[東京 14日 ロイター] 東日本大震災で日本最大のエチレンプラントである三菱化学鹿島事業所(茨城県神栖市)の操業が停止している。石油化学製品の基礎素材であるエチレンプラントの操業停止は、自動車や電機、消費財に至るまで幅広い産業の生産活動に打撃を与えることになる。
早期の復旧は困難とみられるほか、他社からの融通や他のプラントからの代替供給などの具体的な対応策もまだ決まっていない。供給不足が長引けば、幅広い産業に影響が及ぶことが懸念されている。
<三菱化学・鹿島事業所、日本のエチレン生産の1割強を供給>
地震の影響で操業を停止しているのは、三菱ケミカルホールディングス(4188.T)傘下の三菱化学の鹿島事業所や丸善石油化学(東京都中央区)の千葉工場(市原市)。このうち三菱化学の鹿島事業所は、年間生産能力が約83万トンで日本最大規模のプラントだ。石油化学工業協会によると、日本の2009年のエチレン生産量は727万9000トンで、同事業所の生産量は約11%を占める。
三菱化学では、火災などは起きていないものの、緊急停止による影響などについて点検が必要で「復旧には時間がかかる見通し」(広報担当者)と話す。定期修理で操業を止める時と異なり、準備がないままに行った緊急停止では、途中に未反応物が残っていることもあり、点検に時間がかかるという。さらには、断続的に余震が続く中での点検を強いられていおり、思うようには進んでいない。鹿島のコンビナート内には、信越化学工業(4063.T)やカネカ(4118.T)、花王(4452.T)、JSR(4185.T)など、川下メーカーが20社以上集まっているが、三菱化学からの原料供給が遅れれば、これら工場の生産再開も遅れる懸念がある。
クレディ・スイス証券のアナリスト、澤砥正美氏は「どの程度で復旧するかが注目される。1カ月程度は在庫での対応が可能だと思うが、それを超えてくると、原料をどのように調達するかという問題が川下メーカーにとって重要になってくる」と指摘する。なかでも「ゴムは需給がタイトな状況で、日本メーカーのポジションが高い。エチレンの供給停止で幅広い産業に影響がある中でも、JSRへの影響により、合成ゴムの需給にタイト感が強まる可能性がある」とみている。
<代替供給も検討、市況に影響も>
三菱化学では、もうひとつの生産拠点である水島事業所による代替供給も含めて検討している。「エチレンは通常ガスだが、冷却すると液体になるため、輸送は可能」(広報)ではあるが、周囲のインフラの回復が伴わなければならず、実施可能かどうかは検討を要するという。
三井化学(4183.T)や住友化学(4005.T)の千葉工場は、地震後もエチレンプラントは稼働している。業界では、定期修理などでプラントが稼働を止めた場合に他社から供給を受けるなどの協力体制は通常からできており「要請を受ければ、できる範囲で協力する」(三井化学広報)としている。
ただ、中国を中心とするアジアの旺盛な需要によって、「ここ2年程度はエチレンプラントの稼働率は95%程度と高い」(石油化学工業協会)状態にあり、他社からの協力でどこまでカバーできるかも不透明な状況にある。
輸出分を削減したり、アジアから手当てする可能性もあり、すでにアジア市況が上がり始めるなどの影響も出ている。
(ロイターニュース 清水 律子;編集 石田仁志)