November 19, 2010 / 8:47 AM / 8 years ago

特集マネー奔流:株高に潜む危うさ、新興国から「逆回転」も

 [東京 19日 ロイター] ヘッジファンドなど投資家の世界的なポジション巻き戻しのなか、日経平均は1万円を回復したが、先行きには慎重な見方が少なくない。

 11月19日、日経平均の先行きには慎重な見方が大勢。写真は昨年3月、株価ボードに映る人々(2010年 ロイター/Yuriko Nakao)

 米景気回復期待が強まり、米金利が上昇したことでマネーが逆流、ドル安・円高基調が一服し日本株は出遅れ修正に動いたが、米小売大手が堅調とみている米年末商戦が成功裏に終わるかは不透明だ。米景気が減速すれば米緩和観測が強まりドル安・円高方向に働く。

 また米量的緩和による過剰流動性で新興国がインフレを制御できなくなったような場合、リスクマネーの巻き戻しは調整の範囲では終わらない可能性もある。

 <危うい米消費、年末商戦期待し在庫積み増し>

 圧迫要因だった円高警戒感が後退したことは日本株にとって大きいが、ドル円はいまだ83円台。80円付近に引き下げられた国内輸出企業の下期想定為替レートよりも円安水準とはいえ「円安メリットをうんぬんするようなレベルではない」(シティグループ証券エコノミストの村嶋帰一氏)。

 日本の株高の本質的な要因は、円安効果というよりも米景気回復期待の強まりによる、海外勢の円買い・日本株売り・債券買いのポジションの巻き戻しだ。マネーの巻き戻しによる株高であっても、このまま景気が順調に回復していけば、理想的な業績相場に移行することができるが、一見堅調にみえる米消費は危うさを秘めていると指摘する声も多い。

 米消費が予想以上に堅調なのは、米小売店がディスカウントを例年よりも早く始めていることが一要因だとみられている。需要の先食いを行っているわけで、実際の年末商戦が不振に終わるおそれが強まっているといえよう。またISM指数など製造業関連の統計数字が堅調なのは、「年末商戦が堅調とみて米企業が在庫を積み増しているからだ」(クレディ・スイス証券・株式調査部ストラテジストの丸山俊氏)との指摘もある。思うように商品が売れなかった場合、在庫調整が待っていることになる。

 シティグループ証券の村嶋氏によると、米国の家計資産は8月末に比べ約2兆ドル増加したが、株価上昇などが要因であり、米景気の楽観的な見通しが崩れ、株価が下落すれば、株価下落と消費減退の「負の連鎖」がおきる可能性もある。10月米雇用統計で非農業部門雇用者数が予想を上回る増加になったことも米景気回復期待を強めたきっかけとなったが、同月の失業率は9.6%と依然高水準だ。

 全米小売業協会は2010年のホリデーシーズン小売売上高(オンライン売上高を除く)を2.3%増と予想した。ドバイショックなどで世界の株価が急落した前年の0.4%増からは伸びが加速するが、「通常は3%程度の伸びであり、水準自体は低い」(トヨタアセットマネジメント・チーフストラテジストの濱崎優氏)という。「夏の消費が意外と底堅かったので、小売企業は年末商戦に向けて在庫を積み増しているようだが、思うように売れない場合、来年在庫調整に入る可能性がある」(濱崎氏)と警戒されている。

 経済協力開発機構(OECD)は18日、最新の経済見通し(エコノミック・アウトルック)を発表し、米国の成長率を下方修正した。 前回5月時点は2010年と11年ともに3.2%だったが、今回2010年は2.7%、11年は2.2%に引き下げた。米景気が減速すれば米金融緩和観測が再び強まり、為替市場ではドル安・円高圧力になるため、日本株には逆風となる。

 バーナンキ米連邦準備理事会(FRB)は国債買い入れ策によって今後2年間で70万人の雇用を生むとしているが、量的緩和の効果が実際の経済に波及するルートはいまだ不透明だ。

 <新興国にインフレ、マネー巻き戻し加速を警戒>

 金融緩和で景気が回復してくれれば期待通りだが、経済はそう簡単ではない。金融緩和による流動性がインフレを引き起こす可能性があるからだ。米量的緩和策によって資金が「街中」に広がるかどうかは、まだ不透明だが、低金利による資金調達が容易になったヘッジファンドは新興国やコモディティなどへの投資を強めている。株価上昇による資産効果による消費刺激が新興国の経済を押し上げると同時にインフレ懸念も引き起こしている。

 アジア諸国は、ホットマネー流入によるインフレを警戒、インドや韓国は利上げし、中国は預金準備率を引き上げた。

 2008年からの世界同時株安の裏には、米国の過剰消費という問題があり、その先にある「ニューノーマル」と呼ばれる世界経済の新秩序はまだみえていない。新興国経済がけん引する姿がひとつの形だが、再び米国消費に頼るようでは、また来た道を引き返すことになる。新興国にその役割をバトンタッチすべきところで、米国のデフレを防ぐための大胆な金融緩和策のために新興国の経済を混乱・停滞させては「新秩序構築」は遠くなるばかりだ。

 市場では「米金融緩和策によって生み出された過剰なマネーがリスク資産価格を押し上げているが、新興国のインフレなど、矛盾や弊害も引き起こしている」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券・投資情報部長の藤戸則弘氏)と警戒する声が出ている。

 マネー巻き戻しの動きから、中国など新興国の株価はすでに調整段階に入っているが、シティグループ証券の村嶋氏は「新興国の株価が急落すれば投資家は世界的なリスクテーク量を大きく削減する可能性がある」と株安の連鎖を警戒している。

 (ロイター日本語ニュース 伊賀 大記記者 編集:石田 仁志)

 

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