May 31, 2011 / 7:55 AM / in 8 years

インタビュー:電力売買促進に送配電分離議論が必要=松村・東大教授

 [東京 31日 ロイター] 東京電力(9501.T)のリストラを監視する「経営・財務調査委員会」で委員を務める松村敏弘・東大教授はロイターのインタビューに応じ、太陽光や風力発電など再生エネルギーを普及させ、企業や家庭の余剰電力を売買する仕組みを構築するためには、電力事業者が発電と送配電を一貫して手掛ける現状を見直す送配電分離の議論は避けて通れないと指摘した。

 5月31日、松村敏弘・東大教授は、企業や家庭の余剰電力を売買する仕組みを構築するためには、電力事業者が発電と送配電を一貫して手掛ける現状を見直す送配電分離の議論は避けて通れないと指摘。20日撮影(2011年 ロイター/Toru Hanai)

 松村教授によると、太陽光や風力発電の普及が進む場合、天候次第では電力が余る状況が想定されるため、電力需給の細かな調整には価格メカニズムが現在よりも働くことが望ましい。電力売買が活発化し電力供給者が多様化するためには、発電から送配電網までを大手電力事業者が垂直統合している現状よりも発配電分離が、不可欠ではないが望ましい。発送電分離は電力の安定供給を損うとの懸念があるが、電力自由化後進国の欧米諸国を参考に適切な制度設計を構築することが可能、と強調した。

 インタビューの詳細は以下のとおり。

 ──現在の国内電力体制の課題について 

 「今後太陽光発電や風力発電が本格的に普及するとの前提に立てば、晴天の昼間など時間帯によって電力供給が需要を上回る状況が出てくる。現在の電力システムでは、余剰電力は蓄電池やダムによる揚水発電で貯めるしかない。一部の試算によると、太陽光発電の普及により2020年度時点では、余剰電力を蓄える蓄電池に60兆円もの投資が必要と言う。しかし本来ならば余剰電力の社会的コストはゼロのはず。電力価格を低く設定することで、例えば水を電気分解して水素でためるなど余剰電力の新たな用途開発も可能。現在の電力システムは、ひっ迫時に価格を引き上げ、余っているときに引き下げる発想がなく、出力調整のみで需給調整を図っている。価格メカニズムで需給調整が行われれば蓄電池の必要量も減る。揚水発電はエネルギーの3割が失われるため、揚水発電を不要なように電力を余らせないだけで3割の節電があるともいえる」

 ──再生エネルギー普及の必要性 

 「再生エネルギーをどの程度普及させるべきかは国民が最終的に決める問題。菅直人首相が自然エネルギーを2020年に20%にすると発表した。うち約10%は水力発電。現在1─2%に満たない再生エネルギー(太陽光・風力)を約10倍にも拡大する意欲的な話。震災を契機に再生エネルギーが注目されるなかで、再生エネルギーを普及させるため、価格メカニズムを利用して電力売買が可能となり、結果的に仕組みを考えるべき」

 ──東電の賠償費用ねん出で政権内で浮上した発送電分離、どうみる 

 「発送電分離にはメリットとデメリットの双方あるが、第一のメリットは発電事業者間の競争促進。現状では新規電力事業者は送電網を独占する大手電力会社からがいやがらせを受けやすい。新規電力事業者が顧客に電気を送る託送では、自社の送電量とユーザーの受電量を30分単位で一致させないといけないため、一致できない場合大手電力会社に罰金的な料金を支払う必要がある。発電規模が小さく、少しの障害で送電量が変動する新規発電事業者にとっては大きな参入障壁だ」

 「第二のメリットとして、再生エネルギーや分散型発電モデルの新規発電事業者が入りやすくなる。風力発電を行う新規発電事業者が大手電力事業者に電力を卸売りする際、風次第で発電量が大きく変動するため、送配電網に負荷がかかる風力発電による電力を、大手電力事業者が著しい低価格で買いたたく可能性が少なくなるとみられる」

 ──電力自由化先進国でみられた停電などの連想で発送電分離を不安視する見方もある 

 「発送電分離のデメリットとしては、供給安定性に支障が出る可能性はある。垂直統合されていれば停電は必ず大手電力事業者の責任となるため、大手事業者は停電が起こらないように発電所や送配電網に対して常に必要な投資を行うインセンティブがある。送配電網が分離されている場合には送配電網側と発電事業者が双方で責任を押し付け合う可能性は想定される。電力需要のピーク時に備え必要な発電余力をどの事業者が負担すべきかとの議論も残る」

 「しかしデメリットは制度設計面で対応可能。例えば各発電事業者に対して最大電力需要の6%に当たる発電余力を持たせることを義務付ける。1カ月以内に再稼動が可能な遊休発電設備を第三者機関が管理するなど、色々な案がありうる」

 「欧米の電力自由化で停電など様々な障害が発生した事例を踏まえ、日本は後発であるが故に学べる立場にある。旧電電公社時代は家庭の黒電話も電電公社保有だった。黒電話が自由化された際、電話不通時に端末と通信網のどちらに障害があるかわからなくなると懸念された。しかし現在、携帯電話端末と通信網が別会社で運営されていることをもって、旧独占がよかったとの見方はないだろう」

 ──再生エネルギー普及に発送電分離は不可欠か

 「熱しやすく冷めやすい日本で、発送電分離議論が下火になっても再生エネルギー普及も下火になっては困る。再生エネルギーは蓄電池技術の開発など日本の成長戦略にとって極めて重要で、発送電分離が実現しなくとも普及が必要。その場合は大手電力事業者に対して強い規制を設けて電力売買を促進させる制度設計が必要。送配電網分離した場合の方がが議論がしやすく、議論は避けれらないということ。」

(ロイターニュース 竹本能文、茂木千香子;編集 宮崎 大)

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