[東京 10日 ロイター] 中部電力(9502.T)が浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)の全面停止を決めたが、中部地域に主力工場が集積するトヨタ自動車(7203.T)の生産に与える影響については、短期的には軽微との見方が多い。
東日本大震災後によるサプライチェーンの寸断で部品不足が継続し、自動車生産もフル稼働に戻せない状況が続くため。ただ、秋以降についてはアナリストの見方が分かれており、電力不足でトヨタの生産回復スピードが鈍化し、収益への影響が出てくるとみる向きもいる。
トヨタの国内車両工場は、全18カ所(グループ会社含む)の半分が中部電力管内に位置する。部品工場も中部地域に集積している。足元では部品調達が不安定なため、車両工場の稼働率は当初計画の5割程度にとどまっているが、会社側は徐々に稼働率を上げ、11─12月ごろに震災以前の生産状況に戻したい考え。浜岡原発停止により、需要がピークを迎える夏場の電力供給に対する懸念も出ているが、「夏場に電力量がひっ迫しても、ルネサスエレクトロニクス(6723.T)の部品が足りないので関係ない」(アドバンスト・リサーチ・ジャパンの自動車アナリスト、遠藤功治氏)と指摘されるなど、夏季の生産計画への影響は限定的との見方が優勢だ。
<電力不足続けば収益影響も>
ただ、秋以降の影響については見方が分かれる。野村証券金融経済研究所の自動車アナリスト、桾本将隆氏は「10月以降、トヨタも国内生産が上向いてくるが、そのころには冷房需要などが落ち、電力が不足することはない」と分析する。さらに中部電力が休止中の火力発電所の再稼働や関西電力(9503.T)からの融通などで電力不足を補うため、浜岡原発が全面停止しても自動車生産への影響は軽微とみる。
一方、アドバンスト・リサーチの遠藤氏は、秋以降にルネサスの部品供給が回復してくる中で電力不足が続く場合は、トヨタが公表した生産正常化のタイミングが遅れる可能性があり、「今期の減産台数や収益に与える影響は大きくなるかもしれない」と指摘する。
トヨタは9日、中部電力の原発停止決定を受け、「できる限りの省エネに協力していきたい」とコメントを発表し、生産正常化に向け全力を挙げるとの意向を示した。
中部電力の決定は、津波に対する備えが不十分として浜岡原発の全面停止を求めた菅直人首相による要請を同社が受け入れたもので、津波対策の防潮堤などが完成するまで2年程度停止が続く予定。同社管内にはトヨタのほかに、ホンダ(7267.T)、スズキ(7269.T)、三菱自動車工業(7211.T)などの車両工場や部品工場もあるが、これらのメーカーも部品不足で減産傾向にあるため、夏季生産への影響は小さいとみられている。
他方、東日本は東京電力(9501.T)の福島第1原子力発電所の事故が影響し、夏場の電力不足が確実視されている。日本自動車工業会(自工会)では、平日と休日の需給ギャップを輪番休日で平準化することを提案。稼働時間を短縮せずに平日のピーク需要を抑制することを目指している。日産自動車(7201.T)は東電の管外にある工場についても輪番休日を検討しているが、浜岡原発の全面停止決定の前には「電力に不足のないところで休業して本当に日本経済のためになるのかどうか、議論が必要」(三菱自の益子修社長)との声もあり、各社で温度差もあった。ただ、浜岡原発停止により中部地域の電力供給も制約を受ける可能性が浮上したため、各社、独自の節電対策に合わせて輪番休日の運用拡大を議論する可能性も出てきそうだ。
(ロイターニュース 杉山健太郎)