[東京 5日 ロイター] 三井住友フィナンシャルグループ8316.Tが8000億円超の公募増資を実施する方針であることが5日、分かった。6日にも臨時取締役会を開き、新株発行を決議する。複数の関係筋が明らかにした。
国際的な自己資本規制強化の動きに対応するとともに、アジアでのM&A(合併・買収)や投資銀行業務の強化に充てる。大規模な希薄化を招くが、中期的にROE(自己資本利益率)を現在の8%程度から10%台に引き上げる計画を示し、市場の理解を得たい考えだ。
発行決議後、三井住友は具体的な準備に入り、1月中旬にも発行条件を決定。月内に払い込み完了を目指す。国内と海外の投資家に販売するグローバル・オファリングになる。国内外の割合は今後調整するが、半々になる見込み。8000億円の普通株を発行すると、三井住友FGの発行済み株式総数は現行から約30%増える。
成長が加速するアジアでのM&A資金を確保するとともに、米シティグループC.Nから買収した日興コーディアル証券の資本増強などにも充当し、投資銀行業務の強化にもつなげる。欧米金融機関も自己資本増強のために不採算事業の売却を検討しているとみて、臨機応変に買収案件に乗り出す体制を整える。増資によりコアTier1を現状の5.9%から7%程度に引き上げる。
成長資金を確保する一方で、事業ポートフォリオの見直しにも着手する。国内外の不採算の貸出を見直すほか、不採算事業の洗い出しも行う。政策保有株式のリスクを現状のTier1の約40%から25%にまで削減する。こうした一連の施策で収益力の向上を図る計画だ。
金融機関の自己資本規制が国際的に強化される流れの中で、三井住友FGは昨年6月の公募増資で約9000億円を調達しており、今回の増資は金融危機後2度目の資本増強となる。昨年12月には、三菱UFJフィナンシャル・グループ8306.Tが08年末に続く2度目の公募増資で1兆円を調達するなど、金融機関は相次いで普通株の発行による中核的自己資本の強化に踏み出している。三井住友の今回の増資は、新株発行から6カ月間は新たな発行を行なわないとするロックアップ期間が明けた直後の大規模増資という異例の決断となった。また、昨年の公募価格3928円と比べると、今回の公募価格はそれを大幅に下回りかねず、投資家層からの反発も招きかねないリスクもある。
三菱に続いて三井住友が増資に踏み切ることで、今後の焦点はみずほフィナンシャルグループ8411.Tの資本政策に移る。
UBS証券の銀行アナリスト、大槻奈々氏は三井住友の公募について「増資を行なうこと自体は織り込まれていたが、8000億円規模というのは想定よりも大きい印象だ。今後は収益力をいかに高めるのかが重要だ」と指摘している。
(ロイター日本語ニュース 布施太郎 江本恵美 平田紀之)