November 10, 2010 / 6:53 AM / 8 years ago

中国格付け会社が米国債格下げ、実物経済と信用のギャップを問題視

 [東京 10日 ロイター] 中国の格付け会社、大公国際資信評価有限公司は9日、米国の自国通貨建て及び外貨建て長期信用格付けを「AA」から「Aプラス」に2段階引き下げたと発表し、金融市場で話題を呼んだ。

 11月10日、中国格付け会社が米国債を格下げ。写真は6月、ニューヨーク(2010年 ロイター/Lily Bowers)

 格下げ判断の根拠は、米国の債務返済能力の低下、及び「米政府による債務返済の意志が大きく低下した」こと。

 大公国際資信評価は、米国の経済発展・運営モデルは深刻な欠陥を抱えており、このモデルが長期的な景気低迷と、債務支払い能力の低下を招いている、と判断し、格付けの見通しはネガティブに据え置いた。  

 中国初の格付け会社である同社は、米連邦準備制度理事会(FRB)による量的金融緩和の拡大は、ドル安トレンドを招き、金融危機を長期化、深刻化させていると指摘したうえで、「このような政策は債権者の利益を侵害している」とし、通貨安によって米国が直面する債務のジレンマを根本的に解決することはできないとした。

 さらに、債権者の望みに反して米国がドル安政策を継続することで、新たな危機が発生する可能性もある、との見通しを示した。

 中国人民銀行(中央銀行)の夏斌・金融政策委員は10日、FRBによる量的緩和政策は「無責任」だと述べ、長期的にはドル安につながる可能性があるとの見解を示した。

<QEIIと米国債リスク>

 米国が量的緩和政策(QE)を導入する以前の昨年5月、スタンフォード大学のジョン・テイラー教授は、「米政府こそ、システミックリスクを引き起こす最も深刻な震源であり、現在の金融危機より大きなダメージを経済に与えるだろう」と警告し、米政府は民間部門への無責任な介入を控え、政府債務の膨張を抑制すべき、との見解を示した。

 しかし、FRBは今年の8月にMBS等の元本償還金を長期国債に再投資することを決めたほか、11月3日には長期国債を6000億ドル購入する量的緩和第2弾(QEII)を決断した。  

 実物経済を回復軌道に乗せるため採用された米量的緩和政策は、「けん引役となる新規ビジネスが不在のなか、消費と投資の減退が資金需要縮小させていること」や「景気後退期に特有の金融機関の貸し渋り」が相まって、経済を活性化させるという目的をほとんど果たせていない」、と同格付け会社は評価した。

 結果として「金融システムに累積した流動性は、主に、投機的な金融取引に使用されたり、米国外に流出しており、実物経済の回復にも、バーチャル・エコノミーの過剰な拡大を抑制することにも、役立っていない」とした。

 9日の米国債市場では、10年債利回りが一時2.686%と、前日終盤の2.55%から上昇。30年債利回りは4.250%と6月以来の高水準に達した。 QE?が最終的に物価上昇をもたらすとの見方も、米国債価格の下落につながった。

 市場では、「10年以上の長期ゾーンの利回りが今後一段と下がる余地は限られるだろう。特に、米国のように対外依存度が高い国では、ある程度の利回りを海外投資家に提供し続ける必要がある」と住友信託銀行マーケット・ストラテジストの瀬良礼子氏は言う。また、米金利が急上昇するリスクについては、「米国がドルの基軸通貨性を維持し、覇権国の地位を手放したくなければ、米金利が急騰するような事態は防ぐだろう」と同氏は述べた。

 他方、米金利が今後、低下するとの見方も聞かれた。

 「米景気のデフレ圧力が続く中、長期金利は低下すると予想する。米国債の保有比率は、これまでは海外勢の占める割合が高かったが、今後、国内金融機関の保有が高まるとみている。貸出先がなかなか見つからない中、余剰資金は国債投資に回りやすい」とJPモルガン・チェース銀行の債券為替調査部長・佐々木融氏は言う。

<ドル覇権の揺らぎ>

 ドル安政策について、同格付け会社は、「ドル安政策は、債権者の利益を米国に移転するが、ドルへの信認を棄損し、先々ドル売りトレンドを誘発する」とし、ドル安が進行すれば、ドルを基軸とする通貨システムが維持できなくなり、必然的にドルの覇権は揺らぐとした。さらに、対外借り入れが困難になり、結果的に米国は資本不足を補うために、ドルを発行し、これによってさらにドル安が進むという負の循環に陥ると警告した。    

 FRBによる一連の信用拡大について、大公国際資信評価は、「米国が、信用拡大を経済発展のエンジンとする政策を採り続ける限り、米国の資本ニーズは実物経済における付加価値拡大を上回るペースで拡大する。こうした国内経済の金融化は景気の長期低迷をもたらす」と指摘した。

 米国では実物経済(モノ)に比べてはるかに速いスピードで金融資産・負債(カネ)が拡大し、これが金融危機の背景となったとの認識は、現在多くのエコノミストの間で共有されている。

 1980年末時点の米金融機関の負債残高は5781億ドルだったが、2008年末には17兆1088億ドルと約30倍に膨れ上がった。リーマン・ショック後は残高が減少したが、2010年3月末時点で14兆9712億ドル(1980年比で26倍)と依然、巨額な残高を保っている。 他方、米国内総生産(GDP)は1980―2009年の約30年間で5倍に拡大しただけであり、金融部門の拡大ペースは実体経済の拡大を大幅にしのいでいる。

 (ロイター 森佳子記者)

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