January 27, 2011 / 8:46 AM / 9 years ago

S&Pが日本国債格下げ:識者はこうみる

 [東京 27日 ロイター] スタンダード&プアーズ・レーティングズ・サービシズ(S&P)は27日、日本の外貨建て・自国通貨建ての長期ソブリン格付けをAAからAA─に引き下げた。アウトルックは安定的。外貨建て・自国通貨建て短期ソブリン格付けはA─1+に据え置いた。

 1月27日、S&Pは日本の外貨建て・自国通貨建ての長期ソブリン格付けをAAからAA─に引き下げた。写真は昨年9月撮影(2011年 ロイター/Yuriko Nakao)

 S&Pによると、格下げは、日本の政府債務比率がさらに悪化するとの見方を反映している。S&Pでは日本の財政赤字が今後数年にわたって高止まりし、それに伴い財政の柔軟性がさらに低下すると予想している。

 S&Pによる日本国債格下げに関する識者の見方は以下の通り。

●為替は円売りで反応、円キャリーが拡大すれば一段の円安も

<クレディ・スイス証券 外国為替調査部長 深谷 幸司氏>

 以前から日本国債(JGB)がいつ格下げになってもおかしくないとの見方があったので、格下げ自体に驚きはない。ただ、為替市場は欧州のソブリン問題で敏感になっていることもあり、JGBの格下げについては、円売りで反応している。

 構造的には、外国人投資家のJGB保有比率が低いため、格下げをきっかけに、外国人がJGBを売却したとしても、相場に直接的なインパクトをもたらすかは疑問だ。

 現時点では、投機筋が依然、円ロングのポジションを抱えている。今後、こうした投機筋が円ショートに傾いたり、個人を含む資本筋が円キャリー取引を拡大するという流れになれば、一段の円安が進む可能性がある。

●日本財政規律に警鐘を鳴らす役割

<BNPパリバ証券東京支店 島本幸治・投資調査本部長>

 スタンダード&プアーズ・レーティングズ・サービシズ(S&P)が27日、日本の外貨建て・自国通貨建ての長期ソブリン格付けをAAからAA─に引き下げた。格下げは、日本の政府債務比率がさらに悪化するとの見方を反映した。

 一般的には消費税の議論も含めて6月中に判断するという政府方針を示しているので、その行方を見極めてから、格付けの方向を決めるのではないかと思っていたので、今回の格下げのタイミングにはやや意外感がある。

 日本の財政規律に対して警鐘を鳴らす役割になったと受け止めている。もっとも、今回の格下げで長期金利が大きく上がることにはならないとみている。こうした警鐘を受けて、日本の政策が今後どのように変わるか見極めて相場は動くと思う。つまり、「急速な高齢化が日本の財政・経済を圧迫している」ことに対応した「税制と社会保障の一体改革」に先んじてS&Pが警鐘を鳴らす意味で格付けを引き下げた。実際に政策が打ち出されるかという点に円債相場は反応してくるとみている。

●円売り反応は一過性、84円を上抜けする可能性は低い

<住友信託銀行 マーケット・ストラテジスト 瀬良 礼子氏>

 円売りで仕掛けたいと思っていた短期筋にとって、日本国債(JGB)の格下げは、待ち焦がれていたニュースだろう。ただ、過去にもJGBは格下げされているが、円相場は結局、元の水準に戻っており、現在の市場の反応(円売り)は比較的早期に落ち着くと見ている。 

 今年に入ってドル/円相場は84円の手前で折り返している。日本のアウトルックが安定的なことや、84円台にはドル売りを待っている本邦勢が控えている事を考慮すれば、今回の格下げのニュースで、ドル/円相場が簡単に84円を突破できるとは思えない。このまま円売り局面に突入することはないと思っている。

●長期金利上昇には懐疑的

<みずほ証券 チーフストラテジスト 高田創氏>

 米格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)が、日本の長期国債格付けを現在のAAからAA─に引き下げたのは、「財政状況の悪化」を理由にしている。これまでの1年は、世界で“ソブリンワールドカップ”のような状態だったが、市場での評価は、財政赤字というより経常収支の状況に左右されていた。

 ポルトガルやイタリア、ギリシャ、スペインを指すPIGS問題では、財政赤字の問題であると同時に、より悪影響を及ぼしていたのは経常収支の赤字だった。

 日本の財政状況は、潜在的な問題を内包している。しかし、今回の格下げにより、長期金利の指標10年債利回りが上昇基調をたどるかどうかは懐疑的だ。2002年にシングルAまで格下げされた際には、逆に長期金利は低下した。長期金利は年度末にかけ1%ちょうどから1.4%前後で推移するのではないか。

●初期反応は円安も、トレンド形成には至らず

<明治安田生命・運用企画部 チーフエコノミスト 小玉祐一氏>

 スタンダード&プアーズ・レーティングズ・サービシズ(S&P)が日本国債を格下げしたことに伴う初期反応として、外為市場では円安に振れたが、円安トレンドの形成には至らないとみている。

 日本の財政が危機的な水準にあることは、ほとんどの市場参加者の共通認識であり、いずれ格下げがあると予想されていた。実態をみると格下げはある意味当然で、さらに格下げされても不思議ではないのが日本の財政の現状だ。

 日本経済はまだデフレが続いており、これが金利低下圧力になるほか、日本国債の95%前後は国内で保有されていることから、このまま財政リスクをどんどん織り込むことはないだろう。

 今回の格下げがカンフル剤のように目覚まし効果となり、政府が財政再建に本腰を入れるきっかけになれば良いと受け止めている。

●財政リスクだけで長期金利1.5%超は考えづらい

<日興コーディアル証券 チーフ債券ストラテジスト 野村真司氏>

 政府は6月までに消費税を含む税制と社会保障の一体改革についての基本方針を示すことになっているが、期待できないと判断しているのかもしれない。円債市場への影響については、基本的には日本人が9割以上を保有しているので、財政リスクプレミアムだけで長期金利が1.5%を超えていくような状況は考えづらい。実体経済の回復などを伴えば1.5%を超える局面があるかもしれないが、今の状況ではその前に押し目買いが入るだろう。

 いずれにせよ、6月に方向性が出たとしても、2012年度予算編成を考えた時に、非常に厳しい財源状況にあるのは間違いないので、今回の格下げに限らず、常に財政赤字に関するリスクを意識せざるを得ないという状況は当面続く。もっとも、最初に述べたように、これだけでどんどん売られるという展開は想定しにくい。

●CDSワイド化も、政策実行にスピード感必要

<野村証券 チーフ・クレジット・ストラテジスト 魚本敏宏氏>

  深刻化する日本の財政問題は中長期的に大きなメスを入れなくてはならないテーマであるため、予備的な措置による日本国債の格下げは自然な流れだ。ただ、タイミングを読み切れない中での格下げで、クレジット市場にとって若干サプライズだ。

 今後はS&Pが付与している銀行債や事業債にも格付けの下方圧力が強まりやすい。新発債市場でもスプレッド拡大などを通じて資金調達コストの上昇につながる可能性も否定できない。

 CDS市場は年明け後、日本ソブリンとともに、コーポレートのプレミアムも広がっている。その背景には、中国経済の悪化と日本財政問題の暴発という中長期的なマクロビューに基づいた仕掛け的な動きがあるとみている。国債格下げはこうした仕掛け的な取引に拍車をかける可能性があり、CDS市場にとってかく乱要因だ。

 菅政権は政策として掲げる社会保障コストの低減と消費税引き上げ、規制緩和をよりスピード感を持って実行に移さないと、日本国債の消化に対しても懸念が出てくる可能性もある。

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