[東京 30日 ロイター] 日銀30日の金融政策決定会合で、成長基盤強化の観点から、民間金融機関による取り組みを資金供給面から支援する方法について検討することを決めたが、市場では新型オペや長期国債の買い入れ額の増額に追い込まれることで「量的緩和」の世界に逆戻りすることを避けたい日銀の意図がこの裏に隠されているのではないか、との思惑が広がっている。
日銀内にもこれ以上の資金供給量の増額は、金融調節の柔軟性を奪い、市場機能も維持できないと慎重な声がある。
日銀は今年に入り、期間がやや長めの資金は供給するが、足元の資金のやり取りは金融機関同士に任せる姿勢を鮮明にしている。この結果、金融調節に占める固定金利方式の共通担保資金供給オペ(新型オペ)の割合が増加する一方で、そのほかのオペの割合は低下。証券会社が資金調達手段として活用していた期間が短めの共通担保資金供給オペが減少したことで、レポ(現金担保付債券貸借取引)レートに上昇圧力がかかる場面もみられるようになった。銀行に資金がだぶつく一方で、証券会社が不足気味となる「資金偏在」を容認することで、市場機能をかろうじて維持している格好だ。
このように、日銀は潤沢な資金供給をしながら何とか市場機能の火を消さないようにしているが、こうした状況に重くのしかかるのが昨年3月に月1.4兆円から月1.8兆円に増額した長期国債買い入れオペの存在だ。日銀の長国保有額は昨年3月20日時点で44.1兆円だったが、4月20日現在で50.9兆円まで増加。この先、さらに残高が膨らんでいけば、市場機能を維持するために、その分だけ期間が短いオペを打てなくなる可能性が高い。長期国債の買い入れや新型オペなど長めの資金の供給が、結果として金融調節の自由度を奪いつつある。
白川方明総裁は30日の会見で、現時点での追加緩和の必要性を否定。新型オペについても「企業マインドの下振れを回避する意味で一定の効果がある」と評価する一方で「短期市場が縮小し、金融機関の利ザヤが極端に圧縮すると、金融機関の(貸出)インセンティブが低下し、企業の資金調達にマイナスの面もある」と、効果と副作用を丹念に検証する意向を強調した。市場機能の維持を強く意識した発言と言えそうだ。
クレディ・スイス証券のチーフエコノミスト、白川浩道氏は今回の決定について、1)当座預金残高を増加させるという意味での量的緩和拡大は行わない、2)長期国債買い切りオペ増額というオプションはラスト・リゾートであり、安易には決定しない──という「日銀の基本方針に沿ったもの」との見方を示した。
新たな支援策で、新型オペや長国の買い入れ増額圧力をかわせるのか。日銀は市場機能の維持と潤沢な資金供給を両立させるために、さらなる増額には慎重姿勢だが、市場には「日銀の政策はすでに日銀だけでは決められなくなってしまっている」(外資系証券)との冷めた声も出ている。
(ロイターニュース 志田義寧記者;編集 田巻 一彦)