[北京 19日 ロイター] 中国人民銀行(中央銀行)は19日、期間1年の金融機関の預金金利と貸出金利をそれぞれ25ベーシスポイント(bp)引き上げると発表した。中国の利上げは約3年ぶり。
中国当局が資産価格と物価の上昇に懸念していることを示す動きとみられており、20日から実施される。今回の引き上げにより、1年物の基準金利は、預金が2.5%、貸し出しが5.56%となる。
CITIC証券(北京)の首席エコノミスト、Zhu Jiangfang氏は「利上げはまったく予想外だった」とし「インフレ率がこのところ上昇していたため、実質金利はマイナスに陥っていた。このため、人民銀行はこうした性急な方法で利上げを実施する必要がある」と述べた。
ノムラ(香港)のエコノミスト、ロブ・スバラマン氏は「経済が約10%の成長を遂げるなかで、現在の政策金利水準は基本的に低過ぎる。ひずみのさらなる拡大を防ぐために、中国当局は金利をより適正な水準に引き上げ始める必要がある」と指摘。「中国経済の他の主要国経済からのデカップリングが進んでいるようにみえる。このため、中国の政策のデカップリングも起きて当然と考える」と述べた。
人民銀行のエコノミストを含め多くのエコノミストからこのところ、預金者の利子収入を実質的にプラス圏に保つよう、人民銀行は預金金利を引き上げる必要があるとの声が相次いでいた。
中国の8月の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年同月比3.5%。エコノミストは9月の上昇率は同3.6%に加速したと予想している。
エコノミストの間からは預金金利の引き上げを求める声が出ていたものの、複数の中国政府高官から、物価上昇は制御下にあり、利上げにより海外からの投機的な資金の流入が加速する恐れがあるとの発言が相次いでいたことから、この日の利上げは驚きをもって受け止められた。
クレディ・アグリコルCIB(香港)のシニアエコノミスト、ダリウス・コワルスジク氏は「21日に発表される国内総生産(GDP)統計とCPIが強過ぎると予想されるため、このタイミングで利上げを実施したとみられる」と述べた。
中国は21日に第3・四半期GDP、およびCPIを含む一連の9月の経済指標を発表する。ロイターが集計したエコノミスト調査で、第3・四半期GDP伸び率は前年同期比9.5%になると予想された。第2・四半期は同10.3%。
またロイターが前月実施したエコノミスト調査では、2011年第2・四半期まで中国の利上げはないと予想されていた。