August 25, 2010 / 9:12 AM / 10 years ago

円売り介入に立ちはだかる保護貿易の壁、対アジア通貨の円高も痛手

 [東京 25日 ロイター] ドルが15年ぶりの安値水準となる83円台まで下落するなか、財務省は日本単独でのドル買い/円売り介入を視野に入れ始めたもようだ。しかし、日本の円高抑制努力の前には、世界的な保護貿易主義の壁が立ちはだかる。

 8月25日、ドルが15年ぶりの安値水準となる83円台まで下落するなか、財務省は日本単独でのドル買い/円売り介入を視野に入れ始めたもようだ。写真は1万円札の写真を使った広告の前を通り過ぎる男性。先月撮影(2010年 ロイター/Yuriko Nakao)

 円高が対ドルや対ユーロだけでなく、対アジア通貨でも進行するなか、円売り介入の効果は限られそうだ。

 ドルは24日の海外市場で一時83.58円と15年2カ月ぶりの安値をつけ、ユーロ/円は105.44円と9年ぶりの安値まで下落した。円の全面高を受け、政府・日銀は追加金融緩和を検討する一方、複数の政府筋は25日、日本の単独介入を排除しないと述べた。

 しかし、世界の潮流は円高抑制を困難にしている。

  <保護貿易と介入の効果>

 欧米諸国では、成長センターとしてのアジア・中国の需要を当て込み、保護貿易主義への傾斜が顕著になりはじめた。保護貿易主義において、自国通貨安は製品の輸出競争力を高める必須アイテムだ。

 「米国では景気減速が懸念されるものの、政策面では手詰まり感が強まる一方で、貿易赤字が無視できないほど拡大している。その矛先は日独ならびに中国の黒字に向かっている」と東海東京証券のチーフエコノミスト斎藤満氏は言う。

 先のトロントG20でも黒字国(日独中国)が世界経済を不安定にしているとの批判があり、黒字国責任として、輸出ではなく、内需拡大を図るべきとされた。

 「そこへ米国の対外赤字拡大が続き、日本など黒字国の輸出を、何らかの形で抑制する圧力が米国内に高まる懸念が出てきた。そうなると、これまで以上に日本が為替介入や円安誘導をして輸出拡大を図ることが困難になる」と斎藤氏は指摘する。

 「米民主党政権はドル安指向とのイメージがあるが、現在は受動的なドル安容認の構えとみる。米国に限らず欧州主要国も、金融緩和の結果としての自国通貨安を甘受している」と第一生命経済研究所・経済調査部主席エコノミストの熊野英生氏は言う。

 「こうした流れの中、円高が広範囲で起きていることを考えれば、介入でドル/円の行き過ぎを止めても、効果は限定的だろう」と同氏は予想し、「韓国やスイスのような小国は別として、主要国には介入はしないという暗黙のルールがある」とした。

 6月米貿易収支(国際収支ベース、季節調整済み)は、前月比 499億ドルの赤字で5月の420億ドル(改定値)から赤字幅が拡大し、2008年10月以来の高水準となった。前月からの拡大幅79億ドルは、92年の統計開始以来で最大。さらに2010年上半期(1―6月)の貿易赤字は前年同期比44.8%増の2474.55億ドルと急拡大した。

 第2・ 四半期の米GDP速報値は前期比2.4%増だったが、GDPは大きく下方修正されると見込まれている。

 オバマ政権は5年間で米国の輸出を倍増する輸出倍増計画を展開中だが、オバマ米大統領は11日、「メイク・イット・イン・アメリカ」と呼ばれる製造業支援策の一環としての製造業支援法案に署名する際、「米経済は海外から製品を購入する習慣に陥っており、米製品を適切に販売してこなかった。このトレンドを反転させることが非常に重要だ」と指摘した。

 全米製造業者協会(NAM)によると、同法案の成立により米製造業の生産量は46億ドル押し上げられ、約9万人の雇用を支援する見通し。

 ドイツでは、ユーロ安の追い風を受け、第2・四半期の国内総生産(GDP)が前期比2.2%増、前年同期比(季節調整済)4.1%増となった。前期比2.2%増は東西ドイツ統合以来の大幅な伸びで、輸出と設備投資がけん引役となった。ユーロ圏高官からは「1.20ドル前後のユーロはEU経済に一致する」(レインデルス・ベルギー財務相)との見解も聞かれ、市場ではユーロ圏はユーロ安歓迎との見方が広がっている。

  <アジアも通貨安>

 輸出促進を狙う自国通貨安志向は、米国やユーロ圏では受動的だが、アジアでは自国通貨安政策を展開する国々がある。

 輸出主導の景気回復で2010年は300億ドルの貿易黒字を計上すると見込まれる韓国では、韓国中銀がウォン売り介入を繰り返している。第1四半期に続き、第2四半期も100億ドルを超える経常黒字となった台湾では、台湾中銀が台湾ドル高を抑制するため、自国通貨売りを実施している。

 「製品のグローバルな均質化に伴い、台湾や韓国製品との競争にしのぎを削る本邦企業では、アジア近隣諸国の自国通貨売り介入はルール違反との声が多く聞かれる」(邦銀)という。

 また、中国も人民元の柔軟化拡大政策を導入したとは言うものの、元高を警戒し介入を断続的に実施している。

 一方で、円高要因に加え、少子高齢化を背景とした日本市場の縮小が懸念される中、本邦企業の海外進出は2000年以降(2009年を除き)右肩上がりで推移しており、企業の円高耐久力は高まっている。

 「本邦企業の直接投資は、特に成長期待の高いアジア向けが活発化しており、短期的なフローとしては、円相場の下押し要因となる」と、みずほコーポレート銀行国際為替部のマーケットエコノミスト・唐鎌大輔氏は指摘する。

 ストック(残高)ベースでも、アジア向け直接投資残高(16兆1822億円)は北米向け残高(22兆1339億円)に次ぐ大きさとなっている。ただ、直投残高の累積は所得収支となって日本に還流するため、中長期的には円高材料にもなりうる。

 経済産業省の調査によれば、2008年度に行われた日本への配当金支払いのうち、58.8%がアジアで、圧倒的なシェアを占める。

 日本はニクソン・ショック以来、40年近い円高の歴史があり、多くの企業は、既に輸出と輸入のバランスを取ることや、為替リスクのヘッジを図るなど努力を重ねてきた。今回の円高局面でも、「企業は政府による円高抑制を待つのではなく、ある程度円高が続くとの前提に立って、これに積極対応する必要がある」と東海東京証券の斎藤氏は言う。

 (ロイターニュース 森 佳子記者)

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