July 5, 2010 / 8:41 AM / 10 years ago

インタビュー:TIBORの適切な形成を期待=日銀金融市場局長

 [東京 5日 ロイター] 日銀の外山晴之・金融市場局長は5日、ロイターのインタビューに応じ、東京銀行間取引金利(TIBOR)について「実勢レートに比べると、相応のかい離がある」との認識を示した。

 7月5日、日銀の外山金融市場局長は東京銀行間取引金利について「実勢レートに比べて相応のかい離がある」との認識を示した。写真は2008年4月、日銀前で(2010年 ロイター/Yuriko Nakao)

 その上で「かい離していると、他市場のレート形成にもゆがみをもたらしかねない。市場機能の観点からすれば、TIBORが適切に形成されることを期待したい」と語った。

 国際金融市場の現状については「落ち着きつつある兆候はなくはないが、財政問題の根っこは大きく進展しておらず、全体としては神経質な展開をたどっている」と評価。その上で「最終的に欧州諸国の経済・財政改革が成果を上げる、あるいは欧州の金融セクターの信認が回復するのは時間のかかるプロセスだ」として「その過程で国際金融市場や世界経済にどのような影響が及ぶかについては注意深く点検をしていく」と慎重な姿勢を示した。

 世界経済は緊縮財政に向かっているが、外山局長は、大幅な財政緊縮を一斉にやると「短期的には負の影響が出やすい」と懸念を表明。「そのペース、内容については経済への影響を十分配慮した運営がなされていくものと期待している」と語った。もっとも、欧州については「ユーロ安がかなり進んできたことと、長期金利が大きく低下してきたこともあり、こうした動きが、コンフィデンスの改善と合わせて、少し長い目で見ると景気を支えていくことになる」と前向きな見方も示した。

 主なやり取りは以下の通り。

 ──米国や日本などの長期金利の低下の背景をどうみるか。

 「長期金利は日々のさまざまな要因で変動するが、それをならせば将来の実質経済成長率や物価上昇率に関する市場の見方を反映し、それにリスクプレミアムが加わって形成される。これを現在の長期金利に当てはめてみると、わが国の長期金利は欧米と比べても低い水準で推移しているが、これは基本的にはわが国の経済・物価に対する市場の慎重な見方を反映したものだろう」

 「もっとも、米国もドイツもかなり長期金利は低下してきている。この背景には欧州周辺国のソブリン問題の警戒感がくすぶっている中で、投資家のリスク回避姿勢が強まっていることも何がしか影響している。あえて付け加えれば、現在の財政・金融政策運営のもとで、これはわが国だけでなく、欧米にも共通していることだが、国債保有に伴うリスクプレミアムの高まりが回避されていることも長期金利の低位安定に寄与している」

 ──欧州財政問題がくすぶる中で、国際金融市場の現状認識と見通しについて。

 「欧州周辺国のリブリンリスクの高まりに端を発し、欧州系金融機関に対するカウンターパーティリスクが意識されるなど、やや神経質な動きが続いている。具体的にみると、ドルやユーロ資金市場において、銀行間のターム物金利、LIBORは高止まりないし幾分上昇。米国債やドイツ国債の利回りは質への逃避の動きがあって低下している一方で、欧州周辺国の国債利回りとのスプレッドはかなり高いレベルで神経質な動きを続けている。さらに欧米の社債市場では、ごく足元は幾分銘柄を選びつつということであるが、社債スプレッドが拡大しているほか、社債発行も先送りされている事例も散見される。株式市場では大きく株価が変動していおり、為替市場も振幅を伴いつつも、総じてユーロが弱含む展開をたどってきている」

 「足元は、欧州周辺国の国債の入札は無難ないし順調に進展してきていることや、欧州中央銀行(ECB)が昨年打った1年物のオペ期日を3カ月物と6日物とで乗り換えてきたわけだが、これが特に波乱なく経過したこともあって、少し落ち着きつつあるといった兆候もなくはないが、財政問題の根っこが大きく進展したわけではないので、全体としては神経質な展開をたどっている」

