March 14, 2011 / 12:48 AM / 8 years ago

東日本大震災、金融市場にも大きな影響:識者はこうみる

 [東京 14日 ロイター] 東日本に深刻な打撃をもたらした今回の巨大地震の影響について、金融市場では短期的にリスク回避の動きが広がりそうだ。

 3月14日、東日本に深刻な打撃をもたらした今回の巨大地震の影響について、金融市場では短期的にリスク回避の動きが広がりそうだ。岩手県陸前高田市で13日撮影(2011年 ロイター/Lee Jae-Won)

 マーケット関係者によると、生産工場の停止や物流障害、計画停電などの影響の見極めが難しくヘッジや換金目的の売りが強まりそうだという。リパトリエーションの円高がしばらく続くとの見方も多い。

 <為替>

 ●円高が進む環境、阪神大震災時より整っている

 <みずほコーポレート銀行 マーケット・エコノミスト 唐鎌大輔氏>

 リーマン危機やギリシャ危機のときに円高が進んだのと同様、リスクを感じた国内の投資家は海外の資産を処分して、現金で円を確保しておきたいという意識が働く。実際のリパトリエーション(資金の本国還流)のフローはまだ見えないが、少なくとも今月いっぱいはこうした動きが進むだろう。日経平均は下落するだろうから、含み益が減って外貨建て資産を処分する機関投資家も出てくる。

 (景気を下支えするための財政出動などは円安要因だが)すでに悪化している日本の財政にいまさら焦点が当たるとは思わない。FRB(米連邦準備理事会)がすぐに金融政策を変えることはないと思うので、ドル/円は上値が重くなりそうだ。

 阪神・淡路大震災後も円高が進んだ。当時は日米間の貿易赤字を調節するための為替調整圧力があり、そこへ大震災が発生した。今回も世界的に貿易収支の不均衡是正が議論され、円高が肯定される環境にあり、時代的な背景はそれほど異ならない。しかも当時の米国は利上げ局面だったが、今は量的緩和を打ち切るかどうかという議論をしており、次元が違う。今の方が円高が進む環境は整っている。

 ●日本勢のリパトリの思惑広がるが、一方向の円高は想定しづらい

 <バークレイズ銀行 チーフFXストラテジスト 山本雅文氏>

 震災被害の拡大で、日本の投資家が海外資産を取り崩して資金を本国回帰(リパトリ)させるとの思惑が海外投資家を中心に広がっている。地合いとしてはリスク回避の株安/円高に傾きやすい。海外勢は昨年10月以来3兆円程度の規模で日本株を買い越している。海外勢がこれらの株を売却しリパトリする可能性、80円台をにらむ円高局面で想定されるドル買い/円売り介入への警戒感、また、追加の金融緩和の可能性などを考え合わせると、一方向に円高が進行する事態は考えにくい。市場は80円台から83円台と幅広いレンジで不安定な値動きが予想される。

 ●輸出の大幅減で円高圧力が軽減される可能性も

 <クレディ・スイス証券 債券本部外国為替調査部長 深谷幸司氏>

 日本勢が海外資産を取り崩し、大規模な資金のリパトリを実施する可能性は極めて小さいとみている。そうしてまで資金確保が必要な状況ではない。日銀の資金供給も潤沢に行われるだろう。近い将来に地震保険の支払いが実施される可能性も小さい。そうした払い込みは小規模と予想され、実施されたとしても相当期間を経過した後になるだろう。

 最も大きな影響は、輸出企業の操業停止や稼働率の低下による輸出の減少だ。日本の黒字は急速に縮小し、為替市場では円高圧力が軽減されるとみている。円高の要素があるとすれば、短期筋の円ショートの巻き戻しに限定されるだろう。

 ●リパトリ先取りした円高は行き過ぎ、生産活動停滞で景気悪化のリスク

 <住友信託銀行 マーケット・ストラテジスト 瀬良 礼子氏>

 日本勢による海外資産の取り崩し/資金の本国回帰(リパトリ)を先取りして、ここまで円高なる理由があるのか疑問だ。今はサービス・セクターをはじめ生産活動の停滞による景気悪化のリスクがより現実味を帯びている。対外資産を取り崩すとすれば、将来的に所得収支の黒字は減少する。震災の復興需要で木材、プレハブなどの輸入拡大も予想される。対外資産圧縮による円高圧力があるとすれば、こうした外貨需要で十分に相殺される規模のものだとみている。

