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改正貸金業法の波紋:消費者金融業界、「三重苦」に直面

 [東京 17日 ロイター] 多重債務者対策として段階的に導入されてきた改正貸金業法が、18日に完全施行される。融資を制限する「総量規制」と上限金利の引き下げが新たな規制の柱で、いずれも消費者金融業界にとって収益圧迫要因だ。

 6月17日、改正貸金業法の完全施行により、消費者金融業界は「三重苦」に直面するとの指摘も。都内で昨年7月撮影(2010年 ロイター)

 さらに利用者が過去に払い過ぎた利息の返還請求も高止まりし、業界は「三重苦」に直面している。厳しい経営環境の下で、競合他社の経営が行き詰まる展開になれば、債務者による新たな過払い請求を誘発し、他社にも火の粉をまき散らしかねないというリスク要因も指摘され始めている。

 <総量規制で700万人が融資受けられない可能性>

 新たな規制の1つである「総量規制」は、利用者(債務者)に対し所得の証明を求め、融資額を利用者の年収の3分の1以下に制限する。証明がない専業主婦(主夫)の場合、所得のある配偶者の同意などを求められる。事務手続きの負担が大きいなどとして、大手業者の多くは専業主婦らへの融資を取りやめる方向だ。

 金融庁によれば、消費者金融で無担保ローンの残高のある利用者は3月末で1420万人。日本貸金業協会の調査では、消費者金融利用者の半数が総量規制に抵触すると見ている。単純に当てはめて計算すれば700万人が新たな融資を受けられなくなる可能性がある。

 金融庁は、改正業法の完全施行に合わせて内閣府令を改正し、激変緩和措置を講じる。総量規制に抵触する利用者が段階的に返済できるよう借り換えを推進することなどを柱とするが、あくまでも「利用者目線」(大塚耕平内閣府副大臣)の対策で、業界へのインパクトを和らげる効果は期待薄だ。

 2つ目のマイナス要因は、利息収入の減少問題だ。18日の完全施行では、上限金利について出資法の上限金利から利息制限法の上限金利への引き下げが実施される。もともと消費者金融各社は、出資法の上限金利29・2%と利息制限法の上限金利15─20%の間、いわゆる「灰色金利(グレーゾーン金利)」で貸し出していたが、06年の最高裁判決で、利息制限法の上限を超えた金利を無効とする民法上の解釈を、貸金業法にも厳格に適用するとした。

 3つ目の打撃が「過払い利息返還請求」だ。最高裁判決後、利用者が過去に払いすぎた利息の返還を業者に請求する動きが活発化。以後、返還請求額は高水準で推移しており、今回の完全施行でさらに増加する可能性もあると業界ではみられている。 

 <市場には楽観論と悲観論が交錯、晴れない先行き不透明感>

 この「三重苦」が消費者金融各社の経営にどのような影響を与えるのか──。市場関係者の間では、楽観論と悲観論が交錯している。ある証券アナリストは、利用者が総量規制に抵触して新たな融資が受けられず返済に行き詰まると、資金を調達するために過払い利息の返還請求に動く事例が増えると指摘。

 一方、別の証券アナリストは、規制強化をにらんで各社が数年前から金利の引き下げや融資の絞り込みを過去数年で進めてきたことから「実質的に、総量規制と灰色金利の撤廃はすでに始まっている」と見ており、改正業法が完全施行されても「すぐさま深刻な影響が現れることにはならない」と見る。

 2010年3月期の決算会見で、プロミス8574.Tは11年3月期業績予想の開示を見送った。改正貸金業法の影響など不確定要素が大きく、合理的な業績予想の算定が困難と判断したためだ。予想を開示したアコム8572.Tの木下盛好社長も「(利用者の)行動予測が極めて困難」とし、予想はあくまで参考値であることを強調。アイフル8515.Tの福田吉孝社長も、完全施行後の動向次第では予想がぶれる「可能性はある」と語った。

 <カギは資金調達力、優位の銀行系は顧客取り込みねらう>

 業界を取り巻く環境は厳しいが、各社の幹部は「消費者ローンのニーズは間違いなくある」と口をそろえる。「規制強化の荒波を乗り越えれば、残存者利得が得られる」と見ており、縮みゆく市場のパイをめぐって生き残り競争も厳しくなっている。競争のカギを握るのは、資金調達力だ。

 貸金業では、業者が銀行などから調達した資金を調達金利より高い金利で貸し出すビジネスモデルを採る。しかし、改正貸金業法が成立した06年あたりから、与信の厳格化で各社は貸出残高の減少を余儀なくされている。資金を供給してきた銀行や生命保険会社も融資の絞り込みに動いており、09年3月末の大手4社(単体)の長期借入金額は06年3月末に比べ半減した。

 大手4社は、独立系の武富士8564.Tとアイフル、銀行系のアコム、プロミスに二分される。資金面で有利なのは、銀行の後ろ盾のある「銀行系」との見方が有力だ。独立系の武富士は資金調達に苦戦し、事実上、新規融資を停止し、手元流動性の確保に走る。武富士の清川昭社長は決算会見で改正業法の完全施行に触れ「わが社にも大きなターニングポイントとなる。資金調達環境の好転がなかなか望めない中で、保有資産を売却してでも何とか生き残りをかけて業務運営したい」と語った。

 一方、三井住友フィナンシャルグループ8316.T傘下にあるプロミスの久保健社長は、銀行からの融資に頼るだけではなく「債権流動化や社債発行で調達の多様化を図る」としている。三菱UFJフィナンシャル・グループ8306.T傘下のアコムは、11年3月期に効率的な広告展開など営業力の強化を図り、新客数を前年比12%増の18万人にする青写真を描く。他社が融資を絞る中で、取りこぼされたニーズをすくい上げる戦略とみられる。

 <次の火種は「競合他社の破たん」>

 消費者金融各社の業績を圧迫してきた過払い利息返還請求は、06年の最高裁判決など、大きなイベントがあると請求額が跳ね上がる経緯にある。改正業法は18日の完全施行で大きな節目を迎えるが、ある消費者金融の幹部は「これが最後のビッグイベントではない」と、18日以降の動きに神経をとがらせる。

 中でも警戒されているのが、同業他社の破たんだ。ライバルが破たんすれば、利用者には管財人などから過払い利息の債権者である旨の通知が出されるケースがある。通知を受ける利用者が複数の業者から融資を受けていれば「破たんした業者だけでなく他の業者に対しても、利用者が返還請求に動くきっかけになる可能性がある」(同幹部)との見立てだ。大手や中堅の業者で1社でも破たんすれば「業績への影響は避けられない」(別の消費者金融幹部)との指摘も出ている。

 (ロイターニュース 平田 紀之、布施 太郎;編集 田巻 一彦)

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