[ワシントン/ロンドン 6日 ロイター] 世界の金融規制は金融危機以降、あまり変化していないが、2010年には大幅な改革が行われる見通し。米国と欧州連合(EU)の当局は今年、規制改革の総仕上げを行い、世界の銀行と市場の運営が根本的に変わるとみられている。
アナリストによると、レバレッジや資本について規制が厳格化され、最終的には銀行の利益縮小につながる。これまでは規制がなかった取引所外のデリバティブ市場も、新たな規制に従わなくてはならなくなる。
銀行による住宅ローンやそのほかの債務の証券化にも、新たな規制がかけられ、ヘッジファンドも今後、新たな監視に直面することになる。
しかし改革の実現には、手続き上クリアすべきハードルが残る。米国では、下院は金融改革法案を可決したが、上院はまだ可決していない。
規制改革法案をまとめる上で主要な役割を果たしてきた民主党のドッド上院議員は6日、中間選挙に出馬しない考えを表明。法案の先行きに暗雲がたれこめている。民主党のドーガン上院議員も中間選挙への不出馬を表明しており、与野党伯仲の上院で勢力図が変わる可能性がある。
ロビイストと共和党は、改革阻止への動きを強めている。上院は今月、法案の審議を再開する。ドッド議員が改革への強い意志を示し、民主党が必要な票を確保できれば、春にも可決される、とみられている。
上院が法案を可決すれば上下両院は法案を一本化し、オバマ大統領の署名を経て成立することになる。これは4月か5月と予想されている。
欧州では、EU加盟国と欧州議会が、改革案を承認する必要がある。
ワシントンの政治動向を調査しているコンサルティング会社ユーラシア・グループは「改革は、大恐慌以来の幅広い内容になるだろう。改革案が可決される可能性は高い」との見方を示した。
<1月13日がカギ>
欧米の金融規制改革をめぐる当面の日程では、1月13日がカギだ。
欧州議会はこの日、欧州委員会が新委員に起用したミシェル・バルニエ氏(仏)の承認公聴会を開催する。承認されれば、金融規制法案の策定を担うことになり、7月までに法案を公表する見通し。
米国では1月13日、金融危機調査委員会が初の公聴会を開催し、ゴールドマン・サックスGS.NやJPモルガン・チェースJPM.N、モルガン・スタンレーMS.Nの最高経営責任者(CEO)らが証言する。この公聴会では世界経済をゆるがせた危機の説明を求めるなど、過去の検証が中心になるが、上院での法案審議に影響を与える可能性もある。
<欧米の規制改革、内容の相互調整が重要に>
米上院は、1月20日に審議を再開する予定。一方、EU加盟国と欧州議会は、金融規制改革に関する最終的な調整を加速させる見通しだ。
米国とEUの規制改革がお互いにかけ離れた内容にならないように調整できるかどうか、向こう数カ月で議員の能力が試されることになる。
EU金融サービス業界の専門家、グラハム・ビショップ氏は「欧米は改革が対立しないようにすると言うが、それは議員次第だ」と述べた。
主要国の金融監督当局でつくるバーゼル銀行監督委員会は近く、昨年12月に提示した規制案について、その影響の検証を開始する見通し。2012年末から銀行に新たな自己資本比率規制を課すことになる。
(Kevin Drawbaugh記者、Huw Jones記者;翻訳 吉川彩;編集 村山圭一郎)