April 1, 2011 / 4:15 AM / 8 years ago

円安は日本を救うか、国債支えるマネー流出のおそれも

 [東京 1日 ロイター] 市場には足元の円安を日本にとってプラスと好感する声だけではない。リスク選好ではなく日本経済悪化への懸念による金利低下が円安につながるような場合には、日本売りが生じ、株価にとってもマイナスと警戒されている。

 4月1日、市場では日本経済悪化への懸念による金利低下が円安につながるような場合には、株価にとってもマイナスと警戒する声が聞かれた。3月10日撮影(2011年 ロイター/Toru Hanai)

 円安が基調として定着するとの見方が強まれば、外債投資の増加につながり、日本国債を支えているマネーが流出するという危機的状況に陥るおそれもあるという。 

<円安が株高要因とならない可能性>

 円安は国内輸出企業にとってプラス要因であり、輸出株のウエートや影響力が大きい日本の株式市場にとってはポジティブに働くのが通常だ。だが最近の円安に対しては日本売りにつながるとして警戒する声も少なくない。

 「欧米諸国が金融引き締めに動く半面、日本は震災の影響が長引き日本の景気不透明感が強まり緩和政策が継続される可能性が大きい。リスク選好の円安ではなく日本経済へのネガティブな見方が背景の円安であれば、株価にもマイナスに働く可能性がある」(国内シンクタンク)という。

 実際、円安進行にもかかわらず日本株はさえない。円は対ドルで83円後半、対ユーロで118円前半まで円安が進んだが、前場の日経平均は前日終値付近でのもみあいとなっている。市場では「震災の影響が見極められない。計画停電が長引けば11年度の企業業績はかなり下押しされるだろう。円安の背景が景気や業績不安であれば株にはネガティブ」(コスモ証券・投資情報部副部長の清水三津雄氏)との声が出ていた。

 震災で物資の輸入が増える可能性があるほか、原油価格も上昇しており、円安が「デメ

リット」として働く可能性もあると警戒されている。 

 金利低下は債券価格の上昇であり、株価は軟調であっても「質への逃避」が進めば日本売りは限定される。だが、円安が基調的に続くとなれば日本の資産はその魅力が低下し、相対的に外国資産の魅力が上昇する。日本国債を支えている国内のマネーが外債などに向って逃げだせば、円安・株安・債券安のトリプル安となる可能性もある。債券価格が下落し金利が上昇すれば円安の要因は縮小するが、投機筋の動きでタイムラグが発生したり、変動幅が大きくなれば、震災で疲弊した日本経済に金利上昇はさらにダメージをもたらす。 

 東海東京調査センター・シニアストラテジストの柴田秀樹氏は「円安が進行しているときに、そのメリットを活かし景気回復につなげるような政策が欠かせない。円安を活かして円安の要因となっている景気悪化懸念を消すことが必要だ。また日本市場の魅力を高めておくことも重要だろう」と述べる。 

 日本では、外需で稼ぐ輸出企業がけん引役となり他の産業に効果が波及するという景気回復のパターンが多く、円安が輸出を後押しすれば「負の連鎖」は断ち切れる。円安をうまく活用できれば株高要因になるとみる投資家も多い。

 東京海上アセットマネジメント投信の運用戦略部チーフファンドマネージャーの平山賢一氏は「日本のモノが世界で売れなくなるのではないかとの不安が強まっているが、円安が進めばポジティブインパクトが起きる可能性がある。為替感応度が高い企業の業績は思ったほど悪くないことになりそうだ」との見方を示している。 

<「出口」への距離遠い日本> 

 午前の外為市場では、金融政策に対する各国の姿勢の違いを材料に、海外のファンド勢を中心に円売りが進んでいる。ドル/円は震災直後につけた83.30円を上回り、2月22日以来の高値をつけた。

 ドル買い/円売りを支えたのは、このところ相次ぐ米連邦準備理事会(FRB)高官の発言。金融緩和政策からの出口を模索するようなコメントが続いており、前日はミネアポリス地区連銀のコチャラコタ総裁が、ウォールストリート・ジャーナル紙のインタビューに対し、年末までに0.75%ポイントの利上げを実施する可能性を示唆した。もともと同総裁はタカ派的とみられているが、「0.75%と具体的な数字まで出してきたので意識せざるをえない」(国内金融機関)という。 

 一方、日本は震災の影響で「出口」までの距離が一段と遠のいていると受け止められている。「当面は日米金利差が縮小する方向には行かないだろう。むしろ、次の日銀決定会合で追加の対策が打たれてもおかしくない雰囲気になっている」(みずほコーポレート銀行マーケット・エコノミストの唐鎌大輔氏)という。また「震災の結果が一部しか入っていない3月の日銀短観も決して良くなかった。出口を模索する欧米と違って、日本が緩和姿勢を維持することは明らか」(バンクオブアメリカ・メリルリンチのFXストラテジスト、藤井知子氏)との声も聞かれた。 

 円はドル以外の主要通貨に対しても売られており、豪ドル/円は86.45円まで上昇し、11カ月ぶりの高値をつけた。ユーロ/円は昨年5月以来の水準となる118.52円まで強含んだ。金融政策に対する日本とユーロ圏、オーストラリアの温度差に加え、中国の3月購買担当者指数(PMI)が前月から上昇したことも、クロス円を押し上げた。 

<財政規律弛緩による円安も警戒> 

 財政規律の弛緩による「悪い円安」も警戒されている。震災前のデータが多い日銀短観は材料視されなかったが、復興関連で、一部議員からではなく、政府から日銀引き受けの本格的な検討がなされているという話が報じられており、予算の財源に関する震災特例公債発行法案に日銀引き受けの可否が盛り込まれるかどうかが焦点となってきた。

 円債市場では日銀の国債引き受けには否定的な声が多い。

 RBS証券の福永顕人チーフ債券ストラテジストは「5―10兆円程度以下であれば、直接的にマネーを膨張させてインフレを引き起こす効果は極めて小さいが、問題は、そういった直接的な金融効果ではなく、これまで日銀が拒否反応を示してきた国債引き受けを実施することになった場合、日銀の独立性、ひいては円の信認が失われるという(マイナス)効果」と指摘。

 そのうえで「国債の需給をサポートするという観点からの金利低下は起こらず、かなりの円安と長期金利の上昇が起こるのではないか。日銀引き受けが求められるほど震災国債の市中消化に不安があるわけでもない。リスクの大きさを考えると、見送られる可能性は高いものの、実際に見送りが確定するまでは不安定な相場が続きそう」と話している。 

 午前の円債先物は続落。新年度入り後の国債買いが期待されたが、震災復興原資をめぐる不透明感が強まり、銀行などの主要投資家は積極的な取引を見送った。「期初のため、ポジションが取りやすくはなったが、外部環境が不透明で投資の方針が明確に定まらず、いったん益出しから入っている投資家が若干多いのではないか」(ドイツ証券の山下周チーフ金利ストラテジスト)という。

 (ロイター日本語ニュース 伊賀大記;編集 宮崎亜巳)

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