June 8, 2011 / 7:08 AM / in 8 years

焦点:「ドル過剰」の中国、分散投資で円債購入が過去最高に

 [東京 8日 ロイター] 中国と産油国による日本の中長期債投資が急ピッチで増加している。格下げや政治混迷にもかかわらず海外勢に「円債」が選ばれる背景には、持続的なドル安/新興国通貨高でドル保有が膨らんだ中国やその他新興国、原油高で収入が増えた産油国の分散投資ニーズがある。

 6月8日、中国と産油国による日本の中長期債投資が急ピッチで増加している。昨年8月撮影(2011年 ロイター/Yuriko Nakao)

 とりわけ、人民元高の抑制介入を続けてきた中国にはドルの過剰保有への危機感が出始めており、分散投資の動きはなお広がりそうだ。

<円債ブーム到来か>

 財務省が8日に発表した4月の対外・対内証券投資(速報)によると、中国は4月に日本の「中長期債」を1兆3300億円買い越した。買い越し額は2005年1月の現行統計開始以来の最大となった。

 一方、非居住者による英国経由の「短期債」の買い越し規模も、7兆0342億円と過去最大に達した。英国経由のフローは英国人投資家による対日投資とは限らず、中国をはじめアジア新興国の分散投資が短期円債市場に流入しているとの見方が有力だ。財務省によれば「統計は英国の証券会社等から日本の証券会社が注文を受けた分を表しており、新興国や産油国の投資が増えている可能性はある」という。

 残高ベースでみると、中国の円債保有は2010年末に10.49兆円となり、2009年末の3.41兆円から3倍以上に拡大している。中東諸国(サウジアラビア、アラブ首長国連邦、イラン)の円債保有は2010年末に6.10兆円となり、2009年末の3.59兆円から急拡大した。

 日本経済のリスクが広がる中で、中国や産油国が円資産を積み増しているのはなぜか。SMBC日興証券・金融市場調査部、シニア債券為替ストラテジストの野地慎氏は「格下げや政局混迷で、教科書的には、円債を買いづらい」と前置きしたうえで、海外の視点からみれば「日本にクライシスは到来しないと思われているようだ」と指摘する。JGB(日本国債)は流動性に優れていることに加え、所得収支の黒字が保たれていること、租税負担率が諸外国に比べ低く、増税すれば財政バランスが持続可能な水準に維持できることなどがその理由だ。

 中国の円債投資についても、円債自体に大きな魅力があるためではないようだ。野村資本市場研究所・シニアフェローの関志雄氏「分母(中国の外貨準備)が大きくなっていることに合わせて円債の保有も増やしているのだろうが、積極的に円資産を買う理由は見当たらない」と述べ、「米債のウェイトを傾向として下げたいことは間違いないが、円にシフトするか、ユーロなど他の主要通貨にシフトするかは、金利と為替レートの動向次第だろう」と分析している。

<ドルの過剰保有に警告>

 円資産が受け皿として今後も存在感を保つかは別として、中国には分散投資に動かざるを得ない緊急の事情がある。

 外資流入で高まる人民元高を抑制する介入を続けた結果、中国の外貨準備は第1・四半期末に前期末比で約2000億ドル増加し、3兆ドル超に達した。中国国家外為管理局(SAFE)国際収支司の管濤・司長は7日、米ドルは他の主要通貨に対して引き続き下落する見通しであるため、中国は米ドル建て資産の「過剰」保有のリスクを警戒すべきだ、との認識を示した。

 ドルの過剰保有に対する警告の裏には、1つの通貨に国富を集中させるリスクもさることながら、ドル買い/元売り介入によって国内に放出される過剰流動性がインフレ圧力を高めているとの認識もある。

 SAFEの国際決済部門責任者・Guan Tao氏は、「外貨準備の伸びを抑制できなければ、消費者物価や不動産価格を抑制するわれわれの取り組みが大きく損なわれるだろう」と指摘する。中国は、2005年7月以降、インフレ率が高い時には人民元の上昇率も高めてきたが、専門家の間ではインフレ圧力が後退するとの見方も出ている。

 「インフレはそろそろピークアウトし、年後半には徐々に低下するとみている。今後、切り上げを通じてインフレを抑制する必要性が低下すれば、人民元の上昇ペースはスローダウンするだろう」と関氏は予想する。

 中国人民銀行(中央銀行)は、8日の人民元の基準値を1ドル=6.4795元と、2日連続で切り上げ後の最高値に設定した。

<為替市場へのインパクト>

 為替市場では新興国の外貨準備の分散投資によるドル売り/円買いやユーロ買い/ドル売りオーダーが散見され、分散投資はフォワード相場にも影響を及ぼしている。

 最近のドル/円スワップ取引では、オーバーナイト物等で本来ディスカウントであるはずのドルがプレミアムになる状況がしばしば見受けられる。これは円調達コストがドル調達コストを上回った結果で、「アジア中銀の分散投資に伴う円転需要(ドルから円に転換する需要)が邦銀勢の外債投資に伴う円投需要(円をドルに換える需要)を上回っているため、ドルプレミアムに傾きやすい」(外銀)という。

 日本の投資家の対外証券投資は、3月の2兆7623億円の買い越しから、4月に1兆5864億円の売り越しに転じた。

(ロイターニュース 森佳子 編集 北松克朗)

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