  <円債>

 ●いったんリスク回避の動き優勢に

 <RBS証券 チーフ債券ストラテジスト 福永顕人氏>

  いったんはリスク回避の動きが優勢になるのではないか。年後半には復興需要が見込まれるが、当面は景気のダウンサイドを重視した相場展開となる可能性が高い。先物主導の相場上昇になるとみる。日銀が今日行う政策決定では、まずは金融システムの安定が最重要事項であることから、緊急時に潤沢な流動性を供給する旨の声明が盛り込まれる可能性が高い。朝からは即日オペが実施される公算が大きい。

 具体的な追加緩和として考えられるのは、基金による資産買入額の増額だが、すでに今の枠組みで資金供給やリスク資産の買い入れを十分に実行できる。このため、必ずしも必要でないと判断される可能性もあるのではないか。緊急の対応策であることを分かりやすくするためにも、当面の資金供給を潤沢にするという選択をとる方が合理的とも言える。

 市場における質への逃避や震災保険金の支払いに伴う円買いの連想から円が急進した場合、政府の市場介入の可能性も当面の注目となる。今後の為替介入をも視野に入れた上で、本日の決定会合で基金の増額をするということになれば、ややサプライズとなって一段の中短期セクターの金利低下圧力となり得るが、一方で株式市場が好感する可能性もあり、これだけをもって債券買い要因と考えないほうが良いだろう。

 もう1つの焦点が緊急の補正予算の規模とその財源だ。1995年の阪神大震災のときには8106億円の震災特例公債が発行されたが、被害の状況からして当時を大きく上回る国債の発行となる可能性が高い。

 しかし、財政リスクを材料とした金利上昇圧力は極めて軽微であろう。地震が起こった瞬間、市場参加者は頭よりも手が動く格好で反射的に買い注文が殺到した。債券市場の急騰と、市場参加者がそれを当然と受け入れていることは、財政リスクが市場にとってボラティリティを与えるための材料に過ぎず、真剣に投資家に懸念されているものではないことを示す好例ではないか。

 カーブのスティープ化や、ソブリンCDSスプレッドのワイドニングの可能性はあるが、金利水準自体が財政リスクを嫌気して上昇する可能性は非常に低いだろう。

 ●経済的打撃で株安・債券高か

 <東海東京証券 チーフ債券ストラテジスト 佐野一彦氏>

 経済的打撃などから株安・債券高との反応が確実だろう。東京電力による計画停電がその期間を長くする公算が大きい。その後は、生産回復や復興需要、財政支出に伴う国債増発懸念などから利回りは上昇に向かうのではないか。阪神大震災では、94年度と95年度に3回の補正予算が組まれ、関連する支出総額は3兆2298億円に達した。

 先週末の動きからすると今回の震災は円高に作用した。阪神大震災後もそうだったため、連想が働いたのかもしれない。しかし、1ドル=81円台後半では止まり、加えて、当面の日本経済の行方を踏まえると円安要素は十分あり、円高の持続は考え難い。

 きょうは日銀・金融政策決定会合が開かれる。景気の踊り場脱却宣言の有無が注目されていたが、震災対応でかき消されるだろう。日銀は朝方から潤沢な資金供給を行うとみられる。

 ●金利曲線はブル・スティープ化へ

 <クレディスイス証券 債券調査部長 河野研郎氏>

 前週末の大震災が過去の大震災と比較しがたい点は、被害が広域に及んでいることだ。日本経済、とくに家計消費に中長期的にも大きな影響を与える可能性が高い。リーマンショック以降には消費が急減することで家計貯蓄率の急上昇が起こったが、今回の出来事でこの動きが強まる可能性が高いだろう。

 一方で、日銀は潤沢な資金供給を続けることになろう。潤沢な資金供給をし、流動性供給に万全を期すことを決定することが見込まれる。無担保コール翌日物が0.1%を大きく下回る可能性があろう。ただ、短期市場からやや長めの短期国債金利などに強く働きかける施策が打たれたとしても、国債買入オペ増額が実施される可能性は低いのではないか。

