December 22, 2009 / 7:30 AM / in 9 years

2010年の為替市場:米出口戦略がカギ、円高局面では介入も

 [東京 22日 ロイター] 2010年の為替相場は、2010年後半から2011年とみられる米利上げをいつ本格的に織り込んでドルが上昇に転じるかが焦点になりそうだ。ただ、ドルは経常赤字という構造的な売り材料を抱えており、強弱感が対立するなかで利上げ期待の高まりと後退を繰り返すボラティリティの高い推移になると予想されている。

 12月22日、2010年の為替相場は、米上げをいつ本格的に織り込んでドルが上昇に転じるかが焦点と予想される。写真はドル/円の為替レートを表示するモニター前に飾られた日米の国旗。11月に都内で撮影(2009年 ロイター/Toru Hanai)

 ドル売り局面では、ドル/円は戦後最安値付近となる80円前後まで下落する可能性があるとみる声も出ており、日本当局の為替介入もポイントになる。

 <三菱東京UFJ銀行 金融市場部チーフアナリスト 高島修氏>

 予想レンジ:ドル/円   80―95円

       ユーロ/ドル 1.35―1.50ドル

 米国の金融緩和と財政赤字拡大によるドル安圧力は来年も続く。春先にドルは戦後最安値付近となる80円前後まで下落する可能性がある。その後、市場が米国の利上げなどを意識するにつれて反発に転じるが、95円程度が精一杯。仮に利上げとなっても初期段階は債券投資家からの資金流入が期待できないこと、経常赤字からくる売り圧力が続くことなどから、その後もう一度下落するイメージだ。歴史的に見ても、日米短期金利差が2%以下の時はドル/円の下落が続く傾向がある。

 基軸通貨論争もドルの下げ圧力になるかもしれないが、厳密には基軸通貨制の揺らぎがドル安になるのかは不透明だ。ドルが基軸通貨となった71年以降、ドルはずっと下落してきた。その仕組みが変わるなら資金還流を伴ってドル高になってもおかしくはない。米経常赤字の縮小や景気循環から見ると、ドルは2010年が大底となって11年には戻る見通しもある。

 為替介入は必ずあるとはいえないが、警戒が必要だろう。過去、円の実質実効レートが5年移動平均から一定程度かい離すると、政府・日銀は介入を行ってきた実績がある。その水準が現在は80円前後にあたる。80円割れの水準はデフレスパイラルを食い止めるためにも、当局は介入を考えなければならない手段だ。中国が人民元上昇を抑制して米国債の購入から手を引いているからこそ、米国は誰かに国債を買ってもらわないといけない状況でもある。

 <三井住友銀行 市場営業統括部チーフエコノミスト 山下えつ子氏>

予想レンジ:ドル/円    80―100円

               (コアレンジ:85―95円)

      ユーロ/ドル  1.30―1.50ドル

      ユーロ/円   120―130円

 来年の焦点は、米国の金融引き締めが実現するか否かにある。米国は2010年の後半に利上げする可能性が徐々に高まってきているが、たとえ2010年中に利上げが実施されなかったとしても、超金融緩和からの出口に向かって進んでいく事が予想され、ドル高方向の相場展開となるだろう。市場では、利上げに関する思惑の高まりや後退を繰り返すため、ボラティリティの高い一年になる公算が高い。

 ユーロ圏の出口への歩みは米国との比較で遅れる見込みであり、欧州小国の財政懸念が続く中、欧州系金融機関に対する不安も残り、ユーロにとって弱材料が目立ち易くなるだろう。 

 日本では、政府・日銀が現在の経済状況がデフレであるとの認識を共有し、デフレ脱却を最優先の政策課題とする姿勢を示している。日本が出口戦略を模索する余地が出てくるのは、米国や欧州から一段と遅れる可能性が高く、円買いのモメンタムが継続し難い地合いとなるだろう。

 ただ、年初に投機筋がドル安を仕掛ける局面が2、3回はあるかもしれない。急激な円高局面では、日本単独の介入が実施されると見ている。来年は緩やかながらも米景気回復が見込まれるため、歯止めがかからないドル安が進行するリスクは限定的な為、ドル買い/円売り介入で、米国の協力は得られないだろう。

