August 12, 2010 / 12:49 PM / 10 years ago

日銀の危機管理能力に疑問の声、「量」拡大政策が選択肢に

 [東京 12日 ロイター] 円相場が1ドル85円をはさんで振れの大きな展開となっている状況で、日銀の対応について「危機管理能力」を問う声が浮上している。

 8月12日、円相場が1ドル85円をはさんで振れの大きな展開となる中、日銀の対応について「危機管理能力」を問う声が浮上。写真は日銀前で4月に撮影(2010年 ロイター/Issei Kato)

 10日の金融政策決定会合で危機感を強く打ち出さなかった点や、金融環境の引き締まりへの言及が足りなかった点に厳しい評価が集まっており、一段とその立ち居振る舞いに注目が集まりそうだ。これ以上の円高進行に歯止めをかけるには、政府による介入は国際環境からみて困難とみられる中で、日銀ができることは「資金供給量の拡大」以外に有効策がないとみられている。

  <危機感伝わらない日銀の情報発信>

 「日銀の危機管理能力が試されている局面だか、あまりうまくいっていない」―─第一生命経済研究所・主席エコノミストの熊野英生氏は、今回の円高局面での日銀の対応について、やや厳しい評価を示す。

 米連邦公開市場委員会(FOMC)が追加緩和を決定した直前の10日時点で日銀は金融政策決定会合後、声明文で「円高」という文字さえ盛り込まず、何の対応策も打ち出さなかった。12日になって中曽宏日銀理事と財務省の玉木林太郎財務官が会談、夕方になって白川方明・日銀総裁が円高懸念の談話を発表した。こうした日銀の対応について「そもそも過去の経験から事前に日銀会合の日程をFOMCの後に設定すべきだった。また今回の総裁会見では、こうした局面にもかかわらず慎重な見方が伝わってこなかった」(日興コーディアル証券・チーフマーケットエコノミスト・岩下真理氏)など、対応に疑問を示すエコノミストが目立つ。

 日銀としては、市場の短期的な動きに振り回される必要はなく、中長期的に事態を見極めるべき、という従来の対応をとったとの立場だ。また 白川総裁が指摘するように、生産拠点の分散化や為替予約などの対応で、円高に対する企業の抵抗力は強まっているのというのも事実だ。

 ただし、日銀が実体経済の判断に重きを置きすぎ、足元の金融環境への言及が足りないとみる声もある。野村総研・金融市場研究室の主席研究員、井上哲也氏は「株の軟調、円高、そして実質金利高という条件がそろい、金融の緩和度合いの指標でみれば引き締まってきていることに、もう少し配慮すべきだった」と指摘する。日銀内でも金融環境の引き締まりは認識されていたもようだが、市場に引きずられる形での対応に抵抗があったと井上氏はみている。

  <介入困難な中で、量的拡大が唯一の方策との見方>

 企業の円高耐久力が高まったとはいえ、「1ドル90円を割れだした6月から3カ月経過したら企業も収益への影響が大きくなってくる。その意味で9月までには何らかの対応が必要になる」(岩下氏)との声も浮上している。 

 円高進行への歯止め策として、大方のエコノミストは為替介入は難しいとみている。「海外との金利差が小さい上、米欧は自国通貨安による輸出増加を狙っている状況の中で日本が介入すれば近隣窮乏化策と受け取られかねない」(井上氏)など、国際環境からみて難しいためだ。野田佳彦財務相の発言が「介入には消極的に聞こえる」(熊野氏)というのも、そうした背景があるとみられている。

 残る選択肢は金融政策での対応となるが、日銀在職中に円高局面での対応に追われた井上氏は「普通の状態であれば対応のしようもあるが、今は政策が尽きかけている。時間軸もすでに長期にわたる超緩和策をうたっている状態では効果がない」とみている。

 考えられる方策としては、井上氏も熊野氏も資金供給量の拡大をあげる。現在20兆円の資金量枠となっている新型オペを30兆円の供給量に拡大する手段などだ。金融環境の引き締まりに実際に効果があるかどうかは別としても、メッセージとしての効果が期待できそうだ。

 ただ岩下氏は、日銀だけが対応しても、根本にある米国景気への悲観論が修正されない限り、円高は長期化する可能性があり、政策の有効期間はごく短いもので終わってしまうと見ている。同氏は円高傾向が続く中で、政策対応がないままに「神経衰弱戦に入る可能性が高い」と見ている。

 口先介入の言葉を頻発するほどに足元を見透かさて円高が進行しかねない状況だけに、政府・日銀は難しいかじ取りを迫られている。

  (ロイター日本語ニュース 中川泉記者;編集 石田仁志)

 

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