February 25, 2011 / 6:46 AM / 9 years ago

任天堂とソニー、7年ぶりに携帯ゲームで激突へ

 [東京 25日 ロイター] 任天堂7974.OSが裸眼3D(3次元)対応の「ニンテンドー3DS」を26日に発売し、年末にはソニー(6758.T)のゲーム子会社ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)が「プレイステーション・ポータブル(PSP)」の後継機「NGP」を投入することで、7年ぶりに携帯ゲームの対決が再燃する。

 2月25日、任天堂とソニーが7年ぶりに携帯ゲームで激突へ。写真はソニーPSPの後継機「NGP」。1月撮影(2011年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

 旧世代機のDS・PSPが同時発売された2004年末と違うのは、スマートフォン(高機能電話)や交流サイト(SNS)など新たな携帯ゲーム勢力の台頭だ。新興勢力とは競合する一方で、一部で連携の動きも出てきており、携帯ゲームをめぐる競争の構図は複雑化している。

 <DSとPSPの勢力図に変化起きるか>

 現行のニンテンドーDSは04年12月の発売で、昨年12月末までの6年間で1億4459万台を売り上げた。実質初年度の05年度の販売台数は1146万台、08年度には3118万台のピークに達したが、その後はゲーム機の商品寿命の循環で下落基調をたどり、10年度は2250万台にとどまる見通しだ。

 3DSの価格は2万5000円。3Dを表示するための高性能グラフィックスやCPU、カメラやセンサーを盛り込んだことで原価が上がり、DSの1万5000円だけでなく、据置型ゲーム「Wii」の2万円より高い設定。3DSがDSのように携帯ゲーム市場でトップのポジションを確立するかどうかは、11年度の販売がDSの05年度を超えるかどうかが試金石になりそうだ。

 日興コーディアル証券の前田栄二シニアアナリストは、3DSの11年度の販売台数を1500万台と予測し、DSの05年度を超えるとみる。ただ「その後にどうなるかはソフト次第。DSでは『脳トレ』や『どうぶつの森』などハードをけん引したソフトがあったが、3DSで起爆剤になるソフトが出るかどうかにかかっている」と指摘している。

 対するソニーのNGPは、3DSから10カ月遅れて今年末の発売となる。現行機のPSPはDSと同じく04年12月の発売で、販売台数のピークもDSと同じ08年度。ただ、ピーク時の年間販売台数は1410万台、10年度の販売計画は800万台、累計販売台数は6780万台で、いずれもDSの実績に対して2分の1以下の勢力にとどまる。3DSとの対決では「2:1」で固定化している勢力図に変化が起きるかが焦点だ。

 発売まで時間のあるNGPの価格は未定。携帯通信の3G回線を内蔵し、高精細の有機ELパネルや各種モーションセンサを搭載するなど製造原価は高水準だとみられている。販売価格は、ライバルの3DSの売れ行きをみて戦略的に格安に設定することもできるがソニーは据置型ゲーム機「プレイステーション3」では製造原価が販売価格を上回る「逆ざや」で収益を圧迫した経験があることから価格設定は高度な判断が求められそうだ。

 シティグループ証券の江沢厚太アナリストは、NGPの実質初年度にあたる12年度の販売が1540万台でPSPのピークを超えると予測。「ハイエンドなハードウェアでPSP時代からのゲーム好きのコアユーザをねらう戦略が安定しておりネットワークも充実している」などと評価している。

 <通信機能でビジネスチャンスも>

 3DSは「メガネがなくても立体的に見える」ことが売りだが、同時に打ち出したのが通信機能だ。「いつの間に通信」と名付けた無線LAN機能は、NTT東西やマクドナルドと提携して全国に設置したアクセスポイントに近づけば、特別な設定なしに映像などコンテンツを自動配信する。日本テレビとフジテレビが、数分間の3D番組を毎日トライアル配信することになっている。

 3Dコンテンツの「出口」として10年に相次ぎ発売された3Dテレビの販売は伸び悩んでいるが、3DSは数年間で1億台超の普及ポテンシャルがある。任天堂の岩田聡社長は「マスマーケットに初めてまとまった台数が普及する3D映像機器になる」として、3D映像の受信デバイスとして新たなビジネスチャンスを探っていることを明らかにしている。3Dの映像配信が定着すれば「広告のポテンシャルはひとつの実験的な取り組み」としてソフト販売以外のビジネスも模索しているという。

 3DSを初めて披露した10年6月の米国ゲーム見本市「ES」では、米ワーナー・ブラザーズ、米ウォルト・ディズニー、ドリームワークスの3社が、デモ画面に3D映画の予告映像を提供した。岩田社長は「映画会社も興味を持ってもらっている」としており、3D受信機器の広がりの可能性を指摘する。

 ソニーのNGPの最大の売りもネットワーク機能で、無線LAN(WiFi)だけでなく3G回線を内蔵する。データの受信範囲はWiFiより広いため「リアルタイムでいろいろな楽しみ方ができる」(SCEの平井一夫社長)としてゲーム以外にも映画や音楽などコンテンツ配信が視野に入れている。ソニー全体のネットワーク戦略でも、コンテンツ配信による課金収入は経営方針で、NGPはひとつの有力デバイスとして可能性が広がりそうだ。

 ただ、3G回線の採用は通信コストの負担が課題だ。月額の通信料金をどこまでユーザーに求めるのか決定する必要がある。この点について任天堂の岩田社長は「娯楽のために月額料金を求めることは選択肢になりづらい」と否定的な立場をとっている。ソニーは米国の電子書籍販売で、リーダー端末への通信料を全額会社が負担するモデルを採用しているが、それがNGPで可能かどうかは、通信会社との合意など多くのハードルを超える必要がありそうだ。電子書籍のテキストベースのデータ量なら成立しても、ゲームのようにグラフィックや動画など膨大なデータの通信料をどこまで負担できるかも課題になるとみられる。 

 <スマートフォンとは競争と協調>

 任天堂とソニーの携帯ゲームが08年以降にピークアウトした一方で、勢力を拡大しているのが、「モバゲー」や「グリー」などSNSで提供されるソーシャルゲームだ。12月末でモバゲーを展開するディー・エヌ・エー(2432.T)の会員数は前年比54%増の2448万人、グリー(3632.T)は42%増の2383万人に膨らんだ。ソーシャルゲームは基本は無料で遊べるが、よりゲームを面白くするための武器やファッションを有料販売する「アイテム課金」の仕組みがあり、伝統的に任天堂やソニーのゲーム機にソフトを提供してきたコナミ(9766.T)などゲームソフトメーカーも供給を拡大している。

 任天堂の岩田社長は「無料で遊べるゲームが山ほどある世の中で、『お金を出して遊ぶものは面白い』と言ってもらえる状況を維持しなければならない」とソーシャルゲームの台頭に構えを見せる。任天堂としても「トモダチコレクション」や対戦ゲームなど、人とのつながりを楽しむソーシャルゲームの要素を重視する考えという。SCEの平井社長も、3G通信機能の活用策として「ネットワークを介してコミュニティを付けたり、ソーシャルネットワークと連携したり、コミュニケーションを楽しんでもらうこともできる」とし、NGPでソーシャルゲームの要素を取り入れる可能性を示している。

 携帯ゲームの新興勢力としては、スマートフォンで楽しむゲームも増えている。米アップル(AAPL.O)製のスマートフォン「iPhone(アイフォーン)」、タブレット端末「iPad(アイパッド)」、多機能プレーヤー「iPod touch(アイポッドタッチ)」の累計販売は昨年12月末で1億6000万台以上となり、DSを超えた。ガートナーによると、10年のアンドロイド携帯の全世界の販売台数は6722万台で、11年は9193万台に拡大する見通し。モバゲーやグリーも、ソーシャルゲームのユーザーを増やすため昨年末からスマートフォン対応を始め、1―2月にかけてソフトメーカーのゲームの公開も始めた。

 3DSとNGPにとってスマートフォンの台頭は脅威とみられる一方で、ソニーは「ユーザー増加は無視できない」(平井SCE社長)として、アンドロイドOS向けにプレステソフトを提供する「プレイステーション・スイート(PSS)」のサービスを年内に立ち上げることで、スマートフォンとの連携に踏み切った。初代プレステのソフトから提供する予定で、第一弾の認証端末に、ソニー・エリクソンの「Xperia Play(エクスペリア・プレイ)」を選定。液晶スライドをずらすとPSPのようなボタンが現れる「プレステ電話」として話題になったスマートフォンだ。

 ただ、これがNGPとスマートフォンのパイの奪い合いになるのでは――。SCEの平井社長は「NGPで目指しているのは没入感。それに対してカジュアルに遊べるスマートフォンの市場も広がっていることは認めなければならないので、アンドロイドのカジュアルゲームの世界にプレステが入る。逆に今までゲームに興味のなかった層がカジュアルゲームをしてみたら面白いということでNGPに入ってくれるなら、これまでゲーム業界が獲得できなかったユーザーを獲得できる」とし、むしろユーザー層の拡大につながるとの期待を示している。任天堂、ソニー、新興勢力は互いの距離をにらみつつ新たな競争構図を形成しそうだ。

(ロイターニュース 村井令二 編集 宮崎 大)

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