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電機メーカーの切り札に「3Dテレビ」浮上、コンテンツ課題
2009年10月8日 / 10:45 / 8年後

電機メーカーの切り札に「3Dテレビ」浮上、コンテンツ課題

 [東京 8日 ロイター] パナソニック(6752.T)やソニー(6758.T)などの大手電機メーカーは、立体的な映像を見ることができる「3D(三次元)テレビ」を2010年に相次いで投入する。薄型テレビの価格下落に苦しむ電機業界にとって、3Dテレビは付加価値を持った収益源として大きな期待感を抱かせる商品に浮上している。

 10月8日、3Dテレビは家電業界にとって、付加価値を持った収益源として大きな期待感を抱かせる商品に浮上。写真は5日、カンヌで開催の見本市で3Dのテレビ番組を見る男性(2009年 ロイター)

 ただ、視聴できる映像ソフトは、アニメを中心とした映画やゲームなどに限定される見通し。本格的な普及には、テレビ番組など幅広い視聴者層を対象としたコンテンツの開拓が必要になりそうだ。

 <シーテックは3Dが主役>

 「家庭でも映画館同様の臨場感を体験できる高画質な3Dテレビの実現はもうそこまで来ている」――。パナソニックの大坪文雄社長は、6日開幕したアジア最大級の家電見本市「CEATEC(シーテック)ジャパン2009」の基調講演で強調した。世界同時不況に伴う大幅赤字や大量の人員削減に加え、薄型テレビや半導体などの中核分野では、韓国や台湾などアジア勢との市場競争で劣勢といった厳しい現実が続いた業界にとって、3Dテレビは久しぶりに明るい話題性がある商品といえる。2010年にはパナソニックとソニーが発売する方針のほか、東芝も2010年度後半をめどに発売する意向だという。

 3Dテレビは、右目と左目それぞれの角度から撮影した映像素材を専用メガネを通じて立体的に合成する仕組み。3D映像の技術自体はかなり以前から存在していたが、ソニー関係者は「デジタル映像やフルハイビジョン、(高精細光ディスクの)ブルーレイもそろい、本格普及の土壌が出来た」と説明し、機が熟したことを強調する。

  シーテック会場には、パナソニック、ソニー、東芝(6502.T)、シャープ(6753.T)が試作機を公開し、三菱電機(6503.T)は米国で2年前から販売実績のあるプロジェクター方式の3Dテレビを展示した。各社の展示ブースには、専用メガネを掛けて3Dテレビに見入る来場者の波が続いた。 

 シーテック会場を視察中の米調査会社ディスプレイサーチのアナリスト鳥居寿一氏は、3Dテレビについて「新しいテレビとして非常に印象的。子供をディズニーランドに連れて行ったイメージだ」と語る。世界の薄型テレビ市場は「年率20―25%の価格下落が続いている」(鳥居氏)状況で、「このまま何も付加価値を付けないと、価格だけの競争になる。薄型テレビは、大型化、(高精細の)フルハイビジョン、超薄型化といった競争が一巡して、コモディティー(日用品)化しているが、3Dテレビは(差別化の)材料になる」と指摘する。

 <3Dは儲かる>

 3Dに関連した業界の盛り上がりの震源地は映画の都・米ハリウッド。パナソニックでブルーレイなどの事業戦略を担当する小塚雅之・蓄積デバイス事業戦略室長は6日、外国メディアへの説明会で「ハリウッドでは3年くらい前から非常に3D映画が注目を集めた。3Dスクリーンは(従来型の)2Dスクリーンに比べ集客率で2倍、客単価も1.5倍で、収益は3倍になることがわかった」と語った。

 映画会社の収益比率は「劇場が2割、(DVDやブルーレイなど)ホームビデオ5割、放送が3割」(小塚氏)とされる。劇場で人気の3D映画の収益構造を家庭向けビジネスにも波及させたいというハリウッドの思惑と「劇場の3D映像のクオリティーを劣化することなく家庭で忠実に再現したい」(パナソニックAVCネットワークス社技術統括センターの宮井宏所長)というメーカー側の開発意欲が一致し、3Dビジネス推進の原動力になっている。

 パナソニックなどメーカー側は、年内にもブルーレイ・ディスクや同機器における3D関連の規格をまとめ、国内外の関連メーカー・企業に技術や仕様に関するライセンス供与を開始する。2010年には20タイトルの映画がリリースされる見通しで、2012年ごろには累計80―100タイトルに増えるとみられている。

 <3D放送、本格化は不透明>

 このように3Dテレビに関連したビジネスは、ブルーレイ・ディスクに収めた映画やゲームなど「パッケージメディア」で立ち上がるものの、3D映像での放送番組が本格的に広がる気配はない。

 英有料衛星放送会社のBスカイBが、3D放送開始を検討しているという情報があるが、地上放送を中心とした3D採用の本格的な検討の広がりは今のところ見えない。「地上放送では2013年以降になると思う」(パナソニック・小塚氏)との見方が支配的だ。放送は世界各地域で方式が違うため、世界標準の規格に統一されたDVDやブルーレイのように一気にビジネスを進めにくいという事情もある。

 ただ、こうした状況が長く続けば、パッケージメディアでは売りにくいスポーツのような有力コンテンツが3D映像では広がらず、普及の推進力を失うことになりかねない。

 シャープの片山幹雄社長は、シーテック会場で記者団に対し、3Dテレビの発売に関して「ディスプレーだけあっても、コンテンツが整備されない状態では売れない。マーケットをにらみながら検討する」と慎重に語った。

 <テレビが自動的に3D化する?>

 現在、パナソニックなどが推進する3D映像は、映画会社などが専用カメラで撮影したコンテンツをブルーレイを通じて視聴する仕組みだ。しかし、今回のシーテックでは、この方式とは全く別のアプローチを披露したのが東芝だ。

 同社は、通常テレビ映像をテレビ自体の処理能力により3D映像に変換する技術を展示した。ソニーのゲーム機「プレイステーション3」に搭載される中核半導体「セル」を同社の液晶テレビに搭載。セルが持つスーパーコンピューター並みの能力で、通常の2D映像を3D映像に変換するという「力業」だ。同社の関係者によると、シーンによってはうまく3Dに変わらない場合があるというが、こうした課題が克服されれば、普通の放送番組や、家庭のビデオカメラで撮影した映像を3Dで視聴するといった楽しみ方が広がる可能性もある。東芝によると、2010年度後半にも発売する3D対応テレビとは別の技術で、実用化の時期は未定という。

 デジタル・メディア評論家の麻倉怜士氏は「3Dテレビが離陸するには、放送コンテンツが潤沢に出てくるような状況にならないとなかなか難しいのでは」との見方を示す。その上で同氏は、東芝の方式について「セルは非常にパワーがあるので、2D映像を3D映像に変換することがある程度うまくいけば、放送側は特別な対応をしなくてもいい。3Dの市場を作る上でのブースター(推進役)になるのではないか」と指摘している。

 (ロイター日本語ニュース、浜田健太郎、村井令二;編集 田巻 一彦)

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