 <みずほコーポレート銀行マーケット・エコノミスト 唐鎌大輔氏>

 予想レンジ:ドル/円   82─100円

       ユーロ/ドル 1.35─1.53ドル

 来年の為替を考えるうえでの最大のポイントは、米国の利上げを織り込むタイミング。失業率が8%台に下がるなど、雇用統計が継続的な改善を示すかどうかがまずポイントになる。また、設備稼働率は足元改善してきたといっても歴史的にみれば今回の経済危機前の最悪の水準にあり、設備投資が活発化する水準にははるかに届かない。米連邦準備理事会(FRB)はこれらから「資源稼働率」(FOMC声明)を判断するとみており、米国の利上げは早くて来年後半。メーンシナリオは2011年だ。

 日米の2年債金利差からみると、ドル/円のコアレンジは90円台前半。レンジの下値を90円以上に切り上げられるのは2010年第4四半期になってからだろう。

 欧州中銀(ECB)の利上げは、さらにそのあとになるとみている。欧州の金融システムや住宅バブル、中東問題などを考えると、欧州景気はそう強くない。域内各国の成長格差を考えると引き締めに動きにくいという事情もある。そして、ここにきて緩和政策を一段進めた日銀が利上げに動くのは、さらに先になるだろう。 

 <JPモルガン・チェース銀行 チーフFXストラテジスト 佐々木融氏>

 予想レンジ:ドル/円   77―93円

       ユーロ/ドル 1.40―1.62ドル

 ドルは来年も弱い通貨であり続ける。米国への資本流入は経常赤字から生じるドル売りを補えていない。貿易赤字通貨が売られるのは仕方のないことだが、ドルの問題は売られていることではなく、買われなくなってきたことにある。世界最大の経常赤字国である米国の名目金利がゼロでは、ドルの立場は非常に弱い。通貨安になれば貿易赤字は減少するだろうが、ドルに割安感が出るまで下げは続く。ドルの名目実効レートは米財政赤字と1―2年遅れで相関しており、2010年はドルが急落する可能性も示唆している。

 一方、円は上昇イメージの強い1年だったが、実際のレートと購買力平価レートの平均乖離を元に算出したレートは現在、対ドルで100円程度、対ユーロで123円程度。つまり円は対ドルで若干割高、対ユーロで若干割安で、現在の水準は中立的だ。来年は1)米長期金利の低下、2)中国人民元の切り上げ、3)日本企業の増資に伴う海外投資家の日本株投資、4)海外中銀の円買い、5)日本版本国投資法、6)日本の財政懸念による円金利上昇と国内勢の資金回収――などが円高リスクとして挙げられる。円が独歩高となってドル/円が戦後最安値を更新する可能性もあると見ている。

 ドル/円が80円を割り込んで下落しても為替介入の可能性は低い。03年ごろから7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)が中国の硬直的な為替政策を公然と批判し始めたことで、G7メンバーである日本は介入を続けられる立場ではなくなった。国内的にも政府は現在、日本のGDPの18%にあたる102.9兆円を借り入れて外貨投資しておりこれ以上の外貨準備の増加は危険だ。

 <バークレイズ銀行チーフFXストラテジスト 山本雅文氏>

 予想レンジ:ドル/円   85─100円

       ユーロ/ドル 1.37─1.48ドル

       ユーロ/円  125─145円

 米国景気の循環的な回復に伴い米金融当局は緩和政策の段階的な解除に向かい、2010年第3四半期には利上げに踏み切る見通し。これに伴ってドル/円と高い相関性を持つ米中長期金利も上昇が予想され、2010年はドル/円が最も上昇しやすい通貨ペアになるとみている。ドルは2010年末に100円まで上昇するだろう。ドル金利上昇の一方で円金利は低位安定が見込まれ、キャリー取引でのファンディング通貨はドルから円にシフトしよう。

 円高が進行した場合でも、政府・日銀がデフレ阻止、円高阻止のスタンスを明確化しており、追加の金融緩和が見込まれる。為替が落ち着かなければ為替介入に踏み切るとみており、クロス円や株価の状況にもよるが、介入警戒レベルは85円割れだろう。これらの対応により、結果的に80円割れなどの大幅な円高は阻止されると予想している。

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