March 22, 2011 / 4:46 AM / 8 years ago

ロイター個人投資家調査:菅政権の震災対応「不十分」が4割

 [東京 22日 ロイター] 甚大な被害をもたらした東日本大震災の発生を受けて、ロイターが実施した緊急調査によると、菅政権の震災対応は「不十分」(40.5%)との評価が最も多く、対応の遅れや情報開示が不十分との指摘が出ている。

 3月22日、ロイター個人投資家調査によると、菅政権の震災対応は「不十分」が4割との評価が最も多かった。写真は配られた食料を運ぶ被災した夫婦。宮城県気仙沼で撮影(2011年 ロイター/Issei Kato)

 震災復興資金の調達方法については、子ども手当を含む歳出見直しや政府保有の米国債などを含む外債売却が上位に入った。震災に伴う景気減速は1年以内との見方が7割。大震災を契機に日本の政治・経済構造は「転換点を迎える」との回答は72.5%にのぼり、変革への期待感をうかがわせる内容となった。福島原発事故で注目が高まっている国のエネルギー政策に関しては、「原発政策を見直し、原子力発電所を減らすべき」が44.2%、「エネルギー確保のため、計画どおり原発を増やすべき」が42.9%となり、見直し派が僅差で上回った。調査期間は3月16日─18日。

 この調査はロイター.CO.JPの個人投資家向けメールマガジン購読者である全国の個人投資家を対象に実施し、933人(男性94%、女性6%)が回答。年齢層は20代が3%、30代が13%、40代が23%、50代が22%、60代が26%、70代以上が13%。

 <景気減速は1年以内との見方が7割>

 震災に伴う景気減速がどの程度続くかを聞いたところ、最も多かったのが「1年」(31.5%)だった。「半年」(27.0%)と「3カ月」(11.1%)も合わせると、回答の7割が1年以内の時間軸におさまった。「3年以上」は16.2%、「2年」は14.1%だった。回答者からは「大きなマイナス材料が発生したため、半年以上は悲観的にならざるを得ない」(40代)といった声が出ていた。

 <政権の震災対応「不十分」が4割>

 菅政権の震災対応については「不十分だ」(40.5%)との評価が最も多かった。次いで「評価できる」(28.6%)、「全く評価できない」(27.5%)、「大いに評価できる」(3.3%)の順となった。

 「不十分」との回答をみると、「被災地に必要なモノや情報が行き届いておらず、指揮命令系統も混乱」(40代)といった声に加え、福島原発事故では「対応が遅い。情報開示が不十分」(40代)、「場当たり的」(50代)、「放射線の危険範囲内の人々に対する対策ができていない」(60代)との声が相次いだ。特に初動における東京電力(9501.T)との対応に批判が集まり、「原発・停電対策を民間の東電に任せず、当初から政府の強力な管轄下に置くべき」(60代)、「原発対応の遅れは業界体質から十分に予見できた」(40代)、「早い時点での国際協力が必要」(50代)との指摘が出ていた。危機に直面した時こそ「官僚や専門スタッフをうまく使いこなして首相は政治的判断をする時間を持つべき」(70代以上)として政治判断力が問われるとの声もある。

 「評価できる」との回答からは、「不十分と感じる事も多々あるが、未曾有の惨事なので少々の不手際は仕方がない」(40代)、「阪神淡路大震災の村山政権時に比べれば進歩」(40代)、「自民党政権でもおそらく同じような対応しかできなかっただろう」(50代)との声が挙がっているほか、「枝野官房長官が真摯(しんし)に説明している」(60代)として、安定感のある官房長官会見に好感を示す声が多かった。

 「全く評価できない」をみると、「東電との連携不足。株価への影響を考えない会見」(40代)、「視察パフォーマンス」(40代)、「被災者に飲料・食料・薬品が行き渡らず、最小不幸社会が聞いてあきれる」(50代)との声が出ており、首相には大局的な判断が求められるとの指摘が多かった。

 <原発政策見直し派、推進派をわずかに上回る>

 政府は昨年6月に閣議決定したエネルギー基本計画で、2030年までに原発14基以上を新増設し、原子力発電比率を約5割とする目標を掲げている。福島原発の事故を受けて、日本の原発政策はどのように変化すべきかを聞いたところ、「原発政策を見直し、原子力発電所を減らすべき」が44.2%、「エネルギー確保のため、計画どおり原発を増やすべき」が42.9%となり、日本のエネルギー政策の修正を望む見直し派が、わずかに推進派を上回る結果となった。「危険なので原発は全廃すべき」は13.0%にとどまった。

 回答者からは「地震多発国であることを再認識し、原子力を中心にエネルギー政策の見直しも必至」(20代)、「原発は事故を起こすと放射能被害という後処理に膨大なコストがかかる。人的被害も計り知れない。結局火力よりコストがかかる」(70代以上)、「自然エネルギーの更なる活用を」(40代)といった声が出ていた。

 <震災復興資金の調達方法、歳出見直しや政府保有の外債売却が上位に>

 日本は震災復興資金をどのように調達すべきかを聞いたところ、最も多かったのが「子ども手当などの歳出見直し」(38.7%)となった。回答をみると「ばらまき感のある子ども手当て、高速道路無料化等々を再度見直す」(30代)、「ODA見直し」(40代)、「議員や公務員の賃金・人員整理」(60代)というように、聖域なき歳出見直しを通じて被災地復興に充てるべきとの声が強かった。

 次いで多かったのが「政府保有の米国債など外国債券の売却」(25.2%)だが、これには賛否両論がある。過去には橋本龍太郎元首相が米国債売却の可能性に言及し、国際的に大きな波紋を呼んだ経緯があるなど、政府保有の外債売却は禁じ手ともいえる手段だ。回答者からは「特に外債はこういう不測の事態が起こらない限り売却が難しいだけに良い機会ではないか」(50代)との声が挙がる一方で、為替相場や米国債市場への影響が懸念されるだけに「米国債は売ると影響大なので米政府に買い取ってもらう」(60代)、「売却せずに米国債担保でIMFから借入する」(60代)として実行には細心の注意を要すとの声が出ていた。財務省によると2月末の外貨準備高は1兆0914億8500万ドル。主に米国債などで運用しているとされる。

 3番目に多かったのが「国債発行」の12.3%。従来の発行方法に加え「50年程度の日本復興債を国内外で発行する」(40代)、「日銀による国債買い取り」(30代)、「海外にもっと日本国債を売る」(50代)との意見があった。4番目は「増税」の10.2%で、「生活必需品以外にかかる消費税増税」(60代)、「所得税増税」(40代)、「目的税、時限的な災害復興税の導入」(30代)といった方法があるという。「その他」は13.6%で、具体策としては「IMF等から借り入れ」(40代)のほか、ポリシーミックスを通じて「可能な調達法を総動員すべき」(70代以上)との声が出ていた。

 <大震災を契機に日本は「転換点を迎える」が7割>

 東日本大震災という大きなショックを契機に、長らく停滞していた日本の政治や経済構造は「転換点を迎える」(72.5%)との回答が大多数を占めた。「転換点を迎えるとは思わない」(27.5%)を大きく上回り、変革への期待感をうかがわせる内容となった。

 転換点を迎えるとの回答者からは「この苦難を乗り越えた時、失われた20年も必ず転換期を迎える」(30代)、「時間はかかるが戦後の復興のような大きな転換点になる」(50代)、「転換しなくては未来もないし、被災者に申し訳ない。希望をこめて回答」(60代)といった声が相次いだ。

 具体的な変化としては「長期化する首都圏の電力不足などで、東京への一極集中を強めていた経済構造の見直しを余儀なくされる」(20代)、「首都機能の分散」(60代)、「産業構造の転換を図るチャンス」(30代)、「需給バランスが改善される」(50代)といった声が出ていた。

 回答者からは「良い政治をすれば復興も早くなる」(60代)として、政治への注目度が一段と増しているとの指摘がある。震災を機に政策の前提が一変し、「マニフェストの呪縛から逃れ、与野党ともに自由度が増す」(40代)、「民主党政権はコンクリートから人へと唱えていたが、災害対策のための構築物や都市の形成に予算を投入すべき」(60代)、「東南海沖地震など自然災害に重点対策が必要」(60代)、「耐震補強・護岸の見直し」(70代以上)として、防災面での公共事業強化を求める声もあった。

 政治的にターニングポイントにあるとの見方も少なくない。震災対応次第では「総選挙は避けられない」(70代以上)、「このショックが政権崩壊を早めるか、評価を高めるかの分岐点にある」(60代)との声が出ていた。「良くも悪くも転換点の一つ」(50代)として、悪い方向への変化を懸念する見方もある。

 東京電力による計画停電の影響から、有事の際に国全体で電力を融通し合えるように「電力会社の周波数(東日本50ヘルツ/西日本60ヘルツ)を共通化する」(60代)ための設備投資が不可欠との指摘や、「オール電化の見直し」(40代)、この他には「自宅勤務の導入増」(30代)として、働き方の多様化を挙げる声も出ていた。

 一方で「転換点を迎えるとは思わない」(27.5%)の回答をみると、「阪神大震災でも変わらなかった。首都が直撃されない限り、一過性で終わる」(40代)、「日本が変わるのはいつも外圧があった時のみ」(50代)、「小泉純一郎元首相のような、強い実行力を持つ指導者が現れない限り無理」(50代)、「政治家はこの大震災さえも政局の材料としか思っていない」(20代)として、当事者意識の不足や強力なリーダーシップ不在を嘆く声が目立った。企業活動面では「ますます海外移転が進み、日本の財政赤字は増え続ける」(40代)として、産業空洞化に拍車がかかるのではないかとの懸念も出ていた。

 *ロイター.CO.JPの個人投資家向けメールマガジン購読者は35歳以上の男性が多く、平均年収は約800万円。半数以上が1千万円以上の金融資産を保有している。

 今回の回答者の金融資産残高(除く不動産)別構成をみると、500万円未満が25%、500─999万円が21%、1000─1999万円が20%、2000─2999万円が11%、3000─4999万円が11%、5000─9999万円が10%、1億円以上が2%だった。 

(ロイターニュース 寺脇麻理 企画協力:下郡美紀、新倉由久、Nathan Layne、

David Dolan)

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