February 16, 2010 / 6:55 AM / 10 years ago

焦点:財政赤字を求められる中国、過剰貯蓄めぐる議論活発に

 [北京 15日 ロイター] ユーロ圏がギリシャの財政問題で揺れ、格付け会社が米財政赤字の影響を分析するなか、中国は全く逆の問題に直面している。

 2月15日、中国は財政政策があまりに保守的で、長期的な生産性の向上が妨げられており、世界経済の不均衡拡大の一因になっていると批判されている。写真は上海で2006年、同国の国旗。代表撮影(2010年 ロイター)

 財政政策があまりに保守的で、長期的な生産性の向上が妨げられており、世界経済の不均衡拡大の一因になっていると批判されているのだ。

 中国の財政政策をめぐっては以前から、国際通貨基金(IMF)や世銀が、社会保障支出の拡大を通じて国民の予防的な貯蓄を減らし、消費を促す必要があると主張してきた。

 しかし、経済協力開発機構(OECD)が今月公表した報告書は、以下のようなかなり直接的な表現で中国に歳出拡大を迫った。「現在の財政刺激策からの出口を見据える上で重要なのは、財政黒字への転換ではない」「中国の財政は極めて良好で、今の巨額の政府支出を恒久的に維持することが十分可能だ」。

 OECDは、中国経済が減速期に入った2007年の一般財政収支が、国内総生産(GDP)の5%を超える黒字だったと指摘。

 中国はこれまで福祉年金支出や医療支出を急ピッチで増やしてきたかもしれないが、まだ十分とは言えず、「特に教育予算を拡大し、生産性の向上と不平等の解消を図る必要がある」と主張した。

 中国政府は、4兆元(5850億ドル)規模の景気対策を実施したが、昨年の財政赤字はGDP比でわずか2.2%。目標としていた3%を割り込んだ。

 OECDは、景気対策の終了で中国の内需が鈍れば、同国の経常黒字がさらに増え、欧米との不均衡が一段と拡大するとの危機感を強めている。

 <議論が白熱>

 中国の貯蓄率はこの10年で急上昇したが、政府の政策がどこまでその原因になったかについては、エコノミストの間で意見が分かれている。

 従来、多くのエコノミストは、国内企業が安い融資や労働力を活用して輸出を増やした結果、企業業績が伸び、貯蓄率が上昇したと分析していた。

 ただ、このほど1992─2007年の中国の資金循環統計が改定されたこときかっけに、中国の貯蓄をめぐる議論が活発化している。

 カリフォルニア大学中国研究所のカーラ・ウィーマー教授は、2008年の中国の貯蓄率が51.4%に達したことについて、人口動態と所得パターンの変化に伴う家計貯蓄の増加が大きな原因だと指摘。

 資金循環統計によると、政府貯蓄率も2004年の4.5%から2007年には10.6%に上昇しており、同教授は、歳入の増加が貯蓄や債務の返済に充てられ、社会保障支出に回らなかった、と指摘している。

 同教授は中国経済研究季刊に掲載した論文で「中国国民の長期的な利益のためには、政府が公共支出を大幅に増やす必要がある」と主張。「必要とされる歳出拡大規模は巨額で、かなりの景気刺激効果をもたらす可能性がある」と述べた。

 スタンダード・チャータード銀行の大中華圏調査担当スティーブン・グリーン氏も同じ結論に達した。

 中国の歳入総額は1995年のGDP比25%から2007年に同35%に拡大。

 同氏は、1990年代初めの国家財政は不安定で、歳入の拡大は必要だったとした上で、「政府が経済成長の恩恵を享受し、それを支出に回さなかった点に問題がある。これが中国経済の大きな、隠れた不均衡要因だ。中国経済の不均衡と過少消費の分析では、この点を考慮する必要がある」と述べた。

 <慎重な見方も> 

 ただ、中国の統計の解釈には注意が必要だとの指摘もある。

 世銀の北京駐在エコノミスト、ルイス・クイジス氏によると、急増したとされる政府貯蓄は、他の財政データや家計調査・産業調査と整合性がとれない。

 UBSのエコノミスト、ジョナサン・アンダーソン氏も、資金循環統計の内訳と、中国で定評のある産業調査の不整合性が特に目立つと指摘している。

 両氏とも、企業業績の拡大が貯蓄率上昇の最大の要因との立場だ。

 クイジス氏は「あらゆる可能性を除外したくないが、どうも腑に落ちない。中国経済は、資本集約型・産業主導型の成長を遂げてきた。2005年から成長パターンの変化がすでに始まっていたとは思えない」と述べた。

 見解の相違はあるものの、中国専門家は、長期的な成長の維持には、政府投資の軸足を実物資産ではなく人的資産に移す必要があるとの認識で一致している。

 OCEDは教育予算の拡充を求めたが、IMFの研究報告は、予防的な貯蓄を減らすため、医療制度の整備を優先する必要があると指摘している。IMFのエコノミスト、スティーブ・バーネット、レイ・ブルックス両氏がまとめた同報告によると、政府が医療支出を1元増やせば、都市部の消費が2元増えるという。

 スタンダード・チャータードのグリーン氏は、医療予算と教育予算の双方を増やす必要があると主張。減税や各種手数料の引き下げも効果的だとの見方を示した。

 同氏は「今こうした問題に対処することは現実的に難しいが、いずれは対処しなければならない」と指摘。「そうしないと、いずれ景気が回復し、政府の歳入が回復した場合に、以前の不均衡が再び勢いを増すだけでなく、官僚組織が肥大化し、経済を圧迫するリスクも高まることになる」と述べた。

 (Alan Wheatley記者;翻訳 深滝壱哉 編集 村山圭一郎)

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