 国債買入オペの増額、そして資産買入等基金による金利もの以外の資産買入増額は、実際の経済の悪化に合わせて増額されることになると考えている。

 結果として、より短い年限ほど金利低下圧力が強くなるだろう。今まで年度末に向けた動きに絡んで物価環境などから考えれば高めで推移していた中期セクターの金利は、大きく低下することになると考えている。一方、長い年限での思惑による売りに加え、政府が今後大きな財政出動を迫られる可能性も意識されるため、イールドカーブはブル・スティープ化の動きを強めることになるとみている。 

  <株式>

 ●換金売り先行、徐々に復興需要への期待感

 <コスモ証券 投資情報部副部長 清水三津雄氏>

 日経平均は換金売りで大きく下げて始まるだろう。先物の動きをみると、日経平均は1万円を割れて始まる可能性が高い。落ち着きどころを見極めるしかない。

 落ち着くには数日かかるとみられるが、復興需要の期待感が出てくると思うので、徐々に戻してくるだろう。復興需要としては、建設やセメント、建機、発電機関連などが見込まれる。

 ●まずリスク回避の動き、原発トラブルなど反映

 <日興コーディアル証券・国際市場分析部次長 橘田憲和氏>

 リスク回避の動きが広まり、日経平均は下げて始まるのはやむを得ない。400円─500円安となる可能性がある。原子力発電所のトラブルや経済活動の停滞を反映することになる。

 ダメージを受けている電力会社のほか、再保険をかけているとみられるものの、地震保険関連なども売られやすいだろう。もっとも、阪神淡路大震災の際も、数カ月後から本格化する復興需要を見越して、建設や設備投資関連、不動産、ガラスやセメントなど資材関連、建設、港湾関連の銘柄が下げ渋ったり、その後上昇する場面があった。そのため、底なし沼のように下げ続けるとは思わない。

 ●日経平均1万円割れ覚悟、パニック売りは限定的

 <マネックス証券 チーフ・ストラテジスト 広木隆氏>

 日経平均はリスク回避の売りで1万円割れを覚悟しなければならないだろう。東日本大震災の被害が広範囲に広がっており、経済活動への影響は必至だ。週明けの東京市場は福島での原発事故や停電への影響を織り込みにかかるとみている。

 ただ週末を挟んだことでパニック的な売りが続くことは想定しづらい。政府や日銀の迅速な対応も期待され、日経平均は200日移動平均線(9840円04銭=11日時点)水準で下げ止まるのではないか。巨大地震の影響により、国内の生産や消費の低下は免れないが、国内企業の好業績は外需けん引型であり、主力企業の海外現地生産比率の高まりを考慮すると、比較的早く株価が戻る可能性もあるとみている。

 ●現物・先物とも売り優勢、一段の金融緩和が下支え

 <SMBCフレンド証券 シニアストラテジスト 松野 利彦氏>

 東日本巨大地震の影響を受け、朝方から現物・先物ともに売りが膨らみ、日経平均は1万円を割り込むだろう。ただ、巨大地震による経済活動への影響は読み切れず、どの水準まで売ることが妥当なのかが不明であり、次第に売り物は限られるとみている。日銀による一層の金融緩和も下支えするだろう。

 ●リスク回避、その後様子見でインフラ一角を注目

 <大和証券キャピタルマーケッツ金融証券研究所 投資戦略部次長 西村由美氏>

 リスク回避が優勢となり、ほぼ全面安に近い形になりうる。その後は様子を見ながらの展開となるだろう。自動車やハイテクなど、工場操業への影響や電力状況などに不透明感がある一方で、インフラ関連など個別銘柄に多少の物色が出る可能性がある。

 阪神淡路大震災の際は、日経平均は半年かけて25%程度の下げとなった。先物の動きを見るとまず1割程度は下落するとみられ、いったん下げた後は続報待ちということになるだろう。

 <クレジット>

 ●リスク回避が先行、日銀供給が下支え

 <三井住友銀行・キャピタル・マーケット・アナリスト 上雅弘氏>

 クレジット市場では現状、個別企業の被害状況が把握できていない以上、リスク回避の動きが先行する。一部の電力や鉄道など地震被害の大きい企業を中心に、スプレッドにワイド化圧力がかかりそうだ。円高/株安が進むことが見込まれることもネガティブな要因だ。

 一方で、日銀が流動性供給で金融市場の安定に万全を期す方針を示していることがサポート要因。過度に売られる銘柄があれば、買いが入る可能性があるが、その場合には被害状況の把握が前提条件だ

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