September 3, 2010 / 5:38 AM / 8 years ago

ロイターコラム:健在なミセス・ワタナベと為替介入のタイミング

 田巻一彦 ロイターコラムニスト 

 9月3日、外為市場の一部では、意外な伏兵「ミセス・ワタナベ」がドルをサポートしているとの声もささやかれている。写真は都内の外為ボード。7月撮影(2010年 ロイター/Yuriko Nakao)

 [東京 3日 ロイター] 円高が加速すれば、株安に連動するために多くの市場関係者が注目しているドル/円は、週末3日の段階では、84円前半でこう着している。

 3日夜に発表される8月米雇用統計の結果次第では、ドル売り/円買いが集中し、円高が加速するのではないかとの思惑もあり、イベント前の静けさを保っているようだが、意外な伏兵がドルをサポートしているとの声も、市場の一部ではささやかれている。その名は「ミセス・ワタナベ」──。

 30日の日銀による追加緩和発表後、31日のNY市場でいったん83円台まで円高が進んだものの、その後は介入警戒感からの買い戻しで84円台を回復し、ドルは84円台を維持している。複数の市場関係者によると、ドルをサポートしている一角に「ミセス・ワタナベ」に代表される個人投資家のドル買いがあり、ドル売りを仕掛ける短期筋の注文をかなりの程度、吸収しているという。

 ある外為市場関係者によると、83.50円にドル買いのリーブ・オーダーを置いている個人投資家もいるようで、外為証拠金取引(FX取引)の普及により、マーケットにおける個人投資家の存在感は着実に拡大している。国際決済銀行(BIS)が1日に発表した世界の外為取引に関する調査(2007年─10年)によると、日本は前回調査から大幅に取引が増加し、シンガポールやスイスを抜いて3位に浮上。この取引増加の大きな要因としても、個人投資家の存在が大きいと市場関係者の多くがみている。

 多くの個人投資家のドル/円での投資スタンスは「ドル買いポジションの拡大」のようだ。ドルが下がったところでは「絶好の買い場」とみて、ドル買い注文を出してくるため、ドルの下値が支えられる。まるで当局が小玉で覆面介入しているかのように出てくるため、ドルはジリジリとしか下がらない。結果としてマーケットでのドルショートポジションが溜まらない。

 一方で通貨当局は、最適のタイミングでの介入を計っている。意表を突くという要素とは別に、相場が逆方向に動くメカニズムとして、大きくポジションが傾いた時に介入すれば、大きく相場を動かすことができると判断している。

 政府はある時期まで相場を注視すると言い続けてきたが、菅直人首相が8月27日に東京大田区の中小企業を視察した後に記者団に問われ「必要なときは断固たる措置を取る」と、今回の円高局面で「断固たる」という表現を初めて使った。市場は、ドル買いという実弾を使って介入を実施する用意を政府がようやく整えたと、その時から思い始めた。このため日銀が臨時の金融政策決定会合を開催した8月30日をはじめ、介入がいつあってもおかしくないと市場は緊張感を強めたが、介入はこれまでのところ実施されていない。

 その大きな理由は、ドルショート・ポジションが溜まっていないためだろう。その背景には「ミセス・ワタナベ」のドル買いが影響しているのは間違いない。では、いつまでもこの奇妙な均衡が続くのだろうか。3日夜の米雇用統計が市場予想を下回って大幅に悪化した場合、米株安を伴ってドル売りが加速する可能性がある。個人投資家の注文を含めたドル買いを飲み込むほどドル売りが出てきたら、ドル下落テンポが加速して、ドルショート・ポジションが溜まるだろう。その時に政府が出てくるという展開が予想される。

 個人投資家の中には、ドルはいずれ今の水準からドル高方向に戻ると予測している向きが多いらしい。もし、この観測が正しければ、政府が自ら出ていく前に、個人投資家の買いがドルをサポートする局面が続きそうだ。だが、最近の個人投資家の中には、損失覚悟のポジションクローズの注文(ストップロス)を事前に置いている向きもあるという。もし、その規模が大きければ、ある水準を突破すると、ドル下落のテンポが加速する要因になる。

 当局は、きっと「ミセス・ワタナベ」のポジションを市場からのヒアリングで確認し、介入の準備をしているに違いない。 

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