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インタビュー: 日本の財政問題、対応なければ10年以内に金利暴騰も=全銀協会長

 [東京 9日 ロイター] 全国銀行協会会長に就任した三菱東京UFJ銀行の永易克典頭取はロイターとのインタビューで、日本の財政問題について、基礎的財政収支(プライマリーバランス)を均衡させる手を打たなければ、向こう10年以内に日本国債が暴落し、金利が暴騰する可能性があるとの懸念を表明した。

 7月9日、全国銀行協会会長に就任した三菱東京UFJ銀行の永易克典頭取は、財政問題に対応しなければ、10年以内に日本国債が暴落するとの懸念を示した。写真は1月13日、東京でロイターのインタビューに応える同頭取/Yuriko Nakao)

 邦銀は預金が貸出金を大きく上回る預金超過状態で、日本国債の最大の買い手となっているが、今後は高齢化の進展で預金超過は解消に向かうとし、「海外の資金で国債のファイナンスをしなければならなくなった時にプライマリーバランスが取れていないと大変なことになる」と危機感を示した。

 また、リーマンショック後、国債の比重が過剰に増えている銀行の資金運用については「現在、いろんな研究を進めている。今後の運用は国債一辺倒ではなくすつもりだ」と語った。

 インタビューの詳細は以下の通り。

 ――日本国債の危機が指摘され始めているが、どう見ているか

 「ポイントは二つある。一つは金融機関の預金量だ。まだコンスタントに増えているが、未来永劫に増加が続くかというとそんなことはない。人口構成が変わり、高齢化によって、その資金量の増加がどこかで終わる時がくる。郵貯も含めてだ。そうすると、海外投資家の資金で日本国債のファイナンスをしなければならない状況になる」

 「もう一つは、財政規律の問題だ。やはりプライマリーバランスが取れていない現在の状況は望ましくない。一般に言われているほど現状は悪くはないとしても、このままでは悪化の一途で、大変リスクが高い状況になっていく。全体のプライマリーバランスが取れれば、そんなに大ごとにはならないだろう」

 「(金融機関の国債の吸収力が限界に来た時に)プライマリーバランスが取れていないとなると、金利が一気に暴騰することも十分ありうる。そのタイミングがどの辺になるのかが問題だが、10年サイクルではない。もっと近い。急いで対応を取らなくてはならない」

 ――銀行は国債ばかり買っていて、リスクを取っていないという批判がある

 「国内の経済主体の資金ニーズを考えると、企業が資金の取り手だった時期があり、銀行も必死で預金を集め、それに応えてきた経緯がある。ところが今や、企業も資金の出し手で、個人も出し手だ。資金が必要なのは政府部門しかいない。こうした構造要因がバブル崩壊以降、ずっと続いている」

 「国債でなくても、他にも運用手段があるのではないかという指摘もあるが、それ相応にリスクマネーは投入してきている。我々も随分と研究して新しい運用手段にトライしてきた。その一つが証券化商品だった。しかし、サブプライム危機で大きくやられてしまい、投資をいったん止めた。それ以降、国債一辺倒の色彩が強まったが、今もまたいろいろ研究をしている。いつまでも羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹くようなことではいかんという方向に舵を切りつつあるので、国債一辺倒ではなくすつもりだ」

 「しかし、現在は金利リスクを管理しながら、国債においておくのが一番固い。リスクアセットもゼロだ。総合的に考えてみれば、期間をいじりながらリスク管理して、目を光らせながらそれ相応に国債で運用していくのが、当面のやり方としては相対的に賢明だ。ベストでないのは分かっている。預金超過の減少のタイミングはそんなに遠くないと思っているので、常にそういうことを意識しながらやっていく」

 ――バーゼルIII(新銀行規制)は邦銀に取って有利ではないか

 「日本、欧州、英国、米国の各当局で色々な評価はあると思うが、ルール作りができたことは非常に良かった。有利不利というのは一概には言えない。しかし、自由奔放にハイリスク・ハイリターンのビジネスをやってきた欧米の金融機関は、規制の影響を相当に受けることになる。収益チャンスは、相当程度減殺される。一番稼いでいたトレーディング業務は、リスクアセットも非常に高くなる。こうしたビジネスは縮小せざるを得ないだろう」

 「一方で、我々も投資銀行業務を強化しようとして、例えば、モルガンスタンレーと提携した。しかし、その投資銀行業務は、株や債券の引き受けやM&Aなどの顧客志向の基本的な業務だ。(欧米金融機関のような)自己勘定の取引ではない。従って、今後、グローバルなメジャープレーヤの業態は、(自己勘定以外の部分に収れんし)段々似てくることになるのではないか。同じように競争していく世界になるとみている」

 ――国際的に業務展開しシステム上重要な金融機関「G―SIFIs」のルールも固まってきた

 「今回の決め方は、相当程度、我々の意図を反映している。まず、一律に3%の追加賦課という規制にならなかった。5つの指標で分類し、客観的に1―2.5%の4段階に色分けする今回の規制は、非常に公正で評価できる。リスクの高い業務をやっていない邦銀のような銀行は2.5%を賦課されないだろう。2.5%に入るゾーンの銀行はもっともリスク高い業務を行っている銀行に限られる」

 (インタビュアー:布施太郎 浦中大我)

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