 「わが国については株と為替について変動がやや大きく出てきていたということで、欧州情勢の影響がこうしたところに強く出たとみている。さらに社債市場についても欧米に比べればインパクトは大きくなかったが、5月中には低格付け銘柄を中心に投資家が一歩引いてしまった。様子見姿勢に転じて、一部業種を中心にスプレッドが幾分拡大したこともあった。ただ、短期金融市場については即日資金供給オペもあって、資金の潤沢な供給姿勢に変化がないということを市場が読み取ったということで落ち着いた状況が続いている。短期金利もやや長めの金利も含めて低い水準で安定的に推移している」

 「今回の欧州金融市場の不安定化の背景としては、欧州一部国における財政の持続可能性あるいは再建可能性に対するマーケットの信認の低下や、あるいはこれらの国々の競争力の低下という問題がある。さらに、欧州系金融機関の信認といったことについても、マーケットから疑念を呈されているといったことがある。これらについて、それぞれ対応が打たれてきているが、最終的に欧州諸国の経済・財政改革が成果を上げる、あるいは欧州の金融セクターの信認が回復するのは時間のかかるプロセスでもある。その過程で、国際金融市場や世界経済にどのような影響を及んでいくかといったことについては注意深く点検していきたい」

 ──世界的な財政緊縮の動きが国際金融市場に与える影響をどうみるか。

 「財政緊縮が短期的には景気に対して負の影響を及ぼしているのは間違ない。ただ、一方で財政をめぐる不透明感が個人や企業の経済行動において、大きな障害になってきていたということもあるので、それが払しょくされることを通じてコンフィデンスの回復といったことにつながることもある。したがって、こういった2つの要素がどのような力で作用していくかということになる。同時に大幅な財政緊縮を一斉にやるとコンフィデンスの改善によって打ち消される面が期待されるとはいえ、短期的には負の影響が出やすいので、G20でも議論されたことは承知しているが、そのペース、内容については経済への影響を十分配慮した運営がなされていくものと期待している。ただ、欧州についていえば、ユーロ安がかなり進んできたことと、長期金利が大きく低下してきたこともあり、こうした動きが、先ほどのコンフィデンスの改善と合わせて、少し長い目で見ると景気を支えていくことになる」

 ──現在の円高傾向の動きをどうみるか。

 「為替水準についてはコメントを差し控えたいが、一般論として言えば急激な為替変動が個人・企業の経済行動に対してインパクトを与えるというのはその通り」

 ──金融機関のドル調達の状況についてどうみるか。

 「欧州のソブリン問題ということで、欧州系金融機関に対するカウンターパーティリスクが意識されるような形で、LIBOR─OISスプレッドがひところより上昇して、高止まっている状況にある。ただ、リーマン破たん直後に比べると、こうしたスプレッドの上昇は小幅にとどまっている。取引の中身をみても、ターム物のタームが短くなっているということはあっても、アベイラビリティそのものにおいて大きく障害があるとは聞いていない。これは邦銀についても同じ状況だと聞いている。この背景として、米ドル資金供給オペがバックストップの役割を果たしたことも、市場参加者に安心感を与えたことにつながっていると判断している」

 「日銀は5月18日と6月15日にそれぞれ84日物のオペを行ったが、応札は少額にとどまった。応札をした金融機関についても、特にドルの調達に問題があったとは認識していない。このようなファシリティが提供されたということをもって、これも1つの選択として考えていくという姿勢、あるいはそのような姿勢に基づいて手続きの確認をしたということで、応札したとみている」

 ──TIBORは下がってきているが、まだ下がり方が足りないとの指摘もある。この認識について。

 「日銀は市場からサンプル的に聴取しているユーロ円の実勢レートに比べると、相応のかい離があるレートになっているのは否定できない。その背景については、金融機関の貸出の基準金利として対応されているといったようなことが、現在の低金利局面において、提示レートを下げにくくしている大きな背景になっているのではないか」

 「邦銀は預金でほとんどの資金を調達しているということで、市場性の資金に依存する程度は極めて低い。マーケットのレートと預金金利が十分開いているというような局面においては、信用リスクプレミアムや経費、収益の上乗せ部分を市場金利と預金金利との差によって十分カバーできるが、金利が低下してくると預金金利をそれ以上下げるのは難しくなり、その差が十分取れないということになる。したがって、信用リスクプレミアムや経費、収益を確保しようとするとどうしてもTIBOR自体を実勢のマーケットレートよりも高く提示するという金融機関の判断が働くのかもしれない」

 「ただ、市場機能の観点からすると、TIBORがそのようなことで決定されているとなると、いろいろ困ったことが起こってくるのは事実。例えば、TIBORのスワップ取引でレシーブポジションを作り将来の金利低下に備えたい、これは企業でも金融機関でも行うことだと思うが、変動金利をTIBORで払うときに、そのTIBOR自体が実勢よりもかなり高いものを払わなければいけないということで、そういったスワップも組みにくくなってしまうということにもなりかねない」

 「また、これはTIBORというより、LIBORだと思うが、ひところ為替市場において円LIBORとドルLIBORの逆転が起こって、円高の要素とされたといったこともあった。LIBORもTIBORほどではないにせよ、マーケットの実勢レートよりもかなり高いところにあったわけで、もし実勢レート同士で比較すれば円の金利の方が低いのに、そのような見方をされた。これが為替に影響を与えたとするならば、いくつかの市場で参照され、市場のいろいろなレートに影響を与え得るというものであるとすれば、TIBORあるいはLIBORが実勢の取引レートからかい離していると、他の市場のレート形成にもゆがみをもたらしかねない。したがって、市場機能の観点からすればTIBORが適切に形成されることを期待したい」  

 ──長期国債の買い入れオペの状況について。銀行券の発行残高にはいつ頃到達しそうか。

 「6月末の長期国債の保有残高は1年前に比べて約9兆円増加して、約54兆円になっている。他方、銀行券の発行残高は1年前に比べてほぼ横ばいの約77兆円となっており、6月末時点では長期国債保有残高は銀行券発行残高を約23兆円下回っているが、その差額は1年前に比べ約8兆円縮小している。長期国債の保有残高は先行きも増加を続けていくと考えられるが、残存期間など区分別の買い入れ方式を採用していても、国債の残存期間は国債買い入れオペ対象先の売却希望の状況に応じて変動し得ることから、相当幅をもってみる必要がある。他方、銀行券の発行残高については、足元前年度比プラス0.6%程度の増加となっているが、名目GDP対比では過去数十年のトレンドを大幅に上回る水準となっており、今後の増減は見通し難い面がある」

 「仮に銀行券発行残高が現在と同程度の水準で推移していくとすれば、長期国債の保有残高は数年間のうちに銀行券発行残高に近接していく可能性が高い。日銀としては買い入れの目的を踏まえ財政ファイナナンスや国債価格の下支えを目的にしているといった誤解によって市場に悪影響を与えることがないよう、細心の注意を払いつつ、淡々と国債買い入れを行っていく」

 ──市場では、銀行券ルールの見直し議論が依然としてくすぶっている。

 「銀行券ルールは金融調節の上でも、あるいは財政ファンナンスをしていないという姿勢を明らかにする上でも、非常に大事なルール。これについて見直しを行うということではない。むしろ、これに近接していくということがはっきりしてきた段階を仮に迎えたということであれば、これに抵触しないよう、そのときに買い入れのやり方に工夫を加えることによって、銀行券ルールに抵触しないようなやり方を模索していくということではないか。いずれにせよ、これまでのところ、そうした検討を行わなければならない状況ではないと考えている」

 (ロイターニュース 志田義寧記者、木原麗花記者)

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