November 24, 2009 / 12:59 AM / 11 years ago

シナリオ:公的資金による延命続けるJALに残された道

 [東京 24日 ロイター] 日本航空(JAL)9205.T再建の行方が不透明さを増している。今年10月に官民共同出資で設立された企業再生支援機構を活用した実質国有化による再生を目指しているが、前原誠司国土交通相が18日の衆院国土交通委員会で法的整理の可能性を否定しない考えを示すなど、政府方針にぶれがみえる。

 11月24日、公的資金による延命を続けるJALだが、法的整理の可能性も消えていない。写真はJALの西松社長。都内で1月撮影(2009年 ロイター/Issei Kato)

 「政府は当面、日本政策投資銀行によるつなぎ融資でしのぎ、国民やメディアの反応を見た上でJALへの対応を決める」(新生証券の松本康宏クレジットアナリスト)との見方もある。有識者や関係者から今後、予想される展開を探った。

 <企業再生支援機構傘下での再建>

 JALは現在、企業再生支援機構に支援を要請し、支援機構の支援決定を待つ状態。前原国交相が9月末に組織した作業部会「JAL再生タスクフォース」(10月末に解散)によると、最大7422億円の実質債務超過の状態にあり、民間金融機関による支援には限度があるため、1兆6000億円の政府保証付き借り入れを調達できる支援機構に再生を委ね、銀行団との個別交渉で債務を整理する私的整理の手法で再建を目指している。

 来年1月以降に支援を正式決定する支援機構が、どのような再建計画を打ち出すか現時点では不明だ。ただ、支援機構には弁護士の河本茂行常務など旧産業再生機構出身者が多数参画しており、タスクフォースのメンバーとつながりも深く「財務内容についてタスクフォースと大きく異なる『診断』結果を出すとは想定しにくい」(タスクフォース関係者)。

 ただ、タスクフォースがJALグループ企業の支援対象を中核3社のみに絞込んだ上で、総額2500億円の債権放棄と債務の株式化や3000億円の資本増強を計画したのに対して、支援機構が「より多くのグループ企業再生を目指すのであれば、債権放棄額など金融支援が膨らむ」(タスクフォース関係者)可能性がある。

 また、政府は公的資金による支援の条件として約3000億円の積み立て不足となっている年金の未認識債務の圧縮をJALに求めている。JALは23日にOB3割、現役社員5割の年金減額を提案したが、減額に必要な3分の2の同意が得られるか現時点では不透明だ。

 そこで政府内では、強制的な減額を可能にする特別立法を検討する動きがある。法的に年金減額を強制し、支援機構の下での再建を進めるためだ。

 <会社更生法申請>

 だが、企業年金には給与の後払い的性格があり、強制減額は憲法で保障された財産権の侵害との見方がある。このため特別立法に対して「OBらが異議申し立ての訴訟を起こし、国が敗訴する可能性もある」(帝国データバンク)との見方がある。さらに「厚生労働省などが特別立法を認めないこともありうる」(PHP総合研究所の松野由希・特任研究員)との声さえ出ている。

 支援機構がJALを支援するかどうか、「五分五分」(支援機構とJALに詳しい専門家)との見方もある。さらに支援機構は5年間の時限組織なので「債務が巨額で3年間でが再生が不可能とされれば支援できない」(機構関係者)と判断すれば、別の道をたどることになる。

 1つは会社更生法手続きなど裁判所の管理下で関係者の複雑な利害を調整する方法だ。再建を前提とした法的整理の枠組みとしては、民事再生法と会社更生法があるが、民事再生法は債権者が担保権を行使できる上、経営者の責任が必ずしも問われない。このため法的整理のプロセスに入った場合、JALは、経営者の更迭、担保権者の権利変更などを実施しやすい会社更生法を申請する公算が大きい。

 ただ、会社更生法では、株主も責任が問われ、100%減資と新株発行により既存の株主権が消滅させられるケースが多い。また、風評被害で大幅な減収となり、旅行代理店や燃油仕入れなとの取引が現金化される公算が大きい。タスクフォースは、支援機構を活用する場合は1800億円必要なつなぎ融資額が6000億円に膨らむと試算している。

 一方、会社更生手続きを利用すれば、年金債務を「支払額の3分の1まで最大限圧縮することは理論上可能」(TMI総合法律事務所の坂井豊弁護士)との見方もある。慶応義塾大学の中条潮教授(公共経済学)は「法的整理も私的整理も必要金額は同じ程度」とみる。「運航に必要な事業部分を(他の債権に先立って支払われる)共益債権として国が保証するのであれば、運航を継続できる形で再建を進めることができる。」と法的整理を提唱している。不採算な地方路線から撤退する場合も「旧JALはなくなりましたと言える法的整理でないと、地方の陳情に対して対応できない」(民主党議員)との懸念もある。

 <破産>

 現時点では多くの関係者が避けるべき選択肢としているが、破産の可能性もある。必要なつなぎ資金が手当てされない状態で会社更生手続きに入った場合、世界各地で航空機が運航停止となり営業収入がさらに減少し「スイス航空やパンナムのように破産手続きに移行する可能性も否定できない」(タスクフォース関係者)という見方がある。

 ただ、破産手続きを取れば年金を強制的に減額できるメリットはある。PHP総研の松野・特任研究員は、不採算路線からの撤退や、社内や政治とのしがらみを解決するには一度、破産するのが望ましいと指摘する。飛行機の運航継続は難しくなるが「全日本空輸(9202.T)と比べてJALは不採算路線が多く、路線数ではJALが国内の6割を占めるが、乗客数の国内シェアは3─4割。飛行機が飛ばなくても影響はさほど大きくない」(PHP松野氏)と言い切る。

 これまでJAL再建支援に関与した弁護士は「政府の方針が明確に示されない中で、メディア報道などから信用不安が起こり破産してしまう可能性もある」と話す。破産の場合、負債総額は2兆4542億円(タスクフォース試算)となり、協栄生命、リーマン・ブラザーズ証券(日本法人)、千代田生命保険に次いで戦後4番目の規模となる。

(ロイターニュース 竹本 能文記者、取材協力 久保 信博記者:編集 田巻 一彦)

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