April 5, 2011 / 9:52 AM / 8 years ago

焦点:福島原発事故、損害賠償は前代未聞の規模に

 [シンガポール 4日 ロイター] 東日本大震災で被災した東京電力(9501.T)福島第1原子力発電所の事故は、日本史上最大規模の民事損害賠償になる可能性が高い。法律専門家らは、こうしたケースは過去に前例がないことから、現段階ではどういった手続きで処理されるかさえ不透明だと指摘している。

 4月4日、東日本大震災で被災した東京電力の福島第1原発事故は、日本史上最大規模の民事損害賠償になる可能性が高い。先月31日に撮影された同原子力発電所。防衛省提供(2011年 ロイター)

 日本政府は東日本大震災の損害額が最大25兆円になると試算しているが、電力不足による経済活動の縮小や補償費の増加などにより、この数字は最終的には大幅に膨らむとみられる。

 福島原発事故の損害賠償の多くは、1961年に制定された「原子力損害の賠償に関する法律(原賠法)」に基づいて請求されることになる。米国や多くの欧州連合加盟国の原発法とは異なり、同法律では事業者に無制限の賠償責任があるとしている。

 バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチは、福島原発危機が2年続いた場合、東電の損害賠償額は約10兆円に上る可能性があると試算している。これは最悪のシナリオだとしても、政府は放射性物質の外部流出阻止には数カ月かかるとの見通しを示しており、最終的に大きくかけ離れた数字にはならないかもしれない。

 原賠法では、「異常に巨大な天災地変」による災害については事業者の免責を定めているが、法律専門家は、東電には少なくとも一部費用を負担するよう強い政治的圧力がかかるとみている。

 DLAパイパーの石川耕治弁護士は「天災免責の適用に関する前例はなく、東電もおそらく責任を免れないだろう。損害賠償の100%ではないだろうが、地震発生後数週間の失策を考えれば40─60%程度の補償に向き合わなくてはならないだろう」と述べた。

 <不動産価値の下落も賠償請求の対象に>

 専門家らは、損害賠償の対象はかなりの広範囲にわたると予想。過去に原賠法に基づく損害賠償が行われたのは、1999年の東海村臨界事故のみだが、同事故の場合を参考にすると、放射能漏れによる直接的な影響が認められれば、不動産価値の下落も賠償請求の対象になる可能性がある。また2000年に出された同事故に関する報告書では、精神的苦痛や避難費用、負傷や医療検査も補償の対象となる可能性も示されている。

 福島第1原発事故では、避難指示の対象になっているのは数万人に上る。原発から半径20─30キロ圏内が避難や屋内退避の対象となっており、そうした地域の不動産価値下落も損害賠償の対象となるかもしれない。農家への農産物補償はすでに約束されているが、政府は出荷制限した以外の農産物についても、風評被害が及んだ場合は原賠法に基づく補償の対象とする方針を固めている。

 西村あさひ法律事務所の斎藤創弁護士は「東電と政府は多くを自発的に補償するだろうし、裁判所が原発事故が原因と認定しないかもしれない一部損害さえ補償する可能性がある」と述べた。

 <政府は補償基金を設立か>

 こうした広範かつ大規模な損害賠償請求の処理には、課題も山積している。専門家らの間には、緊急を要する損害賠償の支払いをいち早く始めるため、政府が基金を設立するとの見方もある。しかし、政府が最大限の努力をしたとしても、裁判所には難しい損害賠償訴訟が多く持ち込まれることになるだろう。

 東電は現在、約9兆7000億円の負債を抱える一方、株価は連日大幅に下落。原発事故の損害賠償請求の多くは、まずは政府が対応することになりそうだ。

 西村あさひの斎藤氏は「東電には大規模な損害賠償に一度に対応する余裕はなく、長年にわたって補償基金に肩代わりしてもらうことになるだろう」と指摘する。

 政府が東電の経営への介入を余儀なくされ、何らかの形で東電が国有化されれば、事態はさらに混乱することになるとみられる。

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