May 19, 2010 / 6:25 AM / 9 years ago

ユーロ圏から資本引き揚げの動き、流動性求めマネーは米国へ

 基太村 真司記者  森 佳子記者

 5月19日、一部のグローバル投資家がユーロ圏から資金の引き揚げに動き始めたことが明らかに。写真は7日、ニューヨーク証券取引所のトレーダー(2010年 ロイター/Shannon Stapleton)

 [東京 19日 ロイター] 一部のグローバル投資家がユーロ圏から資金の引き揚げに動き始めた。これまでユーロ安は投機マネーの売り仕掛けが主流だったが、欧州当局の対策発表後も市場の危機モードが収束せず、ついに大手投資家もポートフォリオの見直しに動かざるを得なくなってきたという。

 「準基軸通貨」としてユーロを支えてきた各国中央銀行のユーロシフトも影を潜める中、潤沢な流動性という「安全性」を求めてマネーを米国へ逃避させる構図が鮮明になってきた。

 <外貨準備のユーロ需要も停滞> 

 複数の市場筋によると、ドイツ当局が発表した空売り規制がきっかけとなってユーロが対ドルで4年ぶり安値を更新した18日海外の取引では、リアルマネーと呼ばれる年金や投資信託など、巨額資金を長期スタンスで投資する投資家がユーロの売りに動き始めた。

 これまで主にユーロをけん引してきたのは、トレーダーやファンド勢など短期取引で値幅を狙う投機筋。「(売り仕掛けやすい)じり安地合いが続いており、売りと買い戻しの回転がうまく利いている」(都銀の顧客取引担当者)ためだった。

 しかし、欧州当局がようやく発表した対策の柱である欧州中央銀行(ECB)の国債買い入れ策は「タコが自分の足を食べているようなもの。いつか腹を壊す」(別の都銀のトレーダー)と指摘されるなど、市場の危機感は薄れることなく、ユーロは下落基調が継続。「市場が欧州政府の意思と能力を疑っている」(日銀幹部)状況に歯止めはかからず、ついに大手投資家の間にもユーロ圏への投資戦略を見直す動きが出始めた。

 現段階では、そうした動きはまだ一部に限られているが、巨額資金を運用する大手投資家がユーロ圏から資本を流出させる「キャピタル・フライト」が本格化すれば、そのインパクトは最終的に買い戻しに動く短期筋の売り仕掛けの比にならない。ある在京外銀の幹部は「本当にキャピタルフライトが起こったら、ユーロは1米ドルを割れる下げとなってもおかしくない。ただ、その時はパニックだ」と話す。

 大規模な資本流出はまだ限定的だが、一方でユーロ圏への資本流入が細る状況は明確となっている。これまでユーロの下落局面では、ドルの一極的な基軸通貨体制に異を唱える新興国の中央銀行を中心に、外貨準備をドルからユーロにシフトさせる買いが入るという、準基軸通貨としての需要が下値を支えるのが「ユーロの特徴のひとつ」(邦銀のプロップディーラー)だった。 しかし、今回のユーロ下落局面では、そうした買いが「ほとんど入ってこない」(別の外銀)。

 外貨準備でユーロの選好姿勢が強いとされていたロシア中銀が17日に公表した年次報告では、09年末の外貨準備に占めるユーロの比率は43.8%と前年の47.5%から低下。米ドルを44.5%と同41.5%から上昇させていたことが明らかになった。

 18日付のヒズボラ紙では、イラン中央銀行のバフマニ総裁が、現在のユーロ安・米ドル高を反映するため、外貨準備の構成を見直す可能性を示唆している。

 <マネーは米国債志向> 

 欧州ソブリンリスクの深刻化で不確実性が高まる中、グローバルマネーの「質への逃避」の主な受け皿は米国債のようだ。

 米財務省によれば、証券投資を経由した3月の対米資本純流入は1405億ドルとなり、1977年統計開始以来の最大規模を記録した。外貨準備のユーロ資産構成比率を引き上げる方針を示していた中国からの米国債投資も堅調で、3月単月で187億ドル買い越した。 

 他方、米国債への資本流入は、「質への逃避」に象徴される品質や信用力の観点より、単に流動性の高さが注目されているとの指摘がある。

 「米国の財政の内容は悪く、米国債はあくまで相対的な安全資産としか言えないだろう。ただ、現状では、ソブリンリスクの連鎖が起こるかもしれないという懸念が広がるなか、不確実性の裏返しとして、流動性に優れた米国債が志向されている」と第一生命経済研究所・経済調査部・主席エコノミストの熊野英生氏は分析する。さらに「ユーロ金利の先行き見通しも低下しており、投資家にとってはユーロ資産を長期保有してもインカムを得にくい」と同氏は付け加えた。 

 海外投資家による3月の米国債の買い越し額は1085億ドルと2月の481億から急拡大し、4カ月ぶりに1000億ドルとなった。社債は10カ月ぶりに買い越しに転じた。4、5月と欧州ソブリン問題の深刻化で不確実性がさらに高まったことで、米国債を目指すマネーの動きは続いたとみられる。

 東海東京証券・チーフエコノミスト斎藤満氏は「米国債はクレジットが高く、高品質だから買われているわけではなく、通貨のアベイラビリティー、リクイディティーという基軸通貨特権によって支えられている」と述べ、「基軸通貨国は対外赤字に見合うだけの信頼の維持が必要だが、信頼が後退すれば特権を手放すことになるだろう」とした。 

 ギリシャは財政赤字に加え経常赤字問題も抱えているが、同様に双子の赤字を抱える英国と米国の構造的な財務のぜい弱さに対する懸念も広がっている。

 こうしたなか、ノーベル経済学賞を受賞したクルーグマン米プリンストン大教授は、「われわれ(米国)はギリシャとは違う」と題したオピニオン・コラムを13日付のニューヨークタイムズに寄稿した。「ギリシャと米国は同じように大きな財政赤字を抱えているが、ギリシャ国債の利回りは米国債利回りの2倍以上高い。これはギリシャがデフォルトするリスクが高いのに対し、米国にはそうしたリスクがないとみられているからだ」と述べ、米国景気が回復基調にあり、財政収支の見通しもギリシャに比べて格段に良い、と強調した。

 (ロイター 編集:橋本浩)

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