November 24, 2009 / 7:21 AM / 10 years ago

焦点:デフレ宣言しても政府の具体策見えず

 [東京 24日 ロイター]  政府が20日にデフレを宣言し、金融市場ではその対応策に注目が集まっているが、鳩山由紀夫政権の閣僚からは具体策が出ないばかりか、日銀に対応を丸投げするかのような発言も飛び出し、様々な思惑が交錯している。

 11月24日、デフレ宣言しても政府の具体策見えず。写真は昨年11月、東京・丸の内で(2009年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

 市場関係者の中からは、政府が日銀に圧力をかけて国債買い切り額の増額を飲ませるのはないかとの観測も一部で浮上し始ためたが、財政規律への懸念を増幅させ、かえって金利が上昇するのではないかとの声も出ている。他方、市場には物価下落に伴う実質金利の上昇などで金融環境が引き締まっているとの指摘もある。デフレ宣言は、政府と日銀に大きな課題を突き付けた格好となった。

 <政府は丸投げ、日銀は政府の役割と認識>

 政府のデフレ宣言によって、10年以上持続している物価下落への注目が集まり、日本経済の課題として急浮上してきた。デフレは商品・サービス価格の下落で家計にプラス効果がある一方、企業活動にとっては実質金利の上昇をもたらすなど一般的に景気には、マイナスと受けとめられている。特に需要不足が招く物価下落は、企業収益を圧迫し、設備投資を減少させるなど日本経済全体に悪影響が大きい。こうした状況を強く懸念を示し、政府は「デフレ宣言」に踏み切ったものの、具体的なデフレ克服に向けた対策は示されず、閣僚の発言から浮かび上がってくるのは、日銀に対応を丸投げしている姿だ。

 24日の閣議後会見で、主要閣僚はデフレ脱却に向けた日銀の金融政策対応への期待感を隠さなかった。藤井裕久財務相は「物価は金融の問題であり、金融の役割が大事だ」と日銀の金融政策によるデフレ対応が重要との認識を示した上で、現在の需要不足に対応するための財政出動は「主たる役割ではない」と財政出動に慎重な考えを示した。 亀井静香郵政・金融担当相も「日銀が相変わらず寝てしまっていて起きそうにない」と日銀の対応を批判した。

 一方の日銀は、20日に白川方明総裁が記者会見で、デフレ対応について「根本的な原因に働きかける、つまり設備投資や個人消費といった最終需要が自律的に拡大する環境を整えることが不可欠だ。家計の将来の安心感や企業の成長期待を確保することが最も大事な課題」と指摘し、政府の役割を強調した。金融政策の役割については「需要自体が不足しているときには、流動性を供給するだけでは物価は上がってこない」と説明し、さらなる流動性の供給に消極的な姿勢を示している。

 こうしたやりとりについて、日興コーディアル証券・チーフマーケットエコノミスト、岩下真理氏は「今後、政府による日銀への風当たりが強まる可能性がある。財源確保が難しいため、金融政策に活路を求めて、マネー供給に関する議論が活発になることが考えられる」とみている。

 <金融環境は引き締まり、日銀は楽観的すぎるとの指摘も>

 ただ、量的緩和時代の経験として、日銀が流動性の供給を大幅に拡大しても、それが貸し出しの拡大などを通じて景気を押し上げる効果が限定的だった、と複数の日銀幹部は指摘する。デフレ克服には財政と金融が一体となった取り組みが求められる。

 JPモルガン・チーフエコノミストの菅野雅明氏は、技術的にデフレ脱出は困難なことではないと指摘。政府が支出を増やし、日銀が輪転機を回してお金を増刷すれは十分であるが、高橋是清蔵相時代のそうした施策が失敗したことや、1990年代の相次ぐ景気対策による財政拡大の長期化が政治のゆがみをもたらしたことなどを踏まえ「リスクを犯してまでもデフレ脱出のための方策を取るべきかについて、国民的な議論を行う必要がある」と指摘する。

 むしろ、現政権に対し「中長期的な政策が何ら打ち出されず、目先の予算の辻つま合わせに終始している。このような状況で財政支出拡大と国債の日銀購入増大という短期的なデフレ脱出策を模索することは危険この上ない」と懸念を示す。 

 他方、日銀に対しても「限られたカードを使うほどの危機感はない」(岩下氏)など、現下の経済情勢に対する認識が甘いとの指摘も市場関係者の中では目立つ。野村総研・金融市場研究室の井上哲也氏は「物価下落で実質金利は相当高い。円高も進行している。金融環境はかなり引き締まっているので、何かしなければニュートラルにならない」と見ている。

 具体策の1つとして想定される日銀の国債買い入れ増額は「政府の財政拡大を追認することになり、市場に対してかえって悪影響を与えかねない。短期国債のロールオーバーで対応することも考えられるが、将来的な金利リスクもあり、財政当局は嫌がるだろう」と指摘し、財政拡大に伴う国債増発にどのように対処するかは難しい選択だとの見方を井上氏は示す。 

 <年明けに景気悪化や円高強まれば、日銀への催促相場に>

 金融市場では、政府の圧力に弱いとされる日銀が、いずれ動かざるを得ない状況に追い込まれるとの声も出始めている。

 モルガンスタンレー証券・チーフエコノミストの佐藤健裕氏は、来年前半に日銀がさらなる緩和策を打ち出すとみている。「政府がデフレにあらためて言及したことで、金融政策へのプレッシャーが必然的に高まると予想される」と指摘する。

 日興コーディアルの岩下氏は「仮に来年前半に景気の踊り場を迎えた局面で急激な円高進行、もしくは金融市場が期末に向け株安などで混乱すれば、企業収益を一段と押し下げる可能性が高まる。そのような場合に限り、日銀は長期国債の買入れ増額を検討するだろう」とみている。

 ただ、金融政策だけでデフレが克服できないことは、白川総裁の説明でも明らかだ。政策金利はすでに0.1%前後となっており、引き下げ余地は小さいことに加え、国債増発に伴って日銀が国債買入れ増額に動くことは、かえって長期金利が上昇するリスクをはらむ。デフレがもたらす実質金利上昇による景気悪化を抑制するために政府と日銀がいかに協調して対処するのか、デフレ宣言とともに金融市場では、具体的な協調策に対する注目が急速に高まっている。

 (ロイター日本語ニュース 中川泉記者;編集 田巻 一彦)

 

 

 

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