January 22, 2010 / 1:41 AM / 10 years ago

オバマ米大統領が金融規制案を発表:識者こうみる

 [ワシントン/東京 22日 ロイター] オバマ米大統領は21日、金融機関のリスクテークに関する諸制限を一段と厳格化するよう提案した。一部の金融機関にとって最も収益性の高い業務を制限する内容となっている。これを受け、この日のニューヨーク市場で株価は下落。銀行株が大幅安となり、ドルも売られた。

 1月21日、オバマ米大統領が発表した記入規制案についての識者の見方をまとめた。写真はニューヨークで2009年3月撮影(2010年 ロイター/Lucas Jackson)

 新規制が金融業界に与える影響などに関する識者の見方は以下の通り。

●投資銀行業務の分離も

<ヒルタウンセンド・キャピタルの社長兼最高経営責任者(CEO)、ゲーリー・タウンセンド氏>

 具体的な内容が示されていない。あるのはオバマ大統領の怒号と非難だけだ。規模抑制に関する大統領の発言が示唆するのは、金融機関によるこれ以上の合併や統合はないということだ。これは特にトレーディングに影響を及ぼすものではない。

 投資銀行業務と商業銀行業務の統合に関する規制の法制化は、どのように実施されるとしても影響が大きく、JPモルガン(JPM.N)、バンク・オブ・アメリカ(BAC.N)、あるいはウェルズ・ファーゴ(WFC.N)などは投資銀行業務の分離を余儀なくされる可能性がある。

 連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)FNM.Nや連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)FRE.Nへの言及がなかった。モーゲージに触れずに2008年の金融混乱の根源について語れるとは思わない。

●自己勘定取引規制で金融業界の構造変化

<フォーゲル・二ール・パートナーズの投資ストラテジスト、ラルフ・フォーゲル氏>

 ゴールドマン・サックス(GS)やJPモルガン(JPM.N)といった大手金融機関に多大な影響を及ぼすだろう。

 これら大手金融機関が自己勘定取引を停止すれば、市場の流動性が低下する。さらに米金融業界の構造全体、トレーディング環境全体が変化するだろう。

●上院補選の結果とは関係なし

<ブルッキングス研究所の名誉シニアフェロー、スティーブン・ヘス氏>

 オバマ政権がポピュリスト的な方向に向かっているのは疑いない。規制の検討はすでに進められていたので、今回の提案はマサチューセッツ州上院補選とは直接関係していないだろう。

 金融規制と関係のある雇用や関連問題は、明らかにオバマ政権の最重要課題として再浮上するだろう。これまでは医療保険改革問題に気を取られていたが、国民は怒っている。

●法制化の手段について答えが求められる

<ジェフリーズ(ニューヨーク)の米国債ストラテジスト、ジョン・スピネロ氏>

 収入を生み出すために金融機関を規制しようとしているようだ。全体的な状況は株価の下落を招いており、米国債に対する質への逃避買いにつながっている。金融機関が、以前のように商業銀行網を投資銀行業務から切り離せるかどうかは不明だ。

 現在の状況は混乱しており、この金融規制案がどのように法制化されるかに関して多くの疑問があり、いま答えが求められている。

●先行き不透明だが日本株もいったん下値模索

<大和証券キャピタルマーケッツ金融証券研究所 投資戦略部部長 高橋 和宏氏>

 どういった法案になるのか、また議会を通過するのかは不透明であり、米国市場などの反応はやや過剰だとは思うが、投資ポジションの縮小やリスクマネーの縮小への懸念から日本株も下値を模索する動きになろう。日経平均株価.N225で1万0600円付近を試すとみられる。

 ただ、提案に盛り込まれている自己勘定取引の禁止が投資マネーの縮小につながる可能性もあるとはいえ、日本株に投資しているのは年金など長期資金も多いとみられている。年金勢が一時的に様子見姿勢をとることはあっても、中国株から日本株へのシフトといった投資行動への影響は限定的ではないか。

●リスクマネー収縮、株安・円高も

<第一生命経済研究所 主席エコノミスト 嶌峰 義清氏>

 中間選挙を控えて国民にアピールする政策として掲げていた医療保険改革が、マサチューセッツ州の連邦上院議員補欠選挙での共和党候補勝利で困難となった。オバマ大統領にとって、米金融規制案は国民へのアピール第2弾の位置づけだろう。

 法案化の現実味や時期は不透明だが、金融市場はリスクマネーが収縮するシナリオを前提にリアクションすることになり、足元では株価下落となっている。日本株は年末以降、海外投資家による買いに下支えられてきたが、リスクマネー収縮で海外勢の日本株買いが鈍化する可能性は十分に考えられる。一方、リスク許容度の低下を背景に高金利通貨から低金利通貨にマネーが流入するとすれば、円高が進むことになり日本株にとってはマイナス材料。

 米国景気の回復は、足踏みの様相が鮮明になってきている。特に住宅関連の指標に改善の兆しが見られず、逆に悪化する公算が大きい。ファンダメンタルズが弱いなか、国債発行の増加が続く。銀行はその買い手として目されている側面もあるだろう。金融政策案は人気取り的な色合いが濃いが、財政難を乗り切る手段としての役割もあり、米政府にとっては一石二鳥ではないか。

 米金融機関の10─12月期の決算を見ると、商業銀行が苦戦する一方、投資銀行は好調となるなど二極分化しているようだ。この不均衡も、金融規制案の背景にあるのではないか。もっとも、リーマン・ショック以後、銀行業に業態を変更した投資銀行については、公的資金を返済し、この先、米連邦準備理事会(FRB)から直接融資を受ける必要がないと判断した機関は、証券業に戻るのではないかとみている。

●実体経済や流動性にネガティブ

<BNPパリバ証券 シニア債券ストラテジスト 山脇貴史氏>

 直接金融主体の米国市場で直接金融の収縮をめざす法案と言えそうだ。一方で、貸し渋りに対する指導も強化されており、オバマ政権の経済・金融政策が迷走している感が否めない。自己勘定トレーディングの規制を強化しすぎれば、米国債市場ですら流動性が低下する可能性が高まる。国債入札などの不安定化による金利上昇が、実態経済に与える悪影響も懸念される。

 一方、ヘッジファンドなどが米国の新規成長産業の資金調達機能の一部を担っていたことを考えると、成長分野への資金配分が滞ることが経済成長を阻害する可能性も高まるであろう。

 大手銀行に対する資産サイズに応じた課税も検討されているが、これもレポ市場や、短期国債市場にも大きな影響を与える可能性が高い。短期市場の流動性低下も懸念される。

●米大統領のスタンス修正され、為替相場が振れる余地も

<三菱UFJ証券 クレジット市場部 為替課長 塩入稔氏>

 オバマ米大統領が打ち出した金融機関の新規制案は、金融界にとって衝撃的な内容だ。特に商業銀行の自己勘定取引に対する規制は、金融のあり方を根底から覆すもので、これが原案のまま採用されるとは思えない。

 為替市場の関心事は、オバマ大統領が現在の強行姿勢を今後どのように修正してくるかという点だ。発言が二転三転する可能性もあり、それによって為替市場が一喜一憂し、相場が振らされる状況も想定しうる。

 米企業の決算がきょうと月曜日にも控えていることもあり、為替市場は、決算の結果とオバマ大統領の金融規制に関する発言の両にらみとなるだろう。

 株価についてはテクニカル的にも上値余地が限られ下値リスクが大きい水準にあり、米金融規制をめぐって株価が一段安となり、原油や金相場が下落する局面では、円が全面高になることも予想される。

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