April 17, 2011 / 11:52 PM / 8 years ago

原発事故で日本製品の信用低下、放射線検査も企業の重荷に

 [東京 18日 ロイター] 原子力事故の国際的評価尺度で最悪のレベル7となった東京電力(9501.T)福島原発事故。1カ月経った今も放射線物質の漏えいが止まらないため、海外では日本製品への不信感が高まっており、日本企業は食品以外の製品も第三者機関に放射線量測定を依頼するなど対応に追われている。

 4月18日、原発事故により海外では日本製品への不信感が高まっており、放射線検査コストが企業の重荷になっている。写真は台北のスーパーで日本製食品の放射線検査をする当局者。1日撮影(2011年 ロイター/Nicky Loh)

 サプライチェーンの回復や節電対策という大きな課題に直面する日本企業にとって検査コストがさらなる重荷になるほか「対応を加速しないと海外勢の日本離れが進む」(エコノミスト)と危惧する声もある。

 <放射線量検査の依頼急増>

 国際流通貨物の検査などを行う日本海事検定協会によると、3月15日以降に受けた放射線検査の問い合わせは1200件を超える。従来からリサイクル原料の放射線量は測定していたが、一般貨物の検査実績はゼロ。それが3月16日─4月13日だけで一般貨物の放射線量検査が400件を超えた。「輸出先からの要望が理由で、対象は機械、工業製品、部品、加工食品、コンテナや船舶などあらゆるもので、文房具もあった」(検査第1サービスセンター・インスぺクションチームリーダーの鶴居航太郎氏)。

 依頼先の企業規模は大小さまざまでメーカーのほか商社や船会社も含まれる。「海外からみたら日本ならどこでも一緒」(鶴居氏)のため、東京、横浜など関東だけでなく、名古屋、大阪、神戸など福島原発から離れた港での依頼も多い。一般貨物には放射線量の基準がないため安全証明にはならないが、同協会は貨物の放射線量が周辺の線量を上回っていないかなどを示す検査レポートを発行している。3月の検査が100件超だったのに対し、4月以降は2週間で約300件と膨らみ「今も続々と問い合わせがきている」(同氏)。既存の放射線量測定器43台に加え今週60台を米国から調達し「測定器があいている限り対応する方針」という。

 放射線量測定や分析を行う日本分析センターにも測定依頼が殺到しており、3月末には一旦受け付けを停止した。今週から野菜と原乳の受け付けを再開し「最近は輸出で困っているとの声が多いため輸出検査もやりたいがすぐには手が回りそうにない」(検査担当者)という。

 「検査機関が一杯一杯で何週間も待たされるため、輸出相手にそっぽを向かれてしまうとの危機感からサイン証明を依頼してくるケースが多い」と語るのは日本商工会議所・貿易証明課の原伸一課長。商工会議所は検査機関ではなく証明書は発行できないが、個別企業が、輸出貨物の生産地名や文部科学省が毎時公表する都道府県別の放射線量などを記載した宣誓書を作成すれば、信用補完となるサイン証明を発行できる。3月28日─4月7日の発行件数は487件で「今も3月末以降と同じペースで要請がきている」(同課長)。

 <検査で機会損失も>

 原発事故をめぐる輸出の風評被害を懸念する声は、鉄鋼や自動車業界からも聞こえる。日本鉄鋼連盟の林田英治会長(JFEスチール社長)は先月、鉄スクラップや鋼材について「輸出先で若干でも高い放射線量が出たら製品を引き取らないとか、荷物を日本に取りにいかないとかいうような風評被害が出始めていると聞いている」とし、「鉄鋼だけでなく日本全部の問題だ」と強い懸念を示した。そのうえで、日本として正しい知識や情報を海外に伝えていく必要があると訴えた。

 一方、ホンダ(7267.T)の伊東孝紳社長は今月8日、各国が日本の工業製品にまで放射線測定を求める動きについて「不安を払しょくするためのあらゆる努力をしていきたい。日本一丸となって早く努力したい」との考えを表明した。ただ「不安感があるか」との問いに対しては「ないと言えばうそになる」と本音も漏らした。

 日本からの輸出品については、海外の受け手側が検査を行う例も増えている。日産自動車(7201.T)の台湾子会社である裕隆日産汽車(2227.TW)は、日本から輸入する自動車部品の放射線検査を実施し、顧客に安全を保証するため、出荷する車には放射能に汚染されていないことを示すステッカーを貼っている。「両側で検査すれば時間がかかり、適切なタイミングで相手に製品を届けられないリスクもある。ビジネスへのマイナス影響は避けられない」(伊藤忠経済研究所・主任研究員の丸山義正氏)との見方もある。 

 <安心と安全が売りだったメイド・イン・ジャパン製品>

 放射線量検査の費用は「1件につき5─10万円前後」(業界関係者)とみられるが、企業規模によってコストの重みは異なる。ただ「電力やサプライチェーンの問題だけでも大変なのに、仮にこれらの問題を克服できても放射能というわずらわしい重石が全ての輸出企業にのっかってくる」(第一生命経済研究所主席エコノミストの長浜利広氏)可能性は高い。長浜氏は「メイド・イン・ジャパン」製品の最大の売りだった安心と安全が震災の影響で揺らいでいる今、「日本企業が一番避けなければいけないのは(輸出相手に)取引先を変えられてしまうことで、関係維持のため目先のコストがかかっても対応を急ぐべきだ」と指摘する。

 伊藤忠経済研究所の丸山氏は「今以上に放射能汚染が悪化しなければ、日本でそうだったように海外でも放射性物質についての理解が進み、日本製品に対する過剰反応は4─5月をピークに沈静化する」とみる。それでも「日本離れを全て防ぐことはできない。いかにそれを最小限に抑えるかがカギ」と指摘する。また、震災以前から国内企業は少子高齢化の日本を脱出し、需要拡大が見込める海外へ生産拠点を移す流れがあったが、震災によりジャパン・ブランドの信用が低下し「その流れが加速する可能性もある」と予想している。

  (ロイターニュース 大林優香;取材協力 杉山健太郎;編集 佐々木美和)

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