September 16, 2009 / 5:58 AM / 8 years ago

「子ども手当」が車販売に追い風、環境シフトで設備投資も

 [東京 16日 ロイター] 民主党が強く推進する「子ども手当」の支給が、思わぬ分野で内需拡大をサポートしそうだとの見通しが複数の民間エコノミストから出ている。

 支給に伴う所得増効果が大きい世帯では「自動車購入」への支出が増えやすい傾向があるという。暫定税率廃止や高速道路無料化など同党の掲げる他の目玉政策も加わって、裾野の広い自動車産業の再活性化に結びつくとの期待感もある。一方で道路や車の利用増加が環境悪化を招く懸念があるが、環境技術への補助金などを活用しながら厳しい環境目標の実現に取り組めば、設備投資を刺激するというルートも加わり、景気回復に寄与する可能性も出てきている。

 <支出増加で、自動車購入の刺激効果大きく>

 民主党の政策の目玉と位置づけられている月額2万6000円の子ども手当は、子どもが多い低所得世帯で効果が最も大きくなる。そうした世帯を中心にどのような分野で消費拡大効果が期待できるのか──。

 2008年家計調査年報によると、家計全体で消費を増やす場合に支出効果が大きい品目は教育費、洋服や身の回り品、外食、旅行、自動車などだ。 

 子ども手当の支給に伴う実質的な所得増が期待されるのは、主に中学生以下の子どもがいる世帯。全体の23%を占める。クレデイ・スイス・証券チーフエコノミストの白川浩道氏の試算によると、子ども手当を支給される家計では、全額支給される11年度以降、所得は6.2%増加、消費支出は4.3%増加する可能性がある。

 中でも年収580万円程度までの所得者層の所得・支出効果は、1000万円超の所得層の2─3倍のインパクトになる。そうした低・中所得者層の場合、消費が一定の割合で増加した場合、ある品目の消費がどの程度の割合で増えるのか、ということを示す消費弾性値が大きいのは、白川氏の試算では自動車購入だという。子ども手当の支給を受ける世帯では、主に年収580万円程度までの所得者層を中心に自動車購入が18%程度増加、国内自動車販売がおおむね5─7%増加する可能性があると分析している。

 第一生命経済研究所・主席エコノミストの熊野英生氏は「追加所得が生じた場合の例として定額給付金を見ると、給付開始から4カ月間だけで28%程度が消費に回っている。エコポイント制度との相乗効果もあり、家電など必需品以外の購入に支出された割合が高かったことも参考になる」としている。その上で「子ども手当により、教育費負担が軽減される家計では、その分、車が買いやすくなることは間違いない」という。エコカー減税と異なり、自動車購入を直接後押しするものではないため効果は間接的だが、追い風になる可能性が高そうだ。

 <自動車産業に追い風で景気回復に近道> 

 一方、民主党が公約に掲げた高速道路無料化やガソリン税などの暫定税率廃止は、道路輸送コストの低下により、他の輸送手段から車へのシフトが高まることが予想される。

 子ども手当の支出効果とあわせて、車への需要が高まれば、自動車産業を軸とした産業全体の波及効果が予想される。実際に、国内生産全体が在庫復元の反動後も堅調に増加しているのは、各国政策の効果もあって自動車生産が好調なため。鉄鋼業や非鉄、プラスチック、電気機械、ダイヤなど、幅広い産業が後押しされている。

 ただ、国内の生産水準は金融危機前の8割程度の水準にあり、設備や雇用の過剰感は当面解消せず、国内外の自動車補助金の効果が息切れする来年以降は景気も再び弱含むのではないかとの懸念が強い。

 もし、新政権の政策効果が表れるなら、白川氏は「子ども手当が半額支給される一方で、配偶者・扶養控除の廃止が実施されない2010年度にも、自動車購入につながる可能性がある」と見ており、新政権の政策が自動車産業に追い風となれば、持ち直し始めている景気にとっては好材料と指摘する。 

     <環境対策積極化で設備投資回復のきっかけに>

     一方、自動車の交通量が増えることで環境への負荷は高まる。国土交通白書によると、単位輸送量当たりの自動車のCO2排出量は自家用車では鉄道の9倍、貨物輸送の場合は鉄道の7倍にのぼる。 

     新政権は2020年までに90年比25%の温室効果ガス排出量削減を実現することに強い意志をもって取り組むとしており、自らの政策で増える温室効果ガス対策に積極的に取り組む必要が出てくる。

     民主党の公約には「再生可能エネルギー導入の強力な推進」などが盛り込まれているが、その具体的方法などは明らかでない。白川氏は「今後、太陽光など再生エネルギー利用に向けて対策を積極化していけば、環境関連を中心に設備投資の回復にもつながる」と見ており、様々な分野での補助金や減税などの措置が打ち出される可能性があるという。既に石油元売り会社では昭和シェル石油(5002.T)や新日本石油5001.Tなどが太陽電池事業の展開に向けて動き出しており、民間企業ではエネルギー転換投資が始まっている。

     伊藤忠商事・主任研究員の丸山義正氏は、こうした所得移転とも言える数々の政策が実際に新たな需要を創出し、日本経済全体の規模を拡大させることが大事だとみている。そのために財源問題もカギを握るという。増税を伴う場合や赤字国債発行を原資とする場合は、単なる所得移転で終わってしまう可能性が高いが、ムダの削減、つまり非効率分野を効率化することが最も効果的だと指摘する。

     複数の民主党幹部は、これまで情報の透明性がほとんどなかった特別会計のあり方にメスを入れ、効率的な財政運営を図る方針を表明している。新政権が「伏魔殿」とも言われる特別会計にも踏み込んで、所得移転と成長戦略の両立を達成できるかどうか。新政権の経済政策成否のカギは、そこにありそうだ。 

     (ロイター日本語ニュース 中川泉記者 編集 田巻 一彦)

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