[東京 14日 ロイター] ロイターが東日本大震災後1カ月経過をめどに企業400社を対象に実施した調査によると、58%の企業が生産設備やサービス体制に打撃を受けており、そのうち供給能力が地震前の水準に戻ったとの回答は26%にとどまった。
一方、需要も落ち込み、その回復は鈍い。震災前の水準に回復した企業はわずか2%で、58%が震災前から2ケタの減少と回答した。特に製造業では非製造業よりも需要回復が鈍い。納入先の生産停止や消費マインドの冷え込みなど需要そのものの縮小が大きく影響していることがうかがえる。さらに震災をきっかけに、企業活動拠点の移転や取引先の変更を実施・検討している企業が20%を超えていることが明らかになった。
調査はロイター短観と同時に同じ対象企業に実施、調査期間は3月25日から4月11日まで。
調査対象は400社、回答社数は210社程度。
<供給力完全回復は26%>
震災で生産設備やサービス体制に打撃を受けた企業は全体の58%に上った。製造業では60%超に達し、影響の広がりを示している。業種別では、最も少ない電機で50%をやや下回るものの、他の業種では半数以上の企業が打撃を受けている。
そうした企業のうち、どの程度供給能力が回復したかを尋ねたところ、震災前の水準に戻ったのは26%にとどまった。半数以上の54%が80%以上100%未満の回復となっている。
<需要の落ち込みに広がり、回復も鈍く>
一方、需要の落ち込みも大きい。全体で59%が震災後に受注量や販売額が落ち込んだと回答。製造業では56%、特に目立つのが繊維・紙・パルプで100%の企業、輸送機器や精密では70─80%の企業が、金属・機械では60%程度が、需要が落ち込んだと回答した。
需要が落ち込んだ企業にその後の回復水準について聞いたところ、震災前の水準に戻ったのはわずか2%。製造業ではゼロだった。回復度合いは製造業が鈍い。自社の生産能力に支障がなくても、納入先の最終組み立て企業などがサプライチェーン寸断の影響で生産を停止したため、受注がなくなった企業もある。全体で58%の企業が受注が2ケタ減となっている。
今回の震災は供給ショックと言われているが、多方面で需要減を招くなど波及効果が大きいほか、個人消費や設備投資など最終需要の悪化を招いている可能性がありそうだ。供給だけでなく需要の縮小を招いていることがうかがえる。
<企業活動の障害は、資材調達難が最も大きく>
企業活動再開にあたっての障害要因を聞いたところ、最も多かったのは「燃料・資材・部品の調達」で、69%の企業が指摘。特に製造業では80%が影響を被っている。次いで「電力供給」が64%。設備の点検・復旧や人員の確保なども20─30%の企業が課題にあげている。「放射性物資に関する風評被害」も20%弱を占めている。
この中で工場や設備復旧に伴い、徐々に解消していく障害要因があるものの、電力制約は長期化が予想されているほか、福島第1原発事故の深刻度が国際評価尺度でレベル7に引き上げられたこともあり、風評被害のさらなる拡大が懸念される。
<企業活動移転はすでに2割が実施・検討、空洞化加速も>
この震災をきっかけに工場や営業拠点の移転や、取引先の変更を実施または検討している企業は21%にのぼった。すでに実施した企業は4%、検討中が17%。製造業・非製造業ともに同程度の割合となっている。
移転先としては西日本や被災地以外の他県への振り替えにとどまらず、「国内・海外ともに製造拠点の分散化をさらに進める」「海外に移転する」との声も寄せられている。さらに「本社機能を分散する」企業や「仕入れ先・販売先・コスト・物流、生産など総合的に検討中」と従来の仕組みを根本的に見直す動きもある。
現段階ですでに20%超が移転を実施・検討していると回答しており、原発事故問題や電力制約の影響が長期化した場合、移転企業がさらに増加する可能性がある。東日本ひいては日本の空洞化加速が懸念される状況だ。
(ロイターニュース 中川泉 編集 伊藤純夫)