October 5, 2010 / 12:29 PM / in 9 years

デフレ脱却困難で異例の「包括緩和」、財政政策的要素強まる

 [東京 5日 ロイター] 日銀は5日、長期国債や不動産投資信託(REIT)の買い入れなど多様な金融緩和手段を軒並み盛り込んだ「包括緩和」策を打ち出した。

 10月5日、日銀は多様な金融緩和手段を軒並み盛り込んだ「包括緩和」策を打ち出した。写真は都内の日銀前で9月に撮影(2010年 ロイター/Toru Hanai)

 事実上のインフレ目標や量的緩和など従来の日銀が採用に慎重だった政策要素も含まれており、市場の予想を大きく超える内容になった。背景には、通常の金融政策で現在のデフレ状況から脱却することは困難との日銀の厳しい認識があったようだ。しかし中央銀行が過度なリスク資産を抱え込めば通貨価値に悪影響を与える可能性は否定できず、日銀としても苦渋の決断を迫られた格好だ。

  <買い入れ資産の損失、最終的に国民に影響>

 今回打ち出された1%程度の物価安定が展望できるまで実質ゼロ金利を継続する、との時間軸政策は、日銀の白川方明総裁がたびたび否定的な見解を示していた「インフレ目標政策」の長所を取り入れたものだ。5兆円の基金創設による長期国債やREIT、指数連動型上場投資信託(EFT)などを含む多様な金融資産の買い入れは、白川総裁が景気刺激には効果が少ないと繰り返してきた量的緩和政策に近い側面がある。REITやETFの購入については、2003年に当時の政府・与党が緊急経済対策の一環として日銀に買い入れを要望したが、日銀として採用しなかった経緯もある。

 白川総裁は、5日の金融政策決定会合後の記者会見で「経済の状況が異例だから政策も異例」と指摘。通貨発行権を国民から受託している中央銀行が買い入れる資産に「損失が発生するということは最終的には国民に影響が及ぶ」とし「純粋に金融政策の世界から財政政策的要素を秘めた世界に入っていく」危険性に触れ、今回の措置がデフレ脱却のための臨時措置であることを強調した。

 基金には残存期間が1─2年程度の長期国債も買い入れ対象としたが、通常の長期国債買い入れと別枠での長期国債買い入れは、長期国債の買い入れの増額は財政ファイナンスとみなされ、長期金利が跳ね上がる懸念がある、と繰り返してきた白川総裁の従来の姿勢とも食い違う。実際5日の会合でも須田美矢子審議委員が、基金による国債買い入れに反対を表明。須田委員の反対理由について白川総裁は、政府の財政再建が不透明な中で財政ファイナンスと受け取られるため、と説明した。

  <政策めぐり審議委員ら調整難航、須田委員が国債買い入れに反対>

 異例の政策を採用した経緯について、ある日銀関係者は、日本経済の需給ギャップが解消されるメドが立たないなど経済・物価をめぐる状況が厳しく、通常の金融政策ではデフレ脱却が困難とみているためだ、と説明する。

 8月の消費者物価指数(生鮮食品や石油製品などを除くコアコア)は16カ月連続でマイナスだった。9月29日に日銀が発表した企業短期経済観測調査(短観)では、大企業製造業の業況判断指数(DI)の先行きが7期ぶりに悪化。30日に公表された8月の鉱工業生産指数速報(2005年=100、季節調整済み)は3カ月連続でマイナスとなるなど景気回復の足踏み状態が鮮明になりつつある。

 15年ぶりの円高水準が輸出や企業経営者のマインドを通じて実体経済に悪影響を与えつつあり、11月に予定されている米連邦公開市場委員会(FOMC)で本格的な緩和策が打ち出されれば、更に円高が加速するとの懸念もくすぶっている。

 複数の日銀関係者の話を総合すると、デフレ脱却・円高阻止などについて、想定される各種政策を単発で打ち出しても効果は少ないため、複数の政策を組み合わせる必要があるとのコンセンサスが相当以前から醸成されつつあった。しかし、長期国債買い入れなど具体的な政策の詳細をめぐっては、なかなか委員の間で意見の一致を見ず、そのまま今週の決定会合になだれ込んだという。

 日銀には、8月30日の臨時政策会合で打ち出した固定金利オペの拡充による追加緩和策が、後手との批判を浴びたことを重視する向きもある。このため政府や市場からの緩和期待に対して、先手を打つ必要があるとの強い意向が働いた可能性がある。白川総裁は5日の会見で、あくまで日銀として経済物価情勢を判断したうえで決定したと強調した。しかし、9月27日に大阪市内で開かれた講演では、冒頭から「最近の円高の進行とそれが日本経済に与える影響が、当面の最も大きな懸念材料となっている」とし、景気の下振れに日銀が最大限の貢献を行う姿勢を強調するなど、前のめりな姿勢が目立っていた。

 その中で打ち出した異例の緩和策。デフレ脱却が容易に実現できない場合には、基金の資産規模拡大や、購入資産の拡充に歯止めがかからない可能性もあり、今後の運用が注目される。

 (ロイターニュース 竹本能文記者;編集 宮崎 大)

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