June 21, 2010 / 12:34 AM / 9 years ago

インタビュー:失業率3%へ消費税上げも=小野・阪大教授

 [東京 21日 ロイター] 菅直人首相の経済ブレーンで、内閣府参与を務める小野善康・大阪大学教授はロイターのインタビューに応じ、菅氏が提唱する「第三の道」とは雇用創出を起点に需要拡大やデフレ克服、財政再建を進める政策と説明し、そのために資金が必要であれば増税も構わないと語った。

 6月21日、菅首相の経済ブレーンである小野善康・大阪大学教授が、失業率を3%に下げるため消費税を上げるべきと指摘。写真は民主党のマニフェストについて会見する菅首相。都内で17日撮影(2010年 ロイター/Michael Caronna)

 雇用創出に向けて「消費税は来年からすぐにでも上げたほうがいい」とし、現在5%程度の失業率を「3%に下げるまで人を雇えるお金が必要だ」との見解を示した。

 また、増税分は借金返済に充てるのではなく、雇用創出とその所得支払いにまわすべきだと主張するとともに、税収の使途は、福祉目的税のように限定しないほうがいいとの見解を示した。

 デフレ克服については、デフレギャップを残したまま「お金の発行量を増やしてもデフレはなくならない」と指摘するとともに、日銀にデフレの責任を押し付けるべきではないと述べた。その上で、日銀は金融緩和をすでにかなりの程度やっており「これまで通りの金融緩和の姿勢を保ってほしい」と語った。

 インタビューは18日に行った。概要は以下の通り。

 ――菅首相の目指す「第三の道」という経済財政政策はこれまでの政策とどう違うか。

 「過去の自民党政権下で取られた第一の道は、消費者にお金をばらまけばいいというオールド・ケインジアンの発想であり、無駄な公共事業や減税、補助金を指す。第二の道は構造改革そのもので、1990年代以降に生産能力が余っているにもかかわらず生産能力を上げようとした小泉・竹中改革。双方に共通するのは、労働資源を活用することが頭になく、お金を使うか倹約するしかないこと。これでは需要と雇用は生まれない」

 「第三の道は、人に働いてもらうことが目的。そのために資金が必要なら、増税しても構わない。そうすれば当初の増税分は家計に所得として返るので、その時点で家計負担はないし、サービスや設備も提供される。雇用が増加してデフレも雇用不安も緩和されるため、消費が刺激され、経済も成長して税収が増え、財政も健全化していく」

 ――大きな政府になるとの懸念がある。

 「日本の公共部門の対GDP比の財政支出、人口1人当たりの公務員数は、OECD(経済協力開発機構)加盟国中でも最低水準。その意味で1990年代から最小政府だった。そもそも私が言っているのは公務員を増やせということでなく、あくまで余った労働資源を活用するということであり、民間へのサポートを政府がするということ。たとえば介護士の待遇をよくして雇用を増やせば、若い福祉職員の所得が上がり、デフレも緩和され消費も増えて税収も上がる。逆に民間に任せきりで政府が活動を減らせば、かえって失業者が増える。それは小泉構造改革で明らかになった」

 「財政支出を行う際、お金を渡すだけでは家計に埋もれて需要に結びつかない。また、必需品を供給しても、それまで買っていた分を減らすだけ。必需品ではなく、政府が何もしなければ十分に供給されないが、全くの無駄ではない分野に配分する。例えば介護や教育、壊れそうな橋の修繕や自転車道の整備など社会資本整備がよい。私は規制改革や公共事業反対論者ではない。人を働かせて雇用と新しい需要を創ることこそが重要だ」

 ――具体的に政府がすべき支援策は。

 「雇用などの助成金がわかりやすいかもしれない。政府が必要施設を作って無償で提供し、あとは民間で自由に競争してもらってもいい。介護ロボットの支給でもいい。どれも公務員を増やさず、民間の需要や雇用を増やすことができる」

 「子ども手当の現金支給は愚策。必需品を配るのも意味がない。あったらいいが、何もしなければ買われない物やサービスなら、その分の便益が増え、新たな雇用も生まれる」

 ――菅首相は消費税の増税を含む税制改革について2010年度内に取りまとめたいと表明。当面の消費税率は10%を1つの参考にするとしている。

 「消費税は来年からすぐにでも上げたほうがいい。数字については示せないが、失業率を3%に引き下げるまで人を雇えるお金が必要で、そうであればかなりの増税が必要となる。私は消費税が特にいいと言っているのではない。本来なら所得税を引き上げ、特に最高税率を上げて累進性を高めればいい。高所得者はお金を使わないからだ。また相続税の増税でもいい」

 「要は増税分を借金返済ではなく、雇用創出とその所得支払いにまわすということだ。それによって増税分の雇用が生まれる。低所得者の収入が増えれば、消費も増えて税収も上がる。増税による税収の使途は、福祉目的税のように限定しないほうがいい。使途は国民が意見を出して政治家が判断すべきことだ。目的税化してお金を配るだけでは雇用は生まれない」

 ――菅首相は2011年度までのデフレ克服を重要課題に挙げているが、これに対して日銀の政策をどう評価するか。

 「デフレギャップを残したままでは、お金の発行量を増やしてもデフレはなくならない。デフレの克服は総需要と雇用の拡大によってデフレギャップを減らすことでしか達成できない。バブル以前の需要不足でなかった時代には、ハイパワードマネー拡大が物価上昇につながったが、バブル以降はまったく効いていない。日銀も財務省も、それぞれ貨幣と国債という金融資産によって、最大限の信用拡大を行っている。国債への不安の高まりも、これが限界に近づきつつあることを反映している」

 「いま日銀ができるのは、貨幣の信用を維持できる範囲で、できるだけ金融緩和をすることだが、すでにかなりやっている。したがって、これ以上、日銀に責任を押し付けるべきではなく、これまで通りの金融緩和の姿勢を保ってほしいと言うべきだ」

 *小野氏の略歴は以下の通り。

 小野善康(おの・よしやす) 東工大卒、東大大学院博士課程修了。経済学博士。菅首相とのつき合いは10年前に雑誌で対談して以来。菅氏が前任の財務相就任後は、本格的に政策立案について助言を行っている。59歳。

 (ロイターニュース 梶本哲史記者、竹本能文記者、伊藤純夫記者)

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