July 5, 2011 / 9:44 AM / 9 years ago

現先運用に浸み出す企業マネー、国債暴落のマグマ膨張か

 [東京 5日 ロイター] 東日本大震災の発生後、緊急避難的に積み上げられた企業の手元資金が、国債を使った現先運用に浸み出している。超低金利下での「運用益かさ上げ」が狙いだ。

 7月5日、東日本大震災の発生後、緊急避難的に積み上げられた企業の手元資金が、国債を使った現先運用に浸み出している。写真は昨年8月、都内で撮影(2011年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

 取引相手先である証券会社にとっても安い円を調達できるなどのメリットがあるが、その一方でカネ余りを背景にした安易な国債投資は、暴落リスクを高めているに過ぎない面もある。

  <証券会社の日銀当預残が急増>

 証券会社の日銀当座預金が増えている。日銀によると、同業態を含む「その他の当座預金取引先」の残高は、おおむね2兆円台で推移していたが、今年3月に約6.2兆円に膨れ上がり、4月、5月とも平均残高は5兆円規模に達した。

 背景には「企業の資金運用の一環として証券会社が現先運用を引き受けるようになった」(市場筋)ことがある。

 日銀が6月17日に発表した今年1―3月期の資金循環統計では、震災発生により資金を抱え込む動きが広がり、民間企業が3月末に保有する現預金が初めて200兆円の大台を超えたが、「時間の経過とともに運用需要が回復し始めている」(外銀関係者)という。

 現先取引では、債券などを一定期間後に一定価格で買い戻す(売り戻す)契約を結び、その間の債券価格の変動リスク軽減が可能だ。また、買い手となる企業は預金金利より少しでも高い運用利回りが期待できるほか、売り手である証券会社が調達資金を日銀当預に積めば、付利(0.1%)との利ざやを稼げる。民間金融機関の預金金利が0.020―0.030%なのに対し、現先は0.080%付近が一般的な相場となっており、それぞれの差が懐に入る。

  <浸透する緩和効果、財政棚上げ>

 前出の外銀関係者は「リーマンショック以降の現先引き受けは皆無だったが、緩和環境の広がりで『上場企業が対象なら』と条件緩和されているのではないか」と指摘する。

 調達環境の改善は債券取引にも好影響をもたらすことが多い。実際、リーマン破たんでレポ取引での資金調達がかさみ、ジェネラル取引と呼ばれる調達コストが急騰することは珍しくなかったが、「現先でファイナンスできるため、多少、国債が売れず、在庫を抱えることなっても困らない」(国内証券)との声は少なくない。

 国債市場には、本来、織り込まれるはずの景気動向や財政状況が織り込まれず、需給が優先されることが増えてきた、との指摘がある。

 すでに危機的状況にある日本の財政再建を占ううえで注目された社会保障と税の一体改革では、消費増税の時期が明記されなかったほか、経済状況の好転が増税の条件にされ、「政府が掲げる2020年度のプライマリーバランス黒字化達成の可能性が低下した」(アール・ビー・エス証券チーフエコノミストの西岡純子氏)。

 財政再建をめぐっては「現政権が道筋を示せなかったことは、ある意味で予想通りだが、市場の急変などの強いショックを経験しなければ、今後も期待できない」(プルデンシャル・インベストメント・マネジメント・ジャパン投資運用本部長の坂口憲治氏)との声が多い。こうした見方とは裏腹に国債が順調に消化される状況に「リスクプレミアムの織り込みの遅れと引き換えにため込んでいるのは、国債暴落のマグマに過ぎない」(前出の市場筋)との懸念もある。

 (ロイターニュース 山口貴也;編集:伊賀大記)

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