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焦点:震災で企業心理悪化は広範に、拠点移転に「衝撃」の指摘も
2011年4月14日 / 05:11 / 7年後

焦点:震災で企業心理悪化は広範に、拠点移転に「衝撃」の指摘も

 [東京 14日 ロイター] 14日に発表された4月ロイター短観調査(400社ベース)とロイター企業調査(同)の結果を受けて、識者からは東日本大震災の影響で企業マインドが広範に悪化している実態が浮き彫りになったとの指摘が出ている。

 4月14日、ロイターの調査結果を受けて、識者は震災による広範な企業心理悪化が浮き彫りになったと指摘。写真は11日、福島県南相馬市で被災した家の前を歩く、防護服の警官(2011年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

 ロイター短観では、震災の影響で製造・非製造業ともにリーマン・ショック後を上回る過去最大の落ち込み幅となった。先行きも悪化が続く見通しとなっている。

 一方、企業調査では、58%の企業が生産設備やサービス体制に打撃を受けたと回答。需要の落ち込みも深刻で、震災前の水準に回復した企業はわずか2%にとどまった。営業拠点をすでに移転または移転を検討している企業が20%超に達していることも明らかになった。

 両調査とも調査期間は3月25日から4月11日まで。調査対象400社のうち210社程度から回答があった。

 調査結果を受けて、サプライチェーン(供給体制)の寸断や電力供給制約、消費自粛、福島第1原子力発電所の放射能漏れ事故とそれによる風評被害など、震災に伴うさまざまな要因が企業マインドを慎重化させている様子が明らかになった、と識者は指摘。

 先行きについても調査では、悪化が見込まれており、「生産の底が見えない状況」との指摘が聞かれる一方、秋以降のマインド持ち直しを期待する声もある。

 また、企業調査からは、震災による「供給ショック」がさまざまなルートで需要減にも波及していることが明らかになり、供給制約が解消されない限り、需要の回復も期待できないとみられている。特に、営業拠点をすでに移転、または移転を検討している企業が合計で21%に達したことを「ショッキング」と受けとめている。

 ロイター短観とロイター企業調査に対する識者のコメントは以下の通り。

●ロイター短観

◎震災受けて断層的に悪化

 <みずほ証券 チーフマーケットエコノミスト 上野泰也氏>

 東日本大震災の影響を受けて製造業、非製造業ともに過去最大の悪化幅だったことは、事前に予想されていた内容だ。幅広い業種で企業マインドが断層的に悪化していることをあらためて浮き彫りにした。先行きをめぐっては5、6月の供給制約、7、8月の電力不足が相次ぐため、3カ月先については、それらに絡んだ警戒感が出ているのではないか。ただ、いずれも時間がたてば解消する。企業マインドは、秋以降は持ち直しの基調になるのではないか。

◎震災の影響大、今後は電力対策などに注目

 <コスモ証券 投資情報部担当課長 田口はるみ氏>

 東日本大震災の影響が大きく出た内容だ。製造業、非製造業に限らず足元、先行きともまんべんなく大幅に低下しており、電力不足やサプライチェーンの寸断などを懸念しているとみられる。震災から時間が経ってもなお復旧に時間がかかるとの見方や余震の継続などが企業心理をさらに悪化させているのだろう。今後は企業マインド改善のカギとなる電力不足に対する対策やサプライチェーンの回復度合いに注目が集まるとみている。

◎ほとんどの業種で大幅悪化、先行き輸送用機器に供給問題解消期待も

 <野村証券金融経済研究所 チーフエコノミスト 木内登英氏>

 震災から約1カ月で企業の業況判断がどのように変化したかをうかがい知ることができる。震災の影響を受けて大幅に景況感が悪化した形。いずれも、前月からの下落幅は過去最大だ。震災を受け、ほとんどのセクターで現在の業況判断DIが下落した。先行きの景況感も下押しされているが、材料として、1)解決のめどが立っていない福島原発の問題、2)サプライチェーンの問題、3)夏場の輪番停電が生産を抑制する問題、4)消費者の「自粛ムード」による消費抑制の問題──などが挙げられる。ただし、現在の業況判断DIで最大の落ち込みを見せた輸送用機器では、先行きDIはわずかに改善した。7月ごろには、サプライチェーンの問題が解消に向かい始めているとの期待を反映したものと思われる。 

◎DIからの予測で3月生産は15%減、4月は3%程度の減少も

 <SMBC日興証券 金融市場調査部 エコノミスト 宮前耕也氏>

 製造業、非製造業ともに単月では過去最大の低下幅となり、震災がもたらしたショックの大きさを物語っている。製造業のみならず非製造業も比較的大きな落ち込みとなっている。製造業からの波及のみならず、震災や電力不足、物流寸断による影響が大きかったと考えられる。 今回のDIから3月の鉱工業生産を占うと、少なくとも前月比15%は落ち込む可能性がある。先行きDIも低下しており、これから予想すると4月も前月比3%程度落ち込む可能性がある。ロイター短観から判断する限り、生産の底はまだ見えない状況だ。

●ロイター企業調査

◎供給問題の先が見えず需要も減少、「移転2割」も大きな懸念

 <SMBC日興証券 金融市場調査部チーフマーケットエコノミスト 岩下真理氏>

 精密機械などロイター短観で悪化が大きい業種で、震災の打撃が大きいことや供給能力も大きく低下していることが特別調査で判明した。また障害要因としてサプライチェーンもさることながら、電力供給の影響が非製造業にも波及していることもわかった。非製造業の悪化はマインド悪化もあるだろうし、阪神・淡路大震災後も長く尾を引いたので、今回も同様のことが起こるかもしれない。

 供給だけでなく、需要の減少が大きいのは、現在抱えている様々な問題の先行きが見えないからだろう。今の供給などの問題が長期化すれば、全体に需要も落ちたままとなるだろう。日銀支店長会議でも名古屋支店長や大阪支店長が慎重な見通しを示し、生産の混乱長期化を覚悟すべきとの発言もあったようだ。 また、拠点移転の実施・検討が2割にのぼったことは、大変怖い材料だ。問題が長引くほど、企業は海外に目が向いてしまうだろう。どの程度長期化するかが問題だ。

◎ショッキングな結果、需要・供給とも急速に悪化

 <みずほ証券 エクイティ調査部シニアエコノミスト 飯塚尚己氏>

 調査結果は全体としてショッキングだ。これくらい被害が広がっているとあらためて認識した。被災地以外で需要・供給ともに急速に悪化している。全国的に影響が広がってしまったのはサプライチェーン問題、消費自粛、内外からの旅行需要激減、放射能問題などがある。3、4月の消費・生産は劇的に悪化するだろう。

 この調査で最大の懸念となるのは「移転」が2割に上ったこと。震災の影響はかなり広く深いが、今のところ、あくまでテンポラリーとの見方が主流で、日銀支店長会議でも各地の設備投資判断は従来と変わっていなかった。しかし問題が長期化すると、海外に企業が流れていき、乗数的に深く長い落ち込みなってしまう。 早期収拾を期待しているが、企業は適応力があるとともに、政策当局も迅速に対応しており、補正予算が実施されれば5月下旬以降、景気も上向く可能性があるとみている。被災地の法人税をゼロにするとか、TPPの積極推進、一極集中の是正なども進めていくことが必要だ。

 *ロイター短観はロイター有料端末向けコンテンツです。

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