June 14, 2011 / 11:09 AM / 8 years ago

景気判断を一歩前進、成長基盤支援融資の単純な増額は限界=日銀総裁

 [東京 14日 ロイター] 白川方明日銀総裁は14日の金融政策決定会合後に記者会見し、景気の現状判断を先月よりも一歩前進させたと述べた。成長産業への貸出支援融資については「効果があった」と評価する一方、今後の単純な増額は否定した。

 6月14日、白川日銀総裁は、金融政策決定会合後に記者会見し、景気の現状判断を先月よりも一歩前進させたと述べた。4月撮影(2011年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

 国内の生産活動に関しては4月の経済・物価情勢の展望(展望リポート)に比べて幾分上振れしたと説明。海外経済については、米国が「今後、成長テンポを再び回復させていく」と述べる一方、過熱リスクが指摘されている新興国の減速は「むしろ望ましい」と指摘した。  

 <国内景気は短期的に良いサプライズ、生産は展望リポートから上振れ> 

白川総裁は、震災後の日本経済の下押し圧力の原因となっている供給制約について、「サプライチェーン(供給網)が着実に修復されてきているほか、当初懸念されていた夏場の電力問題への対応が進められている」とし、「和らぎ始めている」との見解を示した。このように今夏から秋にかけての供給制約の見通しが「幾分好転」する中、中長期的な成長期待についても震災前と比べて「下方屈折していない」と指摘。足元では、生産活動や国内民間需要に持ち直しの動きがみられているとし、国内景気は見通しと比べて、過去1カ月でやや良い方向にサプライズがあったと述べるとともに、生産活動は4月展望リポートと比べて幾分上振れているとの認識を示した。

 先行きについては「2011年度後半以降、緩やかな回復経路に復していく」との回復見通しを維持。ただ、当面は生産面を中心に下押し圧力が残るとし、「中長期的には懸念材料も出てきている」と語った。供給制約解消後の景気動向は、世界経済の拡大スピードに規定されるとの認識を示した。 

 <中長期的な電力供給問題に注意、社債買入オペの上限見直さず> 

 このうち電力供給問題については、夏場の省エネが企業活動を大きく制約する状況ではなくなっているとする一方、福島第1原子力発電所事故の影響など中長期的に不十分な電力供給が、日本経済の潜在成長率を引き下げるリスクがあることに懸念を示した。

 また、市場では電力会社が発行している社債のスプレッドが拡大しているが、総裁は「発行体と投資家の目線が揃わない状況が続いている」と指摘。市場の一部では、日銀の社債等買入オペで設定されている1000億円の発行体別買入枠の上限見直しなどを求める声も出ているが、白川総裁は過去の会見で「(買入枠を)見直す必要があるとは考えていない」と発言。現在もこうした見解は「変化していない」と語った。  

 <米経済は成長テンポ回復へ、新興国減速は「望ましい」> 

 海外経済では、米国について家計のバランスシート問題に加え、震災に伴うサプライチェーン障害などの影響で、足元で減速していると指摘。今後は緩和的な金融環境などを背景に「成長テンポを再び回復させていく」と見通す一方で、原油価格動向などの不確実性が大きいなどから「米経済の下振れリスクには注意が必要」と語った。同様に減速感が出ている新興国経済については、これまで速いテンポで成長してきただけに、金融引き締めなどに伴うある程度の減速は「むしろ望ましい」との認識を示した。 

 <新成長支援枠で動産担保融資の市場拡大を期待、復興支援は個別に検討> 

 日銀は14日の会合で、有望な産業分野に投融資する金融機関向け貸出制度である成長基盤強化支援融資について、動産・債権担保融資(ABL)などを普及させることを目的に総額5000億円の新たな低利貸付枠を設定した。

 白川総裁は、従来の成長基盤強化支援融資について、金融機関から企業への融資面では「呼び水効果に加え、日本経済の成長力を高めるための金融機関の問題意識を高める効果もあった」と評価。一方、出資については少額にとどまっているとし、「呼び水効果は限定的だった」と説明した。一部の金融機関からは、同融資制度は金利引き下げ競争を助長するとの指摘もあり、「(同融資制度の)単純な増額は効果と副作用から見て、そろそろ限界」との見方を示した。

 こうした中で、日銀が今回の会合で同融資制度の新たな貸付枠を設定。金融機関による動産担保融資(ABL)などを対象にしたが、白川総裁は「金融機関と企業が(ABLに対する)認識をさらに高める認知効果と市場拡大の好循環を期待している」と表明。従来の同融資制度とあわせて「(東日本大震災の)被災地での活用を大いに歓迎したい」と語った。また、現行の被災地金融機関向け低利融資との統合については「成長基盤の中に取り込むよりも、復興支援の枠組みとして設計を検討したい」と分けて考えていく方針を示した。 

(ロイターニュース 伊藤純夫、竹本能文 編集:北松克朗)

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