December 1, 2009 / 7:21 AM / 9 years ago

日銀が新しい資金供給手段を導入:識者はこうみる

 [東京 1日 ロイター] 日銀は1日開催の臨時の金融政策決定会合で、追加の金融緩和策の導入を決定した。新しい資金供給手段の導入により、やや長めの金利のさらなる低下を促すことを通じて金融緩和の一段の強化を図る。

 12月1日、日銀は臨時の金融政策決定会合で、追加の金融緩和策の導入を決定。写真は日銀本店(2009年 ロイター/Yuriko Nakao)

 日銀の新型供給手段や金融市場への影響などに関する識者の見方は以下の通り。

●市場はやや期待はずれで円買い戻しの反応

<バークレイズ銀行 FXストラテジスト 逆井雄紀氏>

 為替市場の一部では、介入関連のなんらかの措置を期待する向きもあったが、今回の日銀臨時金融政策決定会合では、政策金利を据え置き、特段目新しい材料も無かったため、市場では、円の買い戻しを誘発した。

 日銀としても、今回の諸策が、現行の政策フレームワークの中で、ギリギリ妥協できる範囲であったと予想する。ドル/円は上値が重い状態が継続し、85円を目指す可能性もある。ただ、シカゴの先物ポジションを見ると、相当円のロングが累積してきているので、いったん逆方向(円安)に振れても不自然ではないだろう。

●日銀対応は小出しの印象、首相から一段の緩和要請も

<住友信託銀行マーケット・ストラテジスト 瀬良礼子氏>

 国債買い切りオペの増額を予想していたが、新たな政策としては小出しの印象がある。本当に10兆円の供給ができれば、日銀のバランスシートを膨らませるという意味で為替へのインパクトもそれなりに出てきそうだが、金融機関サイドにそれだけの応札ニーズがあるかがよくわからない。オペの状況を確認しないと参加者は判断できないだろう。

 政府は国債の買い入れを望んでいたとみており、政府は十分に満足しないかもしれない。鳩山首相との会談では、一段の緩和要求が出る可能性もある。その意味では、市場には今後も一段の緩和期待がくすぶりそうだ。

●失望、円債は梯子外された感じ

<みずほインベスターズ証券・シニアマーケットエコノミスト 落合昂二氏>

 国債の買い切り増額程度のことをマーケットは期待していたと思うが、「3カ月の資金供給オペの強化」ということで小出しという印象だ。デフレと円高対策には、ほとんど効果はないと思われる。政府の要請に応えたという感じで、失望的な内容だった。円債は緩和期待から大幅に買われ、金利は急低下した。今は梯子を外された感じだろう。もっとも、金融政策がこれで打ち止めとなるとは思えず、追加で対策が出てくることを想定すると、売られたとしても金利水準は元の水準には戻らないとみている。

●ターム物オペで円高対応、国債買い入れ増も決めるべきだった

<野村総研 金融市場研究室 主席研究員 井上哲也氏>

 声明文の2番目で為替の不安定さに言及しており、ターム物金利を押さえることで3カ月物金利の円とドルの金利逆転に対応して円高を何とか緩和しようと意図だろう。ただ、これだけなので、期待より地味な内容だった。市場が失望売りに出るのも仕方ない。今回のオペの内容はこれまでの企業金融支援オペとさほど変わらないが、7兆円規模で推移している企業金融オペに追加されるなら、プラス10兆円で規模は大きくなる。

 国債買い切り増額は、白川日銀総裁と鳩山首相との会談で必ずもちかけられると見ているので、言われてからやるなら財政支援的色合いとなり、今日の決定で実施すると決めた方がよかっただろう。

●日米金利の逆転解消が狙い

<バークレイズ銀行 ディレクター 箙将行氏>

 ドルが下落した際、LIBOR(ロンドン銀行間取引金利)でのドルと円の逆転現象が話題になっていたが、技術的な問題による円金利の高止まりを解消する狙いがあったのではないか。ドル/円の下落を止めるには、そこがカギだと日銀はみているのだろうと思う。LIBORの逆転によって進行した円高の緩和には、限定的だが一定の効果は出てくるのではないか。

 また、ドバイ・ショックなどで金融機関の資金繰りに再び悪化懸念が出てきたことへの対応という側面もある。企業金融支援特別オペがなくなる分、新たな資金供給オペ10兆円に振り替えることによって、資金供給額は実質的にプラスになる。これまでのように企業金融、クレジットに絞らず、共通担保のようなものを使って固定レートで市場全体を支援するということなのだろう。

●海外勢の日本株買いにつながるかは疑問

<ITCインベストメント・パートナーズ シニアポートフォリオマネージャー 山田 拓也氏>

 金融マーケット全体の動きをみると、それなりに評価しているが期待ほどではなかったというところだろう。日銀は、市場が期待していたような量的緩和や国債買い切り増額には踏み込まなかった。新型オペの詳細がまだわからないので評価は難しいが、資金需要が乏しい企業セクターに資金を流し込むことができるかは不透明だ。せっかく緊急会合を開き、政府も追加経済対策を発表するというときなのだから、財政支出と国債買い切りを組み合わせたようなパッケージにするべきではなかったか。ドバイ問題が落ち着き株を積極的に売るという雰囲気ではなくなっているが、これでは海外勢が日本株を独自に買おうという気になるかは疑問だ。

●市場は大胆な政策を期待、物足りない内容

<コスモ証券 投資情報部副部長 清水三津雄氏>

 臨時の政策決定会合を開いた日銀の姿勢は評価できるものの、出てきた対策は物足りない内容であり、株式市場が好感する内容とは考えにくい。先行きマーケット環境が悪化した際、アクションを起こすという安心感を与えただけにとどまり、デフレ解消を織り込むような材料にはならないだろう。

 市場は、最低でも国債やCPの買い取りなど、大胆な政策を期待していたと思われ、それが大幅な株価上昇につながった。何もない段階からは前進した印象があるほか、相場のトレンドは反転したため、株価が大きく崩れる感じはしないが、ここからの上値については限定的になるとみられる。

●苦肉の策だが期待外れで再び株売り

<みずほ総研 シニアエコノミスト 武内浩二氏>

 3カ月・0.1%の資金供給オペを復活させる形で打ち出したが、株安や円高への実質的な効果は見込めない。一段の量的緩和策は必要だったのではないか。政府がデフレを認定するなか、日銀としては一段の量的緩和に踏み切りたくなかっただろうし、日銀単独でできることは限られていた。苦肉の策といえるが、株買い材料にはならない。1日の取引では金融政策に対する期待で株が買われたが、あす以降は期待外れによる失望で売られるだろう。

 株安・円高にも無策だった政府と日銀が、とりあえず対策を打ち出したことは評価できる。ただ、もっと政府と日銀が一体となって、日本が今後さらに成長していくという全体像を示す必要があるのではないか。

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