにより、本物のサーモン卵のおいしさを引き出すことに成功した。そして、同社はコンビニエンスストア向けおにぎり用味付けイクラのパイオニアとなり、静菌技術は現在の成長につながる技術基盤となった。2018年1月には、ホットパック技術によって、一般家庭で魚を焼いて手でほぐしたフレークとほぼ変わらない食感と形状の紅鮭フレークと、オーブントースターやグリル、フライパンで焼成して得られる焼きタラコと変わらない食感、うま味、風味をもつ熟成炙りたらこを開発、成長に弾みをつけている。

2014年に開発した三段階焼成・ガス置換パック技術は、家庭の焼きたてのおいしさをパックに封じ込める技術で、このため保存料を使わずに消費期限を従来の約3日間から約10日間へと延長することが可能となった。コロナ禍のニューノーマルではセブン-イレブンの中食商材をけん引する人気製品となっている。このうち三段階焼成とは、遠赤外線焼成機と赤外線バーナーの間に入れた、高温の蒸気を発生する機械に魚を短時間通して加熱するプロセスで、一般の工場の大量生産では難しかった「湯ぶり(素早く熱湯にくぐらせることで表面の酸化物や魚特有の臭みやアクを取り除く料理法)」というひと手間を工程に付け加えることができた。これにより、塩や酒の浸透力だけで素材の「うま味」を活かした「パウチ惣菜」の開発につながった。商品のパッキングも、ガス置換(密封した包装から99.7%空気を除去して窒素を充填)を採用することで、薬品を使わず鮮度を保持することができるようになった。チルド惣菜は、セブン-イレブンも一押しの商品群である。

(2) 一貫生産
こうした技術を効果的に生かしているのが同社の一貫生産体制である。同社は、一貫生産と徹底した温度管理により冷凍・解凍の回数を究極の1回にまで削減する(産地で冷凍、工場で解凍、一気に製品化)ことで、おいしさの品質向上を図っているのである。分業体制を前提とする大メーカーによる製法では冷凍・解凍の回数が増えてしまい、結果的においしさに大きな影響を与えることになる。考え方の違いが根本にあるため、差別化以前の参入障壁ということもできる。また、旬や漁場、船、流通、調理によって違ってしまう自然の水産素材を、品質の安定や量産化、効率化を図りながら一貫生産するため、素材のスペックを細かく設定し、鮮度、素材の大きさ、肉つきなど基準を明瞭化し、鮮魚の裁断や切り身づくりの工程を工業部品のように標準化している。また、おいしさの根拠となる、アミノ酸、脂肪分、水分、油分、塩分、Brix、pH、色味、硬さ、粘度、歯ごたえなど舌で感じるすべても数値化している。もちろんプロの鼻と目をもち、取り組みを始めて15年以上の蓄積があっての業(わざ)ではあるが、このため、傷みやすく、湯ぶりで薄皮がはがれる可能性のあるイワシを使った「いわしの生姜煮」の商品化につながった。

一貫生産は、素材を使い切ることで徹底したフードロス対策にもなるというメリットがある。大型サイズに限定して集荷しチリで頭部をカットした後に冷凍した水産素材は、同社工場搬入後、唯一の解凍工程を通ってから徹底した温度管理がなされるため、全身が使えるのである。現在、切り身(背側)や中骨、切り身(ハラミ)、カマ・ハラス・端材は焼魚惣菜や缶詰などに製品化されているが、2021年春にも皮や尾ヒレ、背ビレも製品化する予定である。これでほぼ全身を製品化することになり、フードロスを低減すると同時に原材料コストも削減できるということになる。一挙両得である。

(3) ポジショニング
取引先がコンビニエンスストア最大手のセブン-イレブンであることも、同社にとって大きな強みとなっている。水産食材・食品は、地域の運動会やひな祭りといったイベントなどの需要、そして世界の漁獲高など供給の両面で大きく変動する。こうした需給変動があっても全国の店舗で欠品しないよう、適正在庫の確保や日々の需給チェックなどを行っているが、セブン-イレブンが収集するデータや知見を同社は利用することができる。また、マーケティングに強いセブン-イレブンの協力を得て、市場の変化に合わせた商品開発も行うことができる。このようにセブン-イレブンと協力しあえるポジションにいることでこれまでも商品を開発してきたが、これからもこうしたポジショニングを新商品の開発に生かしていくことになろう。すでに同社は、和食のみならず洋食(ムニエルやポワレなど)など新しいジャンルに積極的に挑戦することを考えており、メニューが広がることで、業容の拡大も視野に入ってくるものと見られる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)





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