May 23, 2011 / 7:58 AM / 8 years ago

経済「V字回復期待」が後退、2次補正遅れや企業収益悪化で

[東京 23日 ロイター] 夏場以降の日本経済は、東日本大震災の復興需要やサプライチェーン回復などによりV字回復が期待されているが、エコノミストの間ではここへきてそうした期待が後退しつつある。

 5月23日、夏場以降の日本経済は、東日本大震災の復興需要やサプライチェーン回復などによりV字回復が期待されているが、エコノミストの間ではここへきてそうした期待が後退しつつある。写真は19日に都内で撮影(2011年 ロイター/Yuriko Nakao)

 供給能力の回復は予想より前倒しで進んでいる様子だが、肝心の需要面では、復興に向けた2011年度第2次補正予算案の編成・成立に不透明感が強まっているほか、増税議論の浮上もマインド悪化につながる可能性がある。生産活動の大幅低下で企業収益が圧迫され、設備投資や消費への影響も今後表れてくることは確実。年後半の回復力が削がれてしまう懸念が強まっている。

 <供給面の早期回復は朗報も、需要は下振れ要因多く>

 大震災の影響で今年の日本経済は4─6月期まで国内総生産が前期比マイナス成長を続ける見通しだが、夏場からは年率3─5%程度の急成長に転じるとの期待を伴った見方が、これまで民間調査機関の間で主流だった。しかし、こうした見通しに不透明感が広がりつつある。

 生産体制や供給能力の面では、電力供給計画上積みにより節電目標が25%から15%に圧縮されるとともに、サプライチェーン解消時期を前倒しする自動車産業や電機産業が相次ぎ、明るい材料が出ている。

 一方で、浜岡原子力発電所の停止措置を契機に、現在、定期検査などで運転停止中の国内各地の原発で再稼働が困難になる可能性が出てきたため、電力需給問題は関東のみならず全国的な広がりを伴って尾を引く懸念が出てきた。ゴールドマンサックス証券・チーフエコノミストの馬場直彦氏はアジア投資家へのヒヤリングで、浜岡原発の停止により、美浜、玄海原発の再稼働への反対運動が起こることや、電力不足の長期化・不安定化で空洞化が加速し、日本経済が縮小均衡への道を歩むことを懸念する声が多いと紹介している。

 需要面でも、V字回復期待を担う材料だった復興需要について、復興計画の遅れや第2次補正予算の財源問題などから成立が秋にずれ込む見通しが強まっている。モルガンスタンレーMUFG証券チーフエコノミスト・佐藤健裕氏は「7─9月期ないし10─12月期以降のV字回復のモメンタムはさほど期待できない可能性がある」と予想している。

 企業所得悪化による需要への影響も指摘されている。BNPパリバ証券チーフエコノミスト・河野龍太郎氏は「被災企業のみならずサプライチェーンを通じた幅広い企業の生産抑制は、当然、企業所得の大幅な減少を意味し、設備投資や家計所得の減少につながる」とみている。

 <調達先のリスク分散で海外逃避鮮明に>

 震災を契機に取引関係のリスク分散を図る企業が増えたことも、国内需要が震災前に戻らない可能性を示唆している。

 ロイター企業調査(400社対象)によると、5月時点で企業活動や取引先変更を実施または検討している企業は全体の23%。うち6割以上が恒久的な対応だとしており、企業は抜本的に取引関係の見直しを迫られている様子がうかがえる。さらに移転や取引先の変更を実施・検討していると回答した企業のうち、「海外を含めて実施・検討」としたのが製造業で5割に上っている。

 ある中堅金属機械メーカー幹部は「震災後、企業は取引先の分散を図っており、これまで取引のなかった先も含めて複数の調達先確保に乗り出している」と打ち明ける。このため、緊急避難的に海外企業に代替生産を要請した場合でも、そのまま取引が固定化する例が出てくる可能性がある。

 <増税議論はマインド悪化の影響覚悟で>

 復興に向けた財源次第では、かえって需要の足を引っ張る可能性も指摘されている。財源として復興国債の償還に充てるための増税議論が浮上しており、厳しい財政事情の下で「仕方なし」と国民が増税を受け入れたとしても、それで消費への影響が緩和されるとは限らない。1997年の消費増税後は、金融危機とも相まって2年連続のマイナス成長に落ち込んだ。

 また「社会保障と税の一体改革」でも、6月のとりまとめで社会保障支出削減策が織り込まれる可能性が出てきた。クレディスイス証券チーフエコノミスト・白川浩道氏は、いわゆる「マクロ経済スライド」の完全適用の実施で、デフレ下で賃金の下落に合わせて公的年金も削減されれば「増税とセットで年金支給額削減が打ち出された場合、マクロの消費マインドが一段と悪化するリスクは否定できない」と指摘する。

 こうしたマイナス要因のうち、マインド悪化や財源となる税収の落ち込みを食い止めるうえでも、日本経済の早期復活が必要。そのためには、企業の生産体制復旧が前倒しで進められる中、復興に向けた政策についてもスピード感を持った対応が不可欠となる。 

 (ロイターニュース 中川泉;編集 伊藤純夫)

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