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ドル84円前半、リスク選好地合いへの転換探る

 [東京 13日 ロイター] 午後3時のドル/円は、ニューヨーク午後5時時点から上昇し、84円前半で推移している。海外市場までのリスク回避地合いが一巡、下落してきた原油価格が切り返すなかで、ドル/円も上昇に転じて84円台を回復した。

 4月13日、東京市場午後3時のドル/円は、ニューヨーク午後5時時点から上昇し、84円前半で推移。写真は昨年9月撮影(2011年 ロイター/Yuriko Nakao)

 今後、本格的にリスク選好地合いに転じるかどうかを探るうえで、市場ではきょう発表される3月の米小売売上高が注目されている。

 海外市場では、米ダウ工業株30種が117ドル下落するなど欧米株価が下落。日本の原発事故などが意識され、リスク回避地合いが強まった。しかし、ドル/円は下値メドとみられていた200日移動平均線水準(83円半ば)がサポートされ、下値の堅さを確認した。この付近のオプションも意識されたという。

 アジア時間に入るとドル/円は上昇に転じ、84円台を回復。グローベックス市場の米国株先物がしっかりで、米原油先物も戻り歩調となり、リスク回避地合いは徐々に後退した。午後に入って米原油先物が切り返すと、リスクオンを探る動きに転じた。「84.20─84.30円までは売りが出ているが、そこを抜けてしまえば上昇しやすくなりそうだ」(外銀)との声が聞かれる。

 市場では、リスクオン地合いが強まるかどうかをみるうえで、市場ではきょう発表される3月の米小売売上高が注目されている。ロイター予測によると、前月比0.5%増の見通しだが「予想を上回ればリスクオン地合いが強まり、ドル/円はじり高になるだろう」(みずほコーポレート銀行マーケット・エコノミスト、唐鎌大輔氏)との声が出ている。

 <焦点は原発事故から金利へ回帰へ>

 リスク回避地合いの後退で、市場の焦点は金利に回帰しつつある。3月の欧州連合(EU)基準の仏消費者物価指数(CPI)は前月比0.9%上昇と、事前予想の同0.6%を上回り、ユーロ/ドルは1.4498ドルまで上昇して海外市場でつけた15カ月ぶり高値(1.4520ドル)に迫り、対円でも122.05円と122円台を回復した。

 一方、日本の利上げレースでの出遅れを考えると「円は売りとの位置付けが確固としてある」(国内金融機関)という。ただ、利上げレースによる相場形成のなかではドルもユーロや豪ドルに対しては売られる通貨であるため、ドル/円の上昇力は限られるという。ドル/円が上がるとすれば「ユーロ/円や豪ドル/円の上昇がドル/円をサポートする形になる。ドルは直近高値である85円半ばを超えられないか、超えたとしてもわずかだろう」(国内金融機関)という。 

 <日本が7─9月にプラス成長に転じることできるか関心>

 4月の月例経済報告は景気について「このところ弱い動きとなっている」とし、基調判断を半年ぶりに下方修正した。先行きについても、震災の影響から当面は「弱い動きが続くと見込まれる」と指摘。市場では、4─6月期はマイナス成長がコンセンサスで、7─9月期にプラスとみる声が多かったが、このシナリオがやや危うくなってきている。「これまでは7─9月期のプラス転換を見込んでいたが、10─12月期に後ずれする可能性が出てきた。電力供給の制約や第2次補正も含めて公共投資の執行時期が遅れる可能性があるためだ」(住友信託銀行マーケット・ストラテジスト、瀬良礼子氏)との声が聞かれる。

 前日の米ダウ工業株30種の急落など、ここにきてのリスク回避地合いの背景のひとつは日本の余震や原発事故のリスク。震災後に急落したダウ工業株30種は、その後復興期待から急回復して新高値をつけたが、相次ぐ余震や原発事故の深刻さについての「レベル7」への引き上げで「日本の復興に対する楽観ムードがやや後退している」(国内銀行)との声が聞かれる。

 与謝野経財相は月例経済報告を受けて「震災の影響は一時的、年末にかけて景気上昇が多くのエコノミストの考え」と述べた。住友信託の瀬良氏は「公共事業などで年末に向けどこかでプラスに転じることはわかっているが、問題はタイミング。この見極めがつかないと日本発のリスク回避地合いは払しょくできない」とみている。

 そのうえで、見極めるポイントとして、東京電力9501.Tが月内にもまとめるとみられる事故収束への行程表や、5─6月とみられる第2次補正予算の規模や内容、また財源にからんで6月までにまとめられる税と社会保障の一体改革のなかで復興財源に踏み込むかなどの点を上げている。

 (ロイターニュース 松平陽